冬をむかえる

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'25.1.22 山を見て走る

2024年1月20日土曜日

木枯らし紋次郎考

 「あっしにぁ関りのねぇこって…」。1970年代に一世を風靡したテレビドラマ、『木枯らし紋次郎』で紋次郎を演じる中村敦夫のセリフである。

 紋次郎の立ち姿は、当時これも流行りだったマカロニウエスタンに登場する無宿のガンマンに通じる。破れた妻折笠に汚れた縞の道中合羽。テンガロンハットにポンチョを羽織ったクリント・イーストウッドだ。

 上條恒彦の歌った主題歌『誰かが風の中で』は、マカロニウエスタンの主題曲を多作したエンニオ・モリコーネ調だ。

 監督の市川崑は、同じ時期に『股旅』という映画を撮っている。主演は尾藤イサオと萩原健一。脚本は谷川俊太郎という異色の組み合わせで、かなり変わった股旅物に仕上がっている。

 市川崑監督の選んだドラマや映画の舞台が懐かしく蘇える。江戸時代の東海道や中山道の面影を残す昭和の風景。ロケーションハンティングには相当の時間がかかったはずだ。ススキの原っぱの向こうに遠い山並み、小さな水田の間を縫うように続く細い道や小川。

 自転車で走っていると、同じようなにおいのする道に行き合うことがある。木枯らしをついてぬける辺鄙な道は、『木枯らし紋次郎』や『股旅』の舞台だ。

 紋次郎は「あっしにぁ関りのねえこって…」と人とのつながりを拒絶しながらも、ついには事件に巻き込まれていく。上州新田郡三日月村の貧しい農家に生まれた紋次郎は、地縁血縁に絡められた弱い人たちを見離しにすることができない。

 自転車で先を急ぐ道すがら、とりあえずは関りがないと思って通り過ぎた場所が、つい気にかかって引き返す。場所の由緒や廃屋のたたずまいに魅せられて写真におさめる。後ろ髪の引かれ方が、なんとなく紋次郎的ではないかと思ってしまう。 

山に向かって走ったり

山を背おって走っていると

太古からかわらない
風が吹いている

かかわらない
こだわらない
ふりをしながら

かかわったり
こだわったり
している




2 件のコメント:

  1.  1970年代前半といえば、自分は東京で気ままに学生生活を送っていた時期です。

     一人暮らしで気楽な身分。毎日時間はたっぷりあるので、好きなことをして過ごしていました。一応テレビもあったので、『木枯らし紋次郎』も観ていましたが、彼の決めゼリフと上条恒彦が唄う主題歌はしっかり記憶に残っていますが、ストーリーはぼんやりとしか浮かんできません。
    脚本が谷川俊太郎とは、目を疑いました。たまたま最近、彼の詩集を3冊買って読み始めたところで、ドラマの脚本まで手がけていたとはすごい才能ですね。現在94歳で、今も執筆中とは恐れ入ります。

     ちょうど私がその頃ハマっていたテレビドラマは、『傷だらけの天使』です。萩原健一と水谷豊のアウトローでハチャメチャな展開、スピーディーアクション。あれだけは毎週欠かさずに観ていました。
    今思えば、深作欣二さんも監督としてこのドラマに数作関わっていますね。
    『仁義なき戦い』で手持ちカメラを駆使して躍動感を表現した手法が、このドラマでも光っていました。

     コメントがあらぬ方向へいってしまいました。さて今シーズン初めての雪は、大雪となりましたね。
    でもMARIOさんにとっては、冬の雪もプラス思考で乗り切っていきそうですね。ご活躍を期待しております。

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  2.  『木枯らし紋次郎』は笹沢左保の小説が原作で、谷川俊太郎の脚本は同じ時期の劇場映画『股旅』の方ですが、それにしても、べーえんべーさんが最近谷川俊太郎の詩集を買われたとは、何というシンクロニシティでしょう。

     私は、最近詩の本を買ったことがありません。お正月に孫娘のために詩画集を一冊買ったきりです。詩集を買って読んでみる。心のお洒落も忘れないように、私も見習いたいと思います。

     今年の冬は暖かくて、雪には縁がないかと思っていましたが、昨日、私の家のあたりも30㎝ほどの積雪がありました。早速、雪の中へマウンテンバイクで漕ぎ出してみました。いくつになっても、いつもと違う外の様子には気持ちがときめきます。

     とはいえ、はしゃぎすぎて怪我をしてもいけないので、飛び回ってばかりいないで、レンタルビデオ屋さんで古いDVDの『木枯らし紋次郎』や『傷だらけの天使』を捜して、雪に閉じ込められながら、じっくり見なおすのもいいかもしれませんね。『仁義なき戦い』の菅原文太にも会いたいです。

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