'26.1.1 新しい年を迎える

2026年3月7日土曜日

愛車の育て方

  もしも、手入れをしないで15年も自転車に乗りつづけたら、いろいろなところに故障が出るだろう。手当のできる故障ならいいが、もう使い物にならなくなって、買い替えなければならないかもしれない。

 自転車でも自動車でも、それに家電製品にしても、品質が向上していて故障は少ない。それでも、耐用年数は10年くらいを想定しているものが多い。10年もすれば古びて見える。使おうと思えば使いつづけられるのに、新しいものに魅かれて買い替える。使うことに飽きたり、使いつづける情熱を失ったりすることもある。

 初めてのクロスバイクには今年で15年、その次に買ったロードバイクには14年乗っている。5年落ちの中古で買ったロードスタ―という車に至っては、20年乗りつづけている。乗ることに飽きたり、乗りつづける情熱が失せたりすることはない。高級なものではないが、大切な愛車たちなのだ。

 経済的なゆとりがなかった我が家では、父はずっと中古の自動車に乗っていた。「新車は買ったその日から古くなる。中古車は手入れ次第で買ったときよりコンディションが良くなる」、そう言っていた。負け惜しみではない。手を加えることを楽しんでいたようだ。

 コンディションが良い状態を維持したいからといって、乗らないのでは意味がない。乗りまくって楽しむ。ロードバイクではかなりの長距離を走る。マウンテンバイクであればぬかるんだ道も走る。汚れもつくし瑕もつく。

 使い込んだ後は、充分に手入れや整備をする。お気に入りの部品があれば多少無理をしても手に入れて交換する。自転車は身体の一部のような乗り物、手を加えれば身体に馴染む。愛車はこうして、育っていく。

 もう歳も歳なので、今更、高価な部品を買って取り付けなくても、というのでは愛車は育たない。目新しい部品や用品が欲しくなるのは物欲ではなく意欲の表れ、この意欲が愛車を育てる。

用済みになれば
取り壊されて
捨てられる

はじめからなかったかのように
人の記憶から消える

この場所をこのままで
とどめようとする愛着

この場所がこのままで
残っていく記憶の連鎖

2026年2月28日土曜日

ツーリング今昔

  オートバイのガソリンタンクの上にタンクバッグを取り付ける。レインウエアや簡単な整備工具を入れる。その日に走るコースの地図をバッグの上に挟み込む。携帯電話はまだ世の中に存在していない。

 ナビゲーションやインターコムのない時代、ツーリングに出かけるにはそれなりの準備が必要だった。仲間とオートバイでツーリングに出かける。走り始めたら、一緒に走っていても孤絶した世界だ。仲間とはぐれたら連絡の取りようがない。

 走行中は仲間がいても話せない。信号待ちで止まったわずかな隙にヘルメットのシールドを上げて、大声で喋る。「そろそろ休憩にするか?」、「もう30分ほど走ったら昼飯にするわ!」。

 前のライダーがハンドルから手を離して振っていたり、後ろのライダーがステップから足を離して膝を伸ばしたりし始めたら、そろそろ休憩が必要かな、と察知する。

 自転車に乗るようになって、オートバイを手放した。今はツーリングといえば専ら自転車。今なら自転車のツーリングにもナビは使える。ヘルメットにマイクを仕込んで、仲間と話すこともできるらしい、が、使う気は毛頭ない。

道に迷ってもたかが自転車で走る距離。行き止まりになれば、自転車を担いで歩くこともできる。走りながら少し大声を出せば会話もできる。

 走り方の様子でお互いのコンディションを知る。前を行くライダーの頭が揺れ出したらちょっと休憩か。後のライダーがコーナの立ち上がりで遅れるようなら食料の補給タイムか。今様の便利な機器はなくても、仲間うちの気遣いがあれば何とかなる。

昔むかし、友だちと二人でオートバイで出かけた極寒の冬の1日を思い出す。寒さに耐えられなくて飛び込んだ喫茶店で古新聞をもらった。腹や膝に新聞紙を巻き付けて冷えを凌いだ。これが意外に暖かい。有り合わせのものと工夫でその場を凌ぐ。今も昔もツーリングの面白さはそんなところにある。

タンクバッグの上に
その日のコースを
拡げて出かける

タンクバッグの中に
その日のコースを
詰め込んで帰る

よくぞ、まあ
こんなに遠くの街まで
走って来られたものだ

果敢さや無謀が走る車線と
心細さや後悔が走る車線を
何度も乗り換えながら走る



2026年2月21日土曜日

気になる自転車

  1台、気になる自転車がある。今後の自転車の乗り方にもかかわるので、この自転車についてあれこれと思案している。

 ラレーというブランドの自転車を造っている新家工業が自転車の製造をやめてしまった。ラレーの自転車は今後手に入らなくなる。中古車を探せば別だが、新車は買えない。

 ラレー・ CLR CLUB RACEという自転車がネットの通販サイトで売られている。在庫処分ということもあってかなり安い。この自転車を買うかどうか、これが思案の中身だ。

 買う理由を探してみる。何といっても16万円ほどの自転車が半額で手に入るのは魅力だ。ラレーのロードバイクを1台持ってはいるが、部品の構成やフレームの材質が違う。性能や乗り心地も違うはずだ。

 今後は手に入れることができないとなれば、手元に置いておきたくもなる。今ある4台の自転車は、どれも10年前後は使っている。部品交換や手入れはしていても老朽化は避けられない。買い替えてもおかしくはない。

 買う理由はある。納得もできる。では買うことに決めようとすると迷いが生じる。もう少しで後期高齢者の仲間入り。今になって、新しい自転車を増やしてどうするか。今ある4台の自転車に乗るだけでも時間は限られている。愛車のメンテナンスに費用を回して、大事に長く乗れば十分ではないか。

 いずれ、自転車に乗れなくなっても、愛車の手入れをして、眺めているだけで楽しいはずだ。気になる自転車があれば、もう1台くらい増やしてもいいだろう、と思いはが繰り返す。

 では、自転車に乗れなくなっても、自転車への愛着を持ち続けられるのか。乗れなくなった自転車にも魅力を感じるつづけるだろうか。思案は右往左往する。

 迷っているうちに、いっそ安売り中の在庫が底をつけば、諦めもつく。諦めはつくが、気持ちの整理がつかないかもしれない。

乱雑に積まれたり 
並べられたりする
日々の思案

幾条にもなって
積もっては消え
消えては積もる
日々の迷い

走り出すことで
思案の渦を抜け
迷いの糸を切る

隧道のむこうへ
光る道がつづく


2026年2月14日土曜日

我が愛車ラレー、消ゆ

  昨年8月、「ラレーという自転車」と題するページをこのブログに公開した。私の愛用しているロードバイクもラレーブランドだ。クロモリフレームの落ち着いた佇まい、英国調の大人の自転車、らしいところが気に入っている。

 そのラレーの自転車が生産中止になって、今後は手に入らない。世の中から、私の愛車と同じラレーの自転車が消える、既に消えつつある、ということを最近になって知った。

 ラレーという自転車について書いたときに、日本で販売されるようになった経緯を調べた。同じ頃、ロードバイクとは別にラレーRSWという小径車を妻が乗るようにと思って入手した。

 新車のRSWが何と定価の半額で売られていた。これは買いだと思って注文した。ちょっと奇妙な感じもした。ラレーの自転車は定価売りがほとんどなのに、なぜこんなに安いのか。破格の値段だ。もしかして詐欺か、と疑った。幸い、正真正銘のRSWで新品、が届いた。

 昨年の夏から在庫整理が始まっていたというのが真相らしい。年が明けて、ラレーのカタログで確認したいことがあったのでネットで検索した、が、見つからない。これはどうしたことかと思って、製造会社の新家工業関連の記事を探すと、衝撃が走った。

「完成自転車の輸入・販売事業からの撤退に関するお知らせ」(新家工業株式会社 代表取締役社⾧ 市川圭司  2025年11月7日付):当社は、2025117日開催の取締役会において、完成自転車の輸入・販売事業から撤退することを決議いたしました:という文書が見つかった。

 もう3カ月も前に発表されていたのだ。ネット上にはラレーの製造中止を惜しむ書き込みも多く見られる。迂闊にも見落としていた。

 今は在庫処分で安売りされているラレーブランドの自転車が、いずれは貴重な存在になる気がする。RALEIGH CLR CLUB RACE という美しい自転車がネット上ではほぼ半額で売られている。これを買って手元に置いておくかどうか、密かに迷っている。

唐突にやってくる断絶か
その先へつながる予兆か

連綿と受け継がれる伝統か
新しい秩序のための区切か

終焉を待つふりをしながら

新しい時代へ
漕ぎ出している

 

2026年2月7日土曜日

自転車の走り方を見なおす

  スポーツ自転車の走り方を誰かに教えてもらったわけではない。経験のあるサイクリストが近くにいて、手ほどきを受けていれば、走り方や走りの質が違っていたことも考えられる。

 学生時代にサイクリングのサークルなどに参加していた人なら、走り方の基礎をよく知っているだろう。自転車の整備もできるにちがいない。60歳になって、先達もなしに走り始めた自分には基礎・基本がない。自己流もいいところだ。

 走り方は本や雑誌から学んだ。本を読むのは苦にならない。かなり読んだ。今なら、YouTubeにも走り方指南の動画が見つかる。

 ペダルの踏み方。平坦路の走り方やカーブの曲がり方。坂道の登り方、下り方。乗車姿勢もいろいろ試してみた。自己流でハンドルやサドルの高さ、前後の位置を調整した。整備や修理も自分流で試して、かなりできるようになった。

 昨年の暮れ、健康診断の結果で血糖値が高く、糖尿病の範疇だと医者から告げられた。運動をしているかと尋ねられ、自転車に乗っていることを話した。運動量は十分すぎるほどだと言われた。

 自転車で走る距離と時間は確かに十分だろう。だが、走り方の質はどうか。脂肪が分解するような適度の運動になっているか。

 サイクルメーターが速度や走行距離をかなり正確に表示してくれる。それを頼りに、1日に、ひと月に、1年間に、どれだけの距離を走ったか。そればかりを気にしていた。メーターにはいつも走行距離を表示させていた。

 今年になって、サイクルメーターの表示を走行時間に切り替えた。1分間にペダルを回す回数(ケイデンス)を確かめる。負荷と時間を測る。走る距離より走りの質を考える。血糖値が下がることも期待したい。

 難行苦行にならないように、無理のないところで走り方を見なおす。これも自己流、誰かに教えてもらうわけではない。効果のほどは判らない。走りの質というとかっこいいが、見方を変えれば何かが変わる、かもしれない、という程度である。


川を
左岸から見るか
右岸から見るか

川を
上流へと辿るか
下流へと奔るか

どちらかを選ぶことは
どちらかを捨てること
見方を変えることは
世界を変えること


道はその先で閉じていたり

道はその先へ開いていたりする

2026年1月31日土曜日

メンテナンスを見なおす

 自転車のメンテナンスはかなり丁寧にやっているつもりだ。チェーンやギアなどの消耗品はメーカーの推奨する走行距離を目安に交換する。タイヤも摩耗の度合いを見て新しいものに取り換える。何度も交換していると、素人なりに交換の時期が近付いたことが判るようになる。

 自動車には50年以上も乗っている。メンテナンスの時期はもっとわかるはずなのに、なおざりにしている。先日、車のエンジンを始動しようとしたが、セルモーターが回らない。少し前からエンジンのかかりが悪かった。寒い時期でもある。そろそろバッテリーの交換時期だと思ってはいたが、ついにバッテリー上がり。

 ネット通販でバッテリーを買って自分で交換した。ディーラーで交換してもらうことを考えれば半額程度で済んだ。タイヤの硬化とひび割れも気になる。8年前に交換したきりだ。自転車よりも走行距離が少ないのでそのままにしている。経年劣化は怖い。タイヤも通販で安く買って、交換してくれる修理工場を探すことにする。

 自動車の部品は自転車のものに較べて高価だ。自分で簡単に交換、というわけにもいかない。部品の価格や手間の違いで、メンテナンスにも差が出るということか。

 それだけでもない。最近は自動車のエンジンルームをのぞく機会が減った。以前は自分でエンジンオイルや点火プラグの交換をしていたこともある。オイルの汚れやタイヤの空気圧のチェックは頻繁にしていた。

 関心の対象が自動車から自転車に移ってしまっていることが、メンテナンスの差に表れている。思い入れの強さの違い、か。興味関心が薄れているからといって、メンテナンスを怠るのはよろしくない。メンテナンスにかける予算は潤沢でないが、手間暇をかけるゆとりだけは十分にある。 安全を安価に手に入れるメンテナンスを考えたい。

ロードスターNAとNBが砂浜に並ぶ
古いロードスターを
新しいロードスターに
乗り換える

ロードスター 幌の交換
古くなった幌を
新しい色の幌に
張り替える

思い入れの向きや重さが
いつのまにか移ろっていく

同じ所で同じ物を
見ているはずなのに

いつのまにか
ときの流れに
置き去られる

(※ 上3枚の写真はGeminiで画像編集)

2026年1月24日土曜日

年間1万㎞を走る

  この歳になって、1年に自転車で1万㎞走ると言うと、なかなか信じてもらえない。自動車なら兎も角、自転車。かなりの距離だと自分でも思う。

 昨年は愛用している自転車4台の走行距離の合計が9,743km 、1万㎞に257㎞足りなかった。残念、ではあるが、まぁよく走った。

 自転車に乗りはじめてから14年間の記録がある。最近AIづいているが、今回もAIに分析してもらう。

 AIは即座に表を読み取り、走行パターンの変化や自転車の特性などまで分析してくれた。結果は微に入り細を穿ったものだ。やや煩雑でもある。AI600字の簡単な文章にまとめてくれるように頼んだ。かなり無茶振りだが卒なくこなしてくれた。そのまま引用する。

 本稿は、74歳の男性サイクリストが2012年から2025年までの14年間にわたり記録してきた走行データをまとめたものである。総走行距離は109,124kmに達し、長期にわたって自転車を生活の一部として継続してきたことが数字から明確に読み取れる。

 主力となったのはアンカーとラレーの2台で、全体の約8割を占める。アンカーは最も使用期間が長く、日常の移動からロングライドまで幅広い用途を担ってきた万能車である。一方ラレーは平均速度・平均最高速度ともに最も高く、効率的な巡航性能を活かした走りを長年維持している点が特徴的だ。

 年間走行距離は2018年以降に増加し、2020年以降は毎年9,00010,000km前後で安定している。70代に入ってからも走行量を落とさず、一方で最高速度は抑えられており、安全性と持続性を重視した成熟したライディングスタイルへの移行がうかがえる。

 用途に応じて自転車を使い分けながら走り続けるこの記録は、年齢に縛られないサイクリングの一つの理想像を示している。

 最後は、「一つの理想像」と褒めてくれた。ビッグデータに照らして、残した記録を客観的に分析できるのはありがたい。実際に走るのは自分なので、何でもAI任せにはできないが、今年も欲張らずに「理想像」の実現を目指す。

注連縄の
藁の匂いが
新しい年 


干支の馬と
走りだす
新しい年

初詣というのではなく
決められた場所まで
走りつづけていく
そのことが祈り