モペットという乗り物がネット市場に出回っている。自転車の格好をしているが、ペダルを踏まなくても走る。私が小さい頃にも同じような乗り物があった。自転車の車体に小さなエンジンをつけて自走する。ビスモーターとかバタバタと呼んでいた。
電動アシスト付きの自転車もよく見かける。最近では、e-Bikeというスポーツ自転車にモーターをとりつけてアシストするものもある。ロードバイクやマウンテンバイクとほとんど見分けがつかない。
モペットとe-Bikeの違いは、モペットがペダルを踏まなくてもアクセルを開けば走るところにある。スピードもかなり出るらしい。e-Bikeはペダルを踏まないと走らない。モペットは原動機付き自転車に分類されるので運転免許証が必要になる。
方向指示器やバックミラーなどの装着、ナンバーの登録や自賠責保険の加入、ヘルメットの着用も義務付けられる。制限速度は時速30㎞である。そうした条件を満たさずに自転車と同じ扱いでモペットに乗る人が多いらしい。歩道へ侵入して事故も多発しているようだ。
普通の自転車やe-Bikeは軽車輛に分類されて制限速度は自動車と同じである。スポーツ自転車なら速度が時速50mを越えることもあるが、それでも道交法の違反にはならない。線引きの仕方がよく判らない。
気をつけてよく見ないと、自転車なのかe-Bikeなのか、はたまたモペットなのか判らない。モペットには乗ったことがないが、普通の自転車とe-Bikeを乗り比べてみると、その境界は曖昧である。e-Bikeは自分の力で走っているのかアシストを受けているのか、境目がよく判らない。自分の脚力が強くなったように錯覚する。
自転車にかぎらず、異界に迷い込むことがある。AIが作ったものなのか人が考えたものなのか、境界がはっきりしない時代だ。自分の年齢だって、もう十分に高齢なのかまだまだ若いのか判らないときがある。境目は曖昧なままの方が面白いこともあるが、はっきりさせておかないと立ち位置が危うくなることもありそうだ。
雪の日の朝は 境目をすべて消して はじまる |
轍だけが 前に進んだことを 教えてくれている |
境目を取り払って 子どものころの私と 二人で遊んでいる |
つけてきたはずの区切りが ホワイトアウトしていく |
雪の日の境界は 近づいたり 遠のいたりして 曖昧に拡散する |