季節の変わり目は着るものに困る。猛烈に暑い夏のさなかは、何も着ていない状態に近づけるのが手っ取り早い。自転車について書いた本や雑誌には、夏の服装が解説されている。日焼け対策や夏向きの素材を使った高価なウエアの紹介がある。暑さや日焼けが気になるなら、真夏には自転車に乗らなければいいようなものだが、そうもいかない。高価な夏のウエアを買うゆとりはないので、真っ黒に日焼けして、汗を流しながら乗ることになる。
猛暑も一段落して秋風が吹き始めると、自転車に乗るのは随分楽になる。ところが、しばらくの間は暑さにも寒さにも耐える備えがいる。自転車は風をきって走るので、扇風機の風の前にいるようなものである。暑いときには心地がいいが、秋口になって、朝夕はめっきり気温が低くなると、服装にも工夫がいる。夏物秋物、多くもない衣類を整理していたら、背中に「放課後花壇倶楽部」「こころに花を咲かせよう」と背中にロゴを入れたTシャツを見つけた。
さて、その「放課後花壇倶楽部」である。花壇倶楽部もロゴを入れたTシャツも、退職直前に勤務していた学校でこしらえた。どこの学校でもよくあることだが、学校に居場所がなくて、不登校になったり授業に身が入らなかったりする生徒がいる。教室に入れなくて保健室登校をしたり、授業から抜け出したりする生徒がいる。花壇に花を植えたり、校舎の傷んだところを修理したりしていると、そういう生徒が手伝ってくれる。人との関係がうまく結べない寡黙な子や逆に騒々しすぎる子。そんな子たちを誘って「放課後花壇倶楽部」を結成した。ただの花壇倶楽部ではなく、「放課後」としたのは意味がある。学校に来て、たとえ1時間でも授業に出席しないと「放課」はない。倶楽部の部員は、1時間だけでも授業に顔を出すのが最低条件。
授業をきちんと受けないことを責めるでもなく、学校の嫌な理由を問い詰めるでもなく、無心に花壇の手入れをしていると、いつしか心にも花が咲いてくるときがある。かたくなに閉じこもって誰とも話をしない子が、乱暴な子と気が合って話し出す。尋ねなくても、言いたいことがたまってくればしゃべり出す。校長が部活の顧問をすることはあまりないが、当時「放課後花壇倶楽部」は部活の一つとしてそれなりに活動していた。理由があって、学校になじめない子たちが、放課後にTシャツを着て花壇に集る。わかり合える友だちがいて、学校に居場所ができれば、少しずつ教室にも戻れるようになる。
今も学校に勤務していたら、「放課後自転車倶楽部」を作ってみたい。放課後に、校区を自転車で探索する。学校が休みの日には遠くへも出かけてみたい。危ないとか、そんな部活は学校にないからとか、反対する声が聞こえてきそうであるが、面白そうなことは何でもやってみたらいい。何かきっかけがあれば、学校は楽しくて、うれしい場所になる。
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久しぶりに出てきたTシャツ 一人のときに着るのは気恥しい 仲間が欲しい… |
自転車に乗るには似つかわしくないか?? よく目立つ色なので安全ではある!! |
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放課後花壇倶楽部 まだ、Tシャツをあつらえていなかった頃 |
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放課後花壇倶楽部のTシャツを着た写真が見つからないので 制服姿で悪しからず… 男子には花がよく似合う |
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中学生の考えるフレーズはおもしろい これは部活の練習着… |
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陸上競技部のTシャツも撮らせてもらった 花を咲かせたいと思う気持ちは同じ… |
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Tシャツの後姿を撮らせてもらったら ソックスのポーズもとってくれた ちょっとした足芸??! |
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番外: 我が家の花壇倶楽部 部員は現在孫1名 自転車倶楽部も作りたい!! |
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やっぱり男子には花がよく似合う |
校長先生自ら不登校や学校になじめない子たちの面倒をみるとは、プライドの高い隣の県では考えられません。
返信削除定年まで波風立てず無難に過ごせばいいと思っているサラリーマン校長がほとんどのなかで、MARIOさんの姿勢は素晴らしいの一言です。
駄目の烙印を押されたような子たちを、一人の人間として認め彼らの未来に何らかの手掛かりを開いてあげようと差し伸べる姿に感服しました。
それに比べて私のように自分のやりたいことを気ままに続けてきた半生は、
公開と反省の連続であります。
心に花を咲かせようのバックプリント、倶楽部の名称も上手くつけましたね。
男が花をいじっている姿、じっくり見ると味わい深いものがあります。
コメントありがとうございます。無理に引っ張ったり、押し付けたりしなくても、自分で居場所を見つけ、自分で行く先を決めていく、それが「再生」することだと思います。場所だけ作っておけば、あとは面白そうだと思う人が集まって、動き出す。そうなればいいと思います。
返信削除学校にいる時には、校庭の樹をクリスマスツリーにしたり、中庭の池で鯉を飼ったり、生徒が面白いと思いそうなことをいろいろとやっていました。
退職直前は、教員としての経験値が最も高いはずです。それを生かして、子どもたちには伝え残しのないようにしたいと思っていました。経験値を高められたのも、もとはといえば、子どもたちのおかげなのですから…。