オートバイのガソリンタンクの上にタンクバッグを取り付ける。レインウエアや簡単な整備工具を入れる。その日に走るコースの地図をバッグの上に挟み込む。携帯電話はまだ世の中に存在していない。
ナビゲーションやインターコムのない時代、ツーリングに出かけるにはそれなりの準備が必要だった。仲間とオートバイでツーリングに出かける。走り始めたら、一緒に走っていても孤絶した世界だ。仲間とはぐれたら連絡の取りようがない。
走行中は仲間がいても話せない。信号待ちで止まったわずかな隙にヘルメットのシールドを上げて、大声で喋る。「そろそろ休憩にするか?」、「もう30分ほど走ったら昼飯にするわ!」。
前のライダーがハンドルから手を離して振っていたり、後ろのライダーがステップから足を離して膝を伸ばしたりし始めたら、そろそろ休憩が必要かな、と察知する。
自転車に乗るようになって、オートバイを手放した。今はツーリングといえば専ら自転車。今なら自転車のツーリングにもナビは使える。ヘルメットにマイクを仕込んで、仲間と話すこともできるらしい、が、使う気は毛頭ない。
道に迷ってもたかが自転車で走る距離。行き止まりになれば、自転車を担いで歩くこともできる。走りながら少し大声を出せば会話もできる。
走り方の様子でお互いのコンディションを知る。前を行くライダーの頭が揺れ出したらちょっと休憩か。後のライダーがコーナの立ち上がりで遅れるようなら食料の補給タイムか。今様の便利な機器はなくても、仲間うちの気遣いがあれば何とかなる。
昔むかし、友だちと二人でオートバイで出かけた極寒の冬の1日を思い出す。寒さに耐えられなくて飛び込んだ喫茶店で古新聞をもらった。腹や膝に新聞紙を巻き付けて冷えを凌いだ。これが意外に暖かい。有り合わせのものと工夫でその場を凌ぐ。今も昔もツーリングの面白さはそんなところにある。
![]() |
タンクバッグの上に その日のコースを 拡げて出かける |
![]() |
タンクバッグの中に その日のコースを 詰め込んで帰る |
![]() |
よくぞ、まあ こんなに遠くの街まで 走って来られたものだ |
![]() |
果敢さや無謀が走る車線と 心細さや後悔が走る車線を 何度も乗り換えながら走る |





























.jpg)