冬をむかえる

冬をむかえる
'20.12.22 愛知県海部郡飛島村梅之郷 日光川排水機場付近にて撮影

2022年10月29日土曜日

こしらえる

  もう6年も前になるが、車を買い替えた。自転車を積めるように商用車にした。それまで乗っていた4ドアのセダンでも、工夫をすれば自転車を載せることはできたが、商用のバンは自転車の積み降ろしが至って楽である。

 その車を鈑金修理に出すことがあった。車の荷室を覗き込んだ修理屋さんに、「これは自分でこしらえたのか」と尋ねられた。何のことかというと、車の荷台には自転車を固定するスタンドが備え付けてある。自転車を積み降ろしするときに、荷室の内装が傷つかないように内張がしてある。そのことをきかれたのである。ついでにいえば、荷室にはカーオーディオ用のスピーカーを増設し、自転車の工具を収納する箱も準備してある。

 「こしらえる」とは言い得て妙である。自分で作ったわけではない。いろいろなものを組み合わせて、使い勝手のいいように作り変える。「しつらえる」という意味に近いかもしれない。

 今では死語になっているが、嫁入り道具をそろえることを、婚礼の「こしらえ」と言っていた。新しい生活に必要なものを買い揃え、準備をすることだろう。こしらえごとといえば、つくりごとや嘘という意味になる。こしらえものは、模造品やにせもの。さて、「こしらえる」というのは、いい意味にとればいいのか、あまりよろしくない意味なのか、難しいところへ迷い込む。

 「こしらえる」という言葉には、工夫を凝らし、苦労をして形を整えるというような響きもある。自分の気に入るようにしつらえていくという意味合いを感じる。愛用の自転車に何かと手を加え、気に入った部品を組み込んで、快適に走れるようにする。単に愛車を作るのではない。あれこれ考えて「こしらえる」という言い方が似つかわしい。そこには多少のこしらえごとやこしらえものが混じっていたりもする。

 

いつも何かしらこしらえることを思っている

孫の大好きなこの電車には
自転車でもよくすれちがう

そこでひとつこしらえてみた

たまには自転車を降りて遊ぶ

自転車も自転車に乗る身体も
少しずつこしらえてきた

長い人生だって
こしらえごとや
こしらえものも
織り交ぜながら
こしらえてきた





2022年10月22日土曜日

こける

  「こんばんは。一人走行会でコケちゃいました。道に迷いどこぞの屋敷に入り込み、慌ててUターン!これがまずかったようで、砂利にハンドルをとられズルッ!肩と頭をアスファルトで強打!!  痛ったー!若い頃なら出来ていたことが出来なくなっています。改めて安全第一を痛感した次第であります。」

 先週の日曜日に送られてきた自転車仲間からのメールである。その後のやり取りで、肩に痣ができた程度で、怪我は大したことがないと判り、先ずは安心した。奇しくも、ヘルメットのことを書いてブログを更新した翌日のことである。大事に至らなかったのは、ヘルメットのお陰もあったかもしれない。

 こけるというのは、転倒することの他に、物事がうまくいかないという意味にも使われる。いずれにしても、歓迎されることではない。幸い、自分はこれまで転倒の憂き目にあったことはない。お寺の境内を覗き込みながら走っていて、鐘撞き堂の石垣にすり寄ってしまったことはある。出会い頭に、高校生の自転車と接触したこともある。2回とも、肩がぶつかった程度で、怪我はなかった。自転車も無事だった。

 こける原因は、急ぐ、慌てる、判断が狂うということにあるようだ。あとは脇見が怖い。自転車で走っていると、思わぬ絶景に出会って、それに見とれる。スポーツ自転車はスピードが出るので、脇見はご法度。タイヤが細いので、砂利などにタイヤが食い込むこともある。メールにあった転倒もそんなことが重なったからだろう。

 二輪車であるからには、自転車はこける。歳とともに足腰が弱れば、こけるリスクは大きくなる。こけるのは当たり前と思っていれば、諸事万端注意をはらう。こけるのが当たり前でも、こけて怪我をすることだけは避けたいものだ。

砂の像はいずれ砂に還り
また新しい街をつくる

新しい人たちに
会わせてくれる

水に還った水は
岸辺に近づけば
新しい像を結ぶ

水は水の世界を
ひっそりと描く

秋の一日が
山の向こうに還る

子どものころに
いつも思っていた
夕焼けを追いかけて
山の向こうへ行ってみたい





2022年10月15日土曜日

自転車乗車用ヘルメットのこと

  自転車乗車用ヘルメット(というのが正式な呼称らしい)は、軽さを追求したものが多い。重量わずか200g300gというのが一般的だ。少し重い帽子をかぶっているのと変わらない。オートバイのヘルメットは1.5㎏~2㎏だから、それに比べれば随分軽い。当然のことではあるが、軽くて丈夫で、しかもデザイン性に優れたものは高価である。

 ヘルメットのメイン素材は発砲スチロールで、耐用年数は3年から5年、一度衝撃を受けたものは使わない、というのがお約束のようだ。高価なものだと2万円以上もして、安い自転車が買える。それを3年ごとに買い替えるというのはちょっと厳しい。5年使っても、買い替えるのは何だか勿体ない気がする。

 そもそも、大したスピードを出して走るわけでもないので、ヘルメットは必要ないと思っていた。自転車通勤をするようになって、帰宅時間には暗くなるので事故に遭う可能性が高いと思いかぶりはじめた。例によって、通販で安価なものを買って使っていたので、そろそろ買い替え時である。

 ヘルメットの試着をしに、名古屋の大きな自転車店に出かけたことは、少し前にもブログに書いた。せっかく新調するのだから、通販で安直に買い求めるのではなく、少し高価でも、色や形を吟味し、かぶり心地の良いものを買いたいと思った。何万円も払う余裕はないが、安全基準を満たし、軽くてフィット感の良いものが欲しい。

 いかにも本格的な自転車乗りという感じのものは避けて、のんびりと爺ちゃんが乗る、という雰囲気のヘルメットを探すのに苦労した。行き着いたのは、ベルギーのレーザーというメーカーが作る「カメレオン」というヘルメットだ。

これまでのヘルメットに較べると格段にかぶり心地がいい。重量を較べるとそれほど違わないが、頭にしっかりとフィットするので、かなり軽く感じる。1万円もしないので、それほど高級品とはいえない。ベルギーのメーカー製とはいえ、廉価版は中国で製造されているが、いい物を手に入れたと満足している。

条例で、自転車乗車用ヘルメットの着用と、自転車損害賠償責任保険への加入を、義務や努力義務に規定する都道府県が増えてきた。ほとんどの中学校では自転車通学にはヘルメットを着用するよう指導している。子どもたちにヘルメットをかぶるようにいうのであれば、ばあちゃんやじいちゃんも、率先してヘルメットをかぶり、安全に颯爽と自転車に乗るべきだろう。

インスタ映えとかいうけれど
質実剛健 実用本位

気持が映えていればいい

今日はこの道を
行きたいように行く


新しい道を遠くまで
出かけることもあれば

いつもの道で
佇むこともある










2022年10月8日土曜日

自転車について語ること

   毎週一度、自転車のことをブログに書いている。自転車のことを語っている。何をどう語るのか、それが難しい。自転車について、知人と話すことがある。一緒に走る自転車仲間やご近所の自転車に乗っている人たちと自転車談義を交わす。ときには、行きずりの自転車愛好家と話すこともある。

 10年も自転車に乗っていると、自分なりの乗り方や手入れと整備の仕方について学ぶこともあって、語ることが増えてくる。自転車の魅力について話したくなる。自転車に乗り始めようとする人から、自転車の選び方など尋ねられたりすると、つい嬉しくて経験談をひけらかしたくなる。

 最近考えた。自転車に乗ることや整備することにかなりの時間を費やしているのだから、語ることはある。但し、それを他の人に押し付けたり、主張しすぎたりしてはいけない、ということである。

 スポーツ自転車というくらいだから、自転車もスポーツの用具である。野球のグラブやテニスのラケット、ゴルフのクラブ。使い方や手入れの仕方は人によってそれぞれ違う。選び方ももちろん違う。自分のやり方が必ずしも他の人に役立つとは限らない。

 自転車は、使い方によって命の危険もある。プロでもない自分が、曖昧なことを語るのは無責任だ。参考までにという条件付きで、経験談を語るにとどめたい。尋ねられたことだけを控えめに語るだけにとどめたい。かといって、尋ねられても出し惜しみをして、役に立ちそうな体験をしっかり伝えないのは不親切だ。

 語っていると、整備を手伝うことにもなる。これが、また、難しい。素人が整備をしても、完璧にできる保証はない。手伝わなければ冷たい態度だと思われそうだが。手良かれと思って手伝ったことが、深刻な事故の原因になっても困る。自分の自転車なら整備できても、他の人の自転車は整備すべきでないこともある。相談されても、突き放すようだが、「う~ん、プロの自転車屋さんに尋ねてはどうですか」と勧めることも必要だ。自転車について語っても、騙るかたることのないようにしたい


曼殊沙華が咲いた
花の向こうを時が過ぎていく

今年の曼殊沙華は
この場所で見る

すれちがいざま
想いを伝えあう

あとに残してきた場所
あとに残してきた時間

柿の木は語り
自転車は語る
私は何を語ろう
     






2022年10月1日土曜日

三種の自転車

 10年乗りつづけている間に、自転車が33種類に増えた。近場に知らない道はない、といえるくらい走り回った。クロスバイクから初めて、遠出用にと思ってロードバイクを手に入れた。クロスバイクやロードバイクでは走れそうにない山の中も走りたくなって、マウンテンバイクも買ってしまった。それぞれの自転車は、用途によって持ち味が違う。どこへ行くか、いつ乗るか、誰と一緒に走るかによって乗り分ける。

 ロードバイクとクロスバイクは比較的よく似た性格である。実用車と比べると圧倒的に軽く、よく走る。スピードに乗せやすく、遠くまで出かけても疲れは少ない。慣れれば一日中乗っていられる。マウンテンバイクは、フレームもタイヤも頑丈で重い。漕ぎ出しが重く、スピードを出すのは苦手だ。速く遠くへ行くには不向きだが、ハンドルの幅が広く安定感はある。ロードバイクやクロスバイクでは走れないような荒れた道や山道へも入って行けるので用途は多い。険しい山道以外ではゆったりと乗れる。 

 いつもの仲間と走るときには、クロスバイクかマウンテンバイクに乗る。同じ自転車に偏らないように、出かけるコースを考えて均等に乗るようにしている。ご近所の自転車仲間と走るときにはロードバイクと決めている。全員がe-Bikeに乗っていて、モーターのアシストを受けて、多少厳しい行程もスイスイ走る。同じペースで走るにはロードバイクでないと太刀打ちできない。自分だけはノンアシストのロードバイクでついて行くが、一緒に走れば脚力の鍛錬にはなる。

 脚力の鍛錬などと生意気なことを言っているが、寄る年波には勝てない。脚力はいずれ衰え、バランス感覚も鈍くなるだろう。そのときは、マウンテンバイクを多用すればいいと思っている。少し細めの軽いタイヤに換えて、大きなギア比を生かしてゆっくり走れば、楽に走れるはずだ。当面は、流行りのe-Bikeの誘惑には負けないで、ということは、4台目の自転車まで手に入れることは考えないで、今ある3種の自転車を使い分けて、自分の脚で走りつづる。

気のおけない仲間と
四方山話をしながら
クロスバイク

近場へ手ぶらで
ふらりと出かける
クロスバイク

少し気合を入れて
よそいきや遠出をする
ロードバイク

知らない景色に出会う
立ち止まってみる
ロードバイク

泥んこになって
子どものように遊ぶ
マウンテンバイク

道なき道の
先まで行ってみる
マウンテンバイク

川を上り
山に分け入り
マウンテンバイク