冬をむかえる

冬をむかえる
'20.12.22 愛知県海部郡飛島村梅之郷 日光川排水機場付近にて撮影

2023年10月28日土曜日

自転車のすき間

  自転車を駐輪場に停めるときに、隣の自転車との間にどれくらいのすき間が必要か、という話ではない。自転車を出し入れするときに隣の自転車を倒したり傷つけたりしないすき間も必要ではあるが、ここでは自転車の取り付け部品のすき間の話。

 自転車の車輪のリムをはさんで車輪の回転を止めるブレーキの場合、リムとブレーキシュー(ブレーキのゴムブロック)のすき間は1㎜程度に調節する。左右同じように1㎜のすき間を作る。左右合わせて2㎜のすき間の間をタイヤが回転している。ブレーキをかけると、そのすき間が無くなり、リムとシューが密着し摩擦力で回転を止める。すき間が大きすぎるとブレーキの効きが悪くなる。

 左右で2㎜のすき間しかないところで回転する車輪が、横に2㎜振れていたら、リムとシューが擦れ合う。走行中にブレーキがかかることになる。車輪の横振れも中心軸から左右に1㎜以内に抑えなければならない。

 多くの自転車に使われるシマノの変速機の整備マニュアルをみると、前の変速機のチェーンを移動させるチェーンガイドとチェーンのすき間は0㎜から0.5㎜が適正となっている。そんなバカな。0㎜といえばすき間はなし。既にガイドとチェーンが擦れ合っているということではないか。実用には中間の0.25㎜くらいに調節すべきということだろうか。

 自転車屋さんで教えてもらったことがある。自転車の各部の調節ネジは、4分の1回転とか半回転といった具合に、ごくわずかに締めたり緩めたりする。オートバイなどを自分でいじる人は、この微妙なさじ加減が判らないので失敗しがちだ、ということだった。

 昔はオートバイだってキャブレターの燃料と空気の混ぜ具合やエンジンの点火時期などの微妙な調節は、少しずつネジを回して手探りでやってましたけど。今では電子制御にお任せである。自転車のすき間調節だけは、人と人の間合いの取り方と同じように、昔も今も人情の機微が必要ということか。

花のすき間に
秋空がのぞく

細いすき間を
通り抜けて進む

花のすき間を
秋風が吹いて通る

花のすき間を
ときが過ぎていく

空と花と
自転車と私と
いくつもの
すき間を
調節している













2023年10月21日土曜日

消しゴムマジック

  GoogleOneのメンバーとGoogleが販売するGoogle Pixelというスマートフォンのユーザーは、「消しゴムマジック」という機能を無償で使うことができる。Googleフォトアプリから写真を選び、「編集」をタップする。そこでツールから「消しゴムマジック」を選ぶ。するとAIが、写真に写り込んだ不要なものを選んで消去してくれる。

 先ず、AIが背景に写りこんだ電柱や電線、関係のない人物などを、消去する候補として選びだす。「すべてを消去」をタップすれば、候補に挙げられたものはきれいに消える。背景は修正され、あたかも初めからなかったかのように不要なものが消え失せる。消去するものをAIに任せるのではなく、自分で消したいものだけ選ぶこともできる。

 公開するブログには毎回写真を添えることにしている。自分としては本文よりも写真の方が面白いと思うことがある。ブログ用の写真は、毎回フォルダにまとめて保存しておく。写真の整理が同時にできるのは都合がいい。

 これまでに撮りためた写真も、一度Googleフォトにアップロードすれば、消しゴムマジックが使える。何枚か試してみた。夾雑物が消えると画面はすっきりする。すっきりはするが、どこか自分の撮った写真のように思えない。

 写真に関しては全くの素人で公開するのがはばかられるが、自転車のおかれた風景を紹介したいと思って、ブログに添えている。消しゴムマジックを使えば、下手な写真も少しは見栄えが良くなるかもしれないが、オリジナリティは損なわれてしまう。

 消しゴムマジックだけではなく、色調や明るさを自在に変えられるソフトもある。活用すれば写真撮影の腕が上がったように錯覚するが、小手先のごまかしは感心できない。自転車のおかれた風景は、オリジナルのままで残したい。修正は加えずに、下手は下手なりの写真をブログに残しておくことにする。


自転車のおかれた
私だけの風景

消しゴムマジックが
自転車を消して
影だけが残る

影すらも波が洗い流して
私の風景は跡形もない

自転車と影と背景が
記憶をつくる

魔法では
消えない
風景の記憶
記憶の風景

疲れた脚の形はAIが消しても
疲れた脚の記憶は脚に残る



2023年10月14日土曜日

ギア飛び

 マウンテンバイクの走行距離が1km を越えた。変わった現象が起き始めた。一番小さなギアにチェーンが掛かっているときにペダルを強く踏むと、チェーンがガクッとずれるようなショックが脚に伝わる。

 症状をそのまま入力してインターネットで検索してみる。「ギア飛び」という故障らしい。次にチャットGPTに「自転車のギア飛びについて教えて」と尋ねてみる。

「自転車のギア飛び(ギアスキップ)は、自転車のチェーンが予期せずにギアを変える現象を指します。これは通常、自転車のギア関連の部品や調整に問題がある場合に発生します。以下に、ギア飛びに関する詳細とその修理方法について説明します」といって、原因から対処の仕方まで、即座に答えてくれる。チャットGPT恐るべし。

 ネットで調べた解決方法を鵜呑みにするわけではないが、まずはチャットGPTの教え通りチェーンを新しいものに交換してみる。これで解決するだろうと思いきや、ギア飛びが余計にひどくなる。こんなときは後ろのギア(カセットスプロケット)も新しいものに交換する必要があるらしい。

 そこで考えた。マウンテンバイクの乗り方にもよるが、自分の場合は一番小さなギアを多く使う。最小のギアだけ早く摩耗する。ロードバイクの小さなギアは、脚力がないのでほとんど使わない。新品同様である。さいわい歯車の厚さも歯数も同じなので、ロードバイクのギアを流用して、最小のギアだけ取り換えた。ギア飛びは見事に解消した。

チャットGPTも、ここまでは教えてくれない。密かに、AIよりも賢い自分がここにいるぞと悦に入っている。

「ギア飛び」は、1万㎞もトラブルなく丁寧に走った末の名誉の故障ともいえるし、それほど長い間、チェーンやスプロケットのメンテナンスを(もちろん注油や洗滌はしていたが)しなかった不名誉な故障ともいえる。脚力がないので、チェーンやギアの摩耗が少なくて長持ちしたという、さらに不名誉な故障の原因も考えられる。

長い時間をかけてなじむ

長い時間をかけた愛着

長い時間が削りつづけ
すき間を広げることもある

うまくかみ合って出会えたり

待ちぼうけだったりする

 


2023年10月7日土曜日

ネジを巻く

 自転車仲間にいろいろな人がいる。メカに強く、自転車の整備まで自分でこなす人もいれば、走るのは得意でもメカには弱い人もいる。高価な自転車に乗っていても、保守点検については意外に無頓着という仲間もいる。

 機械いじりはあまり得意ではない仲間の一人が自転車のブレーキシュー(車輪の回転を止めるゴムの部品)を自分で交換したいという。「ブレーキシューの交換は簡単。取り付けネジを緩める。古いブレーキシューをはずす。新しいシューをつける。取り付けネジを締める。たったこれだけ」と少しからかってみた。

 本人には深刻な問題がある。まず、どのネジを緩めるのか。ネジは完全にはずしてしまっていいものかどうか。新しい部品を組み付けるには、どれくらいの強さでネジを締めつければいいのか。うまく取り付けたとして、最期にブレーキの調整をするには、どのネジをどう回せばいいのか。普段機械になじみがないとなかなか手が出せない。

 自転車は構造が簡単とはいえ、部品の脱着や調整をするときには、どのネジをどの程度締めたり緩めたりすればいいのか、すぐには判断のつかないこともある。締めつけすぎては部品やネジそのものを損傷しかねない。

 私の場合はご近所の自転車愛好家で機械いじりに長けた人から、固着したネジを緩める方法やネジを締めつける便利な工具などを教わって、急場をしのぐことが多い。私も、仲間をからかったりせずに、判ることは丁寧に伝え作業を手伝うべきだ。

 ところで、ネジを締めるのも難しいが、同じネジでも、ネジを巻くというのが、これもなかなか難しい。すこし自転車に乗ることをさぼっている仲間のネジを巻くには、どのネジを、どれくらいの強さで巻くのか、適当な工具というのもこれが容易には見つからない。


季節のネジを巻く

強すぎもせず
弱すぎもせず

速すぎもせず
遅すぎもせず

遠すぎることもなく
近すぎることもなく

秋のネジを巻いている