街中を走っていると、廃業してしまった自転車屋さんを見かける。営業中なのか閉店したのか判らない店もある。軒先に時代物の看板が残っていたりする。後継する人がいなくて、細々とご近所の自転車の修理だけ続けているという自転車屋さんの話も聞く。長年培われた自転車整備の技術が途絶え、使い込まれた専用工具が錆びついてしまうのはもったいない。
掃除や店番を手伝いながら、自転車の整備や修理を教えてもらえるような店はないものか。アルバイトではなく、弟子入りをする。もちろん手弁当でよい。退職して自転車に乗り始めた頃にそんなことを考えていた。生半可な気持ちでは弟子入りできない。本気で教えを乞うのだから、日参することになる。自転車に乗る時間は削られる。躊躇している間に70歳も目前になった。時間切れを迎えた気もする。
自分の自転車は自分で整備をしたり、部品を交換したりする。簡単な修理を近所の人から頼まれたこともある。すべて自己流の素人作業で、安全の保障はできない。今更自転車稼業を始めたいということでもないが、点検や簡単な修理、調整をするときは事故につながらないように確実にやりたい。
調べてみると、自転車店の営業に特別の資格は必要ないらしい。自転車技士や自転車安全整備士という資格を持っていることが推奨されるという程度である。自転車技士の資格を取得するには、一般財団法人日本車両検査協会が行う、「自転車組立、検査及び整備技術審査」に合格しなければならない。学科試験と実技審査が課せられる。審査がどの程度のものなのか、『自転車技士学科試験過去問題集』と『自転車組立、検査及び整備マニュアル』を車輛検査協会から取り寄せた。ネット販売はしてないので、協会へ注文書と現金を書留で送り入手した。
学科試験は50分間で20問の問題にマークシートで回答する。70%の正答で合格。マニュアルを熟読すれば何とかなりそうである。実技の審査には自前の自転車を持ち込む。前後ともに変速機を備えた自転車を準備する。25分間で所定の部分を分解し、80分で組み上げる技能を審査される。取り寄せたマニュアルに作業工程が詳述されている。ほとんどの作業は自分でもやったことがあるが、車輪のスポークは組んだことがない。審査に時間制限があり、短時間で組み上げるのは難しいが、繰り返し練習すれば独学独習でも審査を通りそうだ。
何はともあれ、受験資格を満たしていることが先決問題である。条件の一つは、18歳以上であること。70歳直前なので、これは優に満たしている。もう一つ、組立・整備・点検の実務経験が2年以上あること。これには不適格である。本気で自転車屋さんに弟子入りしていれば、この条件もクリアできていたはずだ。もっとも、老舗の自転車店で、長年の稼業で得られた勘と経験にふれ、間近で学び、技術を習得できれば、自転車技士の資格はいらないだろう。
※ 自転車技士 認定団体:財団法人日本車両検査協会 後援:経済産業省 ※ 自転車安全整備士 認定団体:公益財団法人日本交通管理技術協会 後援:警視庁 同じ試験で両方の資格を取得できるが、整備士の方は面接試験がある
廃業した自転車店 ツノダ自転車の看板が残る TU号のCMソングが聞こえる つんつんツノダのテーユーご~ |
この店は営業中 BSブリヂストン自転車と ヤマハオートバイ・メイトの看板 乗っちゃえ乗っちゃえヤマハメイト~ |
自転車技士の実技審査の課題 この状態まで25分間で分解し 80分間で完成車を組み上げる |
学科試験の過去問の一例 どこかで見たような設問 法規に関する出題もある |
今年は入梅が早いが雨の合間に出かける 自転車屋さんに弟子入りしていれば こういう時間に技術を磨けたかもしれない |
書を捨てて 技能の習得も半端なまま 海を見に来ている |