今年になって、すでに5回椿神社まで走った。「伊勢国一の宮 猿田彦大本宮 椿大神社」が正式名称。「伊勢国鈴鹿山系の中央麓に鎮座する」と神社の公式案内書にある。
神社へ詣でるのが目的ではない。我が家からルートを変えながら辿る片道30㎞程の道のりは、ゆっくり一日かけて寄り道をしながら走るのにちょうど良い。朝早く走り始め、少し急げば遅い昼には家にもどれる距離でもある。
家を出て、通行量の少ない田んぼの中の道を選び、菰野町の庁舎を目指す。途中、巡見街道や八風道など、古い街道を走ることもできる。常夜灯や石の道標から、古い街道筋の気配が感じ取れる。『みえの歴史街道』というWebサイトに、三重県内の主だった街道が紹介されている。サイトの地図で確認しなくても、走っていれば古い街道の匂いがする。
菰野町を起点に、椿神社まではその日の気分と乗っている自転車の種類でルートを選ぶ。マウンテンバイクに乗っているときには山側の道を行くのが面白い。近鉄湯の山線の終点、湯の山温泉駅から林道湯森谷線と林道雲母ヶ峰線の分岐点を目指す。
ここからは、東海自然歩道を水沢町へと抜ける。杉の木立の中を走り、途中舗装の切れた坂道を登る。アップダウンの多いコースを走り切るともみじ谷に出る。茶畑の中を内部川沿いに水沢本町まで下ると、椿神社は目前だ。
ロードバイクやクロスバイクのときには、山の中のルートを避けたい。菰野の街を出はずれて、国道306号線沿いにある廣幡神社から金渓川を上り、巡礼道を辿る。急な坂を登るときらら湖が光る水を湛えている。一息ついてさらに急坂を登る。鈴鹿山麓リサーチパークの山の中には似つかわしくない研究棟が姿を現す。ここから見る伊勢湾は絶景である。これまで登って蓄えた位置エネルギーを使って、山側ルートと同じように水沢町へ下る。
菰野町から水沢町へは、巡見街道をなぞるように整備された国道306号線を走るのもよい。この道は並行するミルクロードよりも側道が広く自転車は走りやすい。自動車が走ることしか想定されていないのか、1㎞以上あると思われる直線の急坂に遭遇する。何度も来るとこの激坂を攻略するのも楽しみになる。
どのルートを辿っても、県道四日市関線に合流し、新名神高速道路の鈴鹿パーキングエリア付近で高速道路をくぐると、椿神社の社殿はすぐそこである。
椿神社は標高220mに位置している。アップダウンを繰り返すので、走行状況を記録するスマホのアプリによると、獲得標高は500mになる。朝早くに家を出て、お昼には間がある時刻に到着したとしても、どうしようもない空腹感に苛まれる。参拝が目的ではないので、形ばかりのお詣りを済ませると、門前の椿会館で食事をすると決めている。自転車で出かけるときの食事は奢らない。この会館の550円のカレーライスが定番である。
今日はどこに行こうか 決めかねたら自転車にまかせる |
長い坂道を登ったり 坂道はさけてみたり |
山を越えたり |
山の中を走り抜けたり |
湖に出迎えられて 眺望を楽しんだり |
季節も私も変わっていくので 何度来ても同じ場所なんてない |
おまけにおいしいものにありつけたら きょうも儲かった気がするではないか |