冬をむかえる

冬をむかえる
'20.12.22 愛知県海部郡飛島村梅之郷 日光川排水機場付近にて撮影

2023年5月27日土曜日

ツアー・オブ・ジャパン観戦記

 ツアー・オブ・ジャパンは、1982年から1995年まで14回に渡り開催されていた『国際サイクルロードレース』を継承する国内最大規模の自転車ロードレースである。1996年に名称を『ツアー・オブ・ジャパン』に変更し、第1回が開催された。世界トップレベルの強豪チームが参戦する、アジア最高クラスのハイレベルな国際レースである。

 堺、京都ステージから始まり東京まで8つの場所を転戦する。このレースの第3戦がごく身近な場所で毎年開催されていることを知らない人も多い。コロナ禍の影響で3年間中止になっていたレースが今年はいなべの地に戻って来た。

 というわけで、ご近所の自転車愛好家と連れ立って4人で観戦に出かけた。雨が降るようなら観戦を見合わせようという程度の、地元のにわかレースファンの軽い乗りである。

 阿下喜駅から始まるレース前のパレードに間に合うように自転車で自宅を出発。パレードでは、集合した国際クラスの選手たちの巨大な体躯と華やかさ、ロードバイクの機能美に驚かされる。選手と見まがうようなウエアに身を包み、高価なロードバイクで観戦に訪れる人も多い。珍しいロードバイクが見られるのも興味深い。

 本番のレースは、海外、国内の16チーム96人が覇を競う。レースの細かいルールも判らないままに、自転車の速さに驚き、選手たちのタフさに感動する。114㎞の急坂を含むコースを8周+α、127㎞を3時間ほどで走り切るのである。

 地元の利を活かして、会場周辺の交通規制をかいくぐり、観客の少ないコース脇でレースを観た。どこで観戦しても入場料は無料というのがまたいい。すぐそばを走り抜ける選手たちの爆走、激闘をよそに、のんびりとレースの成り行きを見守る。転戦するレースを追いかけ、県外から押し寄せるレースファンとはちょっと調子の外れた、ピクニック気分のレース観戦も楽しい。

 当日は、周辺の食べ物屋さんなども遠来のレースファンたちで混み合うだろうと思い、いなべ市役所の職員食堂で遅めの昼食を食べて、レース観戦のしめくくりにした。地元で気軽に国際的な自転車レースが堪能できるとは、何とも恵まれた環境である。

 

ツアー・オブ・ジャパン公式サイトより
これが世界のロードレース

パレードの出発地点
レースの前の静寂

レースの前の高まり

パレードが始まる
期待と興奮

パレードで見た選手を
本番のコース脇から応援

選手の息遣いが聞こえる
自転車とは思えない
速さに圧倒される

国際的なレースを
自己流に楽しむ
地元のおっさんの
ピクニック的観戦の図


2023年5月20日土曜日

失敗の連鎖

 友だちがロードバイクに乗っていて、前から来た車をよけそこない、ブロック塀にぶつかった。これが最初の失敗。

幸い怪我はなく、ハンドルの左側についているシフトレバー(変速装置とブレーキのレバーが一体なっている)の損傷だけですんだ。 

彼は、行きつけの自転車屋さんへ壊れた自転車を持ち込んだ。修理の詳細は確認をせずに、すべて自転車屋さんにお任せで修理を依頼した。客と店の信頼関係の問題なので、とやかく言う必要はない。

 自転車屋さんは詳しい修理内容を説明をせずに、総額で22,000円程かかるということで修理を引き受けてくれた。友だちはそのまま自転車を預けて帰った。修理代はリーズナブルだし、すぐに修理をしてもらえるのもありがたい。

 ところが、もう少し丁寧に修理の内容を確認していれば、最初の失敗はもっと値打ちになった。せっかくシフトレバーを交換するのなら、長年使っていたシフトワイヤーとブレーキワイヤーなども一緒に交換すれば、工賃の節約ができて他の部品の交換もできただろう。これが二つ目の失敗である。

 友だちには取り外したシフトレバーを自転車屋さんからもらってくるように頼んでおいた。壊れた部品も歪んだところを修正すれば予備の部品として使えるかもしれない。

 案の定、事故に遭ったシフトレバーは歪みを修正すれば、また使えそうである。これくらいは素人でも直せる。何でも新品に交換すればいいというものではない。そう思って、レバーにパイプをかぶせて延長し、力技で歪みを伸ばそうとしたら、レバーの付け根がポキリと折れてしまった。捨てられる運命の部品ではあったが、高価な部品だけに惜しいことをした。

 不注意の事故による自転車の損傷、その修理を依頼するときの確認不足、そして部品の構造をよく確かめずに無理な復元を試みた部品の破損。失敗の連鎖はよく考えればどこかで断ち切れたはずだ。そもそも気をつけていれば連鎖の起点もなかっただろう。


背景に知らない人が写り込んだ失敗

水面に映るはずの背景が
突然吹く風に消された失敗

何が狙いか定まらない失敗

狙ったものが写らない失敗

目を合わせていたはずなのに
そっぽを向かれてしまう失敗

慌てて急いで
混沌とした失敗写真の連鎖

ついでながら失敗の連鎖の写真






2023年5月13日土曜日

自転車中心主義

 主義というほど大げさなものではが、仕事を辞めて家に居るようになってからは、気がつけば自転車に乗ることを中心に生活が回っている。

 以前にもブログに書いたが、今年数え歳で100歳になる父がいるので、長い間家を空けて遠くへ出かけることはできない。父を連れて旅をするというようなこともむずかしい。かといって、天気のいい日に家にこもって本を読んでいるというのもつまらない。

 自転車は、ほんの少しの時間にふらりと出かけても、心のもちよう次第で長い旅に出たような気分が味わえる。この面白さは、色褪せない。

 自転車で出かけた先で写真を撮る。週に一度更新するブログにそれを掲載する。自転車に乗ることが、日課を決めたり少し先までの計画を立てたりするときの最優先事項になる。

 天気予報を見るのは、自転車に乗るためである。特に風向きや風の強さは気になるところである。自転車には大きく影響する。

 広くはない庭の、それでも手入れは必要であるが、天気と相談して、先ずは自転車に乗る時間を確保してから、庭いじりの計画を立てる。

 人と会うにも、自転車の乗ることの方を優先する。仕事をしなくなってからは、どうしても会う必要がある人は少ない。人と会う約束は雨の日に、と思ってしまう。自転車を優先していると、友だちと疎遠になりかねない。自転車中心主義などと悦に入っていると、見逃してしまうことも多くなるかもしれない。

 生活は自転車の車輪と一緒に回っているなどと恰好をつけている。ところが、スポーツ自転車に乗り出すには若干の準備もいる。面倒なので、煙草を買いに出かけたり、手紙を出したり散髪に行くときに、ほんのご近所まで行くのにも自動車を使う。これでも自転車中心主義といえるのか、はなはだ疑問である。

日々の生活の真ん中で
自転車に乗っている

自転車の肩越しに季節の花を見る

自転車の向こうに季節の花を眺める

自転車の似合う場所を探し
自転車の似合う場所に出かける

日々の生活の外へも
自転車で出かける

こうやって
新しい場所にも
新しいものにも
出会っていくが
見落としている物や
会えずに終わる人も
あるのかもしれない





2023年5月6日土曜日

マゴチャリ(孫の自転車)を作る

 我が家の一番小さい孫と公園へ自転車に乗りに行った。彼の自転車は、3歳のころから愛用しているものなので、サイズがかなり小さい。本人は、初めて乗れるようになった自転車なのでいたく気に入っているらしい。この4月に小学校へ入学したが、小さな自転車で満足しているようだ。

 本人が欲しいと言わないのに、新しいものを買うことはない。身体が大きくなるのに合わせて、次々と自転車を買い替えるのは無駄なことでもある。

 どこかに使われていない子ども用の自転車がないかと探してみた。家の近くに廃品などを集めている店があって、古い自転車が山積みになっている。そこでちょうど手ごろなサイズの子ども用自転車を見つけた。

 中国の人らしい店の主人に尋ねると、どの自転車でも1台千円で譲ってくれるという。長い間雨ざらしになっていたようで、チェーンやギヤ、メッキの部分もかなり錆ついている。それでも、フレームはきれいで色もわるくない。

 破れたサドルは、山積みの自転車の中で一番いいものと換えていけばいいと言ってくれた。良さそうなのを選んで取り換えた。サドルだけでも千円はしそうだ。この自転車を買って本当に大丈夫かと、店主の方が心配してくれた。

 早速、翌日から解体作業に取り掛かる。自転車を完全にフレームだけにして、組立てる作業をしてみたかったので、ちょうど良い教材である。千円なら安いものだ。子ども用の自転車も構造は同じだ。6段の変速装置もついている。

 錆で固着した部分の分解にはかなり苦労した。解体後はフレームやハンドルの錆を落として磨く。車軸やクランク軸など回転する部分や変速機はすべて分解、グリスアップして組み直す。ブレーキや変速機のワイヤー、タイヤなどは安全にかかわるので新しい部品に交換した。出来上がりは新品と較べても遜色ない。

 孫のために手間暇かけて自転車を組み上げるというと聞こえはいいが、自分の楽しみ以外の何ものでもない。マゴチャリの完成を喜んでいるのは孫ならぬ自分自身なのである。

ちっちゃい自転車だけれど
これに乗れば
おとなたちを置き去りにして
魔法の国へぼうけんに行ける

何だかよく知らない
自転車がやって来た

このおんぼろ自転車も
だれかのお話の中で
走っていたのだろう

正体をひとつずつ
たしかめてみよう

だれかの昔々の
お話の中から

新しいお話が
生まれてきて

また魔法の国の
冒険がはじまる