冬をむかえる

冬をむかえる
'25.1.22 山を見て走る

2022年5月14日土曜日

二輪の力

  爽やかな季節をむかえ、吹く風が軽くなった。寒い風は重く、行く手をはばむ。爽やかな風は向かい風でも心地がよい。つい遠出がしたくなる。関ヶ原まで行ったことを書いたが、自転車日和に出かければ、片道50㎞くらいは案外簡単に走れてしまう。

 関ヶ原の古戦場に着き、ホッと一服、紫煙をくゆらせる。こんなときにいつも決まって思うことがある。新しい場所を訪れて、そこに停めた自転車を眺めていると、こんなものでよくぞここまで来たものだ思うのである。

 通り慣れた道を走っているときにはそれほどでもない。遠出をして、行き着いたところで自転車を眺めていると、何とも心細い乗り物だとつくづく思う。華奢なフレームに細いタイヤ、軽量であることに越したことはないが、遠出に使うロードバイクは、総重量わずか10㎏ほどの重さである。タイヤの幅は23㎜。これで60㎏ちかい自分の体重とわずかではあるが携行品をここまで運んできたのかと思うと、信じがたい気がする。よくぞここまでと思うのは、自分の脚力もさることながら、自転車の頼りなげなたたずまいによるものだ。

 行ってしまえば、帰りも同じだけの距離を帰らなければならない。この細い車体とタイヤは、帰り道も同じように私を運んでくれるか。自分の体力よりも自転車のことが心もとない。

 オートバイで遠出をしたころにも、同じようなことをよく思った。走行距離の感覚は少し異なる。オートバイならば、日帰りのツーリングでも片道150㎞ほどを走る。今日はここまでと決めたところで、休憩をしているときに、フレームやタイヤを眺めるのは、その頃からの自分の癖らしい。自転車とは比較にならないほど頑丈ではあるが、それでも、よくぞこんなものでここまで来られたものだという思いは同じだった。それが自転車となると、その思いが強いのは至極もっともである。

 自動車のように、屋根付きで、よく身体にフィットするように考えられた椅子に座って移動するのとはわけが違う。爽やかとはいえ、風を切って、陽の光にさらされながら走るのはそれだけで体力を消耗する。縦に一列に並ぶ二つの車輪は、意識はしていなくても、走りつづけ御しつづけていないと転倒する。自動車のように車にお任せという時間はない。

 友人たちと遠出をするときは、1台の自動車に乗れば、走っている間も会話を楽しめる。通り過ぎる景色も一緒に眺められる。雨風の心配もない。オートバイや自転車に乗って、わざわざ別々に走ることもなさそうなものだ。

 なのに、この心細い乗り物で、また、遠くへ行く機会をうかがっているのは、二輪の力に魅力があるからに違いない。体力をつけるとか健康の保持というのではない。走るのが面白いのだ。難儀をしてもそれも楽しみ。二輪で走る乗り物を手放すわけにはいかない。

自転車を停めて思う
よくぞここまで来たものだ

そして、もう、次の行き先を探している

何かに誘われるように
何かを誘うように

二つの輪が光りながら
山を越えていく

二輪の力で走る
がんばれ自転車



2 件のコメント:

  1.  私の自転車の思い出は、ほとんどありません。いったいいつ頃か乗り始めたのか、小学校の頃どんな自転車に乗っていたのかも覚えていません。
     中学入学時に3段変速の自転車を買ってもらって喜んでいたら、隣の小学校からやってきた同級生がドロップハンドルの無茶苦茶派手な自転車で入学式にやってきて面食らった記憶があります。
     高校時代は最寄りの駅までの足に中学時代の自転車を使っていましたが、あまり愛着がなく6年間ほとんどメンテナンスをした記憶がありません。パンクやらチェーンが外れたりゴムひもが巻き付いたりしたら、即馴染の自転車屋さんに直行。だから、自転車の仕組みや直し方、部品の目的などはチンプンカンプン。
     あれから50年ほど過ぎて、友だちの勧めもあってスポーツバイクに乗り始め、自転車の奥の深さに感動しつつ、日々是自転車とまではいかないものの、バイクの楽しさを味わう毎日です。
    あと10年は走りたいと思っています。
     蛇足です。中学入学時、ドロップハンドルで颯爽とやってきた男に先日、数十年ぶりに町のショッピングモールで出会いました。長髪の白髪頭を後ろで束ねてチョイワル男のイメージ。
    昔取った杵柄?、三つ子の魂百まで、とはよく言ったものです。
     

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  2.  私は、昭和39(1964)年、前の東京オリンピックの年に中学へ入学しました。べーえんべーさんも同じような世代だとすると、その頃、3段変速機のついた自転車を通学に使っていた人は、ほとんどいなかったのではないでしょうか。ましてや、ドロップハンドルの自転車に乗った同級生がいたとは。私のような田舎の中学生には及びもつかないことです。ドロップハンドルの自転車の同級生が、白髪をポニーテールにしているのに再会されたというのも、なるほど大いにありそうな話で、面白いです。

     大学時代の友人が、ドロップハンドルのスポーツ自転車に乗っていて、私がドロップハンドルを間近に見たのはそれが初めてだった記憶があります。その友人がしきりに自転車を勧めてくれましたが、私はその頃はオートバイにしか関心がなく、自転車との出会いはスルーしてしまいました。

     べーえんべーさんは、通学自転車から遠ざかって50年、今、自転車開眼というところですね。出会いはいつになっても楽しいものです。バイシクルライフを存分にお楽しみください。

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