冬をむかえる

冬をむかえる
'20.12.22 愛知県海部郡飛島村梅之郷 日光川排水機場付近にて撮影

2020年10月31日土曜日

朝型、夜型、あるいは昼型

 類は友を呼ぶ。よく似た者同士は自然に集まるということであるが、さてその分類。人をそう簡単に類別できるものか。千差万別、十人十色。そう簡単に類型化されてたまるかという思いもある。とはいえ、退職してからは同年輩の趣味や嗜好が似た者同士が集まって話したり、一緒に自転車に乗ったりする機会が多い。やはり似たような者が自然に集まるということかもしれない。

 周りの人の話を聞いていると、みなさん早寝早起きの人が多い。夜は9時、10時に就寝、朝は4時、5時に起きる。決まってその間にトイレに行ったりして何度も起きるという人がほとんどである。朝は暗いうちから起き出して、明るくなるのと同時に畑の作物を見に行く。7時ころにはひと仕事終えて、朝食も済ませている。朝型の人が多いので、メールなども私の起きる時間には何通も届いているということがある。

 ひるがえって、自分はといえば、夜型の典型。朝にはめっぽう弱い。寝ていてもいいとなれば何時まででも寝ていられる。夜はどんなに遅くても平気だ。就寝時刻は日付が変わって午前1時ころである。本を読んだり音楽を聴いたり、時には映画を観たりしたいので、世間が静まるのを待たないと集中できない。夜型が困るのは、朝早くから集合が求められる行事などに参加するときである。起きられなかったらどうしようと思うとなかなか眠れない。挙句の果てに、大事なイベントには寝不足で参加するということになる。

 仲間と自転車で走るにも差し障りがある。今年の夏のように猛烈に暑い日がつづくと、日中には自転車に乗れない。早朝に乗れば快適で、熱中症の心配も少ない。明るくなるのと同時に走り始めれば、殺人的な気温にまで上昇する前にかなりの時間が確保できる。週に1回のペースで一緒に走っている4人の仲間のうちで朝に弱いのは私だけ。私さえ早く起きれば、日の出とともに走り始められるがそれは無理な注文。気のいい仲間たちは私に早起きを強いることはないが、早朝に走れば気分もいいのはよく判る。判るけれども、今更生活のパターンを変えるのは難しい。畢竟、今年の夏は自転車仲間全員が遅い昼型。午後の気温が下がるころから短いコースを走るのがお決まりだった。

 夜型のたった一つの例外として、元旦だけは早起きをする。ご来光を迎えに、水平線の見える場所まで自転車で行くことにしている。午前5時には起き出して、海の見える場所まで15㎞ほど走る。毎年恒例の一人だけの走り初め。早朝の清新な空気を存分に味わう。残りの364日は夜型を決め込んで、自分なりの規則正しい生活を送りたい。自転車仲間には申し訳ないが、一緒に走る時間を合わせてもらうしかなさそうである。 

1年に一度だけ早起きをした朝
未だ明けやらぬ空
今年も今日もここではじまる

しののめの朱く染まる空
太陽の昇る予感
日の出の瞬間の写真は年賀状に使いたい…
朝型礼賛

遠くの街まで出かけてきた
もっと早く起きてもっと早く出かけたら
街中めぐりをゆっくりできるのに…
朝型推奨

かなり高くまで登って来た
朝早くに登り始めていたら
もっと澄んだ景色に出会えたかも…
朝型憧憬

中山道埀井宿
もう少し早起きしていたら
次の宿場まで行けただろうか
朝型必須

わかっていても、朝は起きられない



2020年10月24日土曜日

スマートウォッチのこと

  自転車の用品は通販で買うことが多い。ほとんどはアマゾンで購入する。アマゾンの注文履歴は2001年の9月に4冊の本を買ったところから残っている。書籍だけだった買い物はオーディオ製品、車や自転車の部品といったものにまで広がった。これまでに購入した品物の中で、間違って注文したり、不良品だったりして返品したのはわずか4回しかないが、その中の2回がスマートウォッチ。スマートウォッチについては、失敗譚が多いという証左である。

 そもそもスマートウォッチというのは、CPUが内蔵された腕時計のようなデザインの電子機器。画面をタッチして操作することができるブレスレット型の洒落たデザインのものもあれば、アナログの文字盤時計と見分けのつかないものもある。代表的なのはアップル・ウォッチ。スマホと連携させて、手首でスマホを操れると考えればいい。スマホは鞄の中に入れていても、電話やメールの着信を音と振動で教えてくれる。電子マネーで支払いもできる。心拍数や歩数を計測、記録する健康管理機能までついている。自転車に乗るときに着用していれば、走行したルートや活動量も記録してくれる。

 これは面白いと思って飛びついたのが失敗。アマゾンの注文履歴によれば、201710月、「GanRiver (スマートウォッチ)活動量計・ Bluetooth搭載・腕時計型・心拍計・歩数計・Line SMS Facebook Twitter通知・iphone&Android対応 その他機能満載、3,229円」を買っている。ブレスレット型の瀟洒なデザインのスマートウォッチである。Bluetoothでパソコンに同期すれば使えると勝手に思い込んだのが大間違い。当時はスマホをもっていなかった。iphoneかAndroidのアプリがなければ起動できない。文字盤が点灯しないのだから、腕時計としてすら使えない。すぐに返品することになった。

次の失敗は今年の4月。スマホを買ったので、スマートウォッチが使えると思い、またもや3,000円程の安物を買った。スマホでアプリをダウンロードして同期させると見事に動き出した。今度は使える。腕にはめているだけで血圧まで測定・記録してくれるという優れもののはずだった。ところが、缶コーヒーの空き缶にはめておいても血圧が出るという、なんともいい加減な代物。3,000円で血圧が判れるわけがない。高価なアップルウォッチにも血圧測定の機能はない。失敗を後悔しつつ返品した。

それでも懲りずに、3個目のスマートウォッチを買った。今回は機能が限定されていて、しかも多少高額。自転車に乗るときに腕につけていれば、スマホのGPSと同期して走った距離やコースを記録してくれる。心拍数や活動量も測定できる。正確さはともかく、デザインも気に入っているので、腕時計としての用途には充分に耐える。自転車に乗っているときの身体の調子くらいは自分で管理したいが、スマートウォッチの測定値や記録もおもちゃ+αくらいの効力はありそうだ。自然の中で自転車を楽しむとはいうものの、今風の電子機器を失敗しながら試してみるのも興味深いことではある。


ひまわり…

コスモス…

曼殊沙華…

   秋が深まってきた
   季節の移ろいも時の流れも
 自分が自分の肌で感じる

愛用のスマートウォッチと同期させたスマートフォン
スマホに走行ルートや距離、高度、心拍数など記録される

電子機器の力を借りなくても
五感が大概のことは感じとるが
これはこれで便利なときもある


 










2020年10月17日土曜日

自転車のステイタス

 ステイタスとは、人の社会的な地位や位置づけをいうが、自転車にステイタスがあるとすれば、それは決して高いとはいえない。この上なく便利なのに、ぞんざいに扱われることが多い。自分が中学生のときの通学用自転車が最後はどうなったのか記憶にない。嫁入り道具というのは懐かしいことばになってしまったが、妻の嫁入り道具にもお決まりのように自転車があった。それもどう処分してしまったものか、妻も私も覚えていない。

自転車のステイタスが高かった時代もあるにはあった。志賀直哉の『自転車』という小編には、高価なアメリカ製の自転車を買い替える件(くだり)がある。乗っている自転車を下取りに出して、祖母に借りたお金で新調する。当時の自転車は庶民には手が出ない高価なもので、今なら金持ちの娘や息子が外国車に乗りまわしているようなものだろう。

 志賀と同じ時代を生きた私の祖父は男ばかりの四人兄弟だった。祖父は鍛冶屋をしていた。大叔父の一人は、自転車でひと儲けすることを思い立ったらしい。大正時代から昭和の初めころのことで、自転車は値段もステイタスも高かったことだろう。一度乗ってみてくれと言って、いろいろな人に自転車をあずけた。その代金の回収ができず、商いは頓挫した。随分乱暴な商売である。祖父の弟三人が、それぞれ事業に手を出しては失敗した。弟たちの借金を背負った祖父は、今でいう破産宣告をした。田地田畑はすっかり人手に渡ってしまった。代々田舎に住んでいるのに、我が家には田も畑もないはそういうわけである。一家のステイタスは地に墜ちた。私には商いの下手な自転車屋のDNAがある。投機に走る傾向も無きにしもあらず。自己破産しなかっただけ良しとしたい。

 「いつかはクラウン」。トヨタ・クラウンはこんなキャッチフレーズで売られている時代があった。クラウンが多くの人にステイタスシンボルとして認められていた。いつかはクラウンに乗りたいと思って、みんな頑張った。私はステイタスにこだわりはないし、歴代のクラウンにもそれほど魅力を感じない。クラウンを買おうにもその余裕もない。価値感の多様化で共通のシンボルや記号を必要としない時代になってきたかもしれない。高価なものを除けば、相変わらず自転車のステイタスは低いままだ。高価な車や自転車には乗れないが、私は私の生活のシンボルとして、私の気に入った自転車を大切にしたい。

駅の駐輪場に無造作に停められている自転車たち
雨の日も風の日も駅までの道のりを通(かよ)ってくる

綺麗な色なのだけれど…
よく見ると蜘蛛の巣に乗っ取られていたり…

変速機やギアは錆で真っ赤
ワイヤーだって今にも切れそうで…
便利な割には報われていない

ステイタスシンボルにはならなし
シンボルにしておくだけではもったいない
私は私の自転車を楽しみたい

自分の脚さえ動けば
どんなところへも付き合ってくれる

大切な相棒なのだから
大切に長く付き合いたい

番外:自転車ではないがこれも長年の相棒
5年乗ってある車を中古で買って14年
昨日、ピキピキにワックスをかけた
秋空をピキピキの車に映してみた







2020年10月10日土曜日

父の電動自転車

 電動アシスト付き自転車は不思議な乗り物である。坂道にさしかかって、脚に力を入れると、ペダルが軽くなる。ペダルが重くなると軽くなるというのは論理に反する。正確には、大きなトルクが必要なところで、モーターがアシストしてくれるのでペダルを強く踏む必要がないということだろう。漕ぎ出しの大きな力がいるところでも、強くペダルを踏み込むとモーターの力が助けてくれるので、急発進するように走り出す。初めて乗るときには、ペダルの踏み方に注意が必要である。音もなく走り出すハイブリッドカーの乗車感覚に似ている。

 ママチャリと呼んで気軽に使う自転車が実用的な中型のセダンやワンボックスカーだとすると、クロスバイクはスポーティーな小型車、ロードバイクは本格的なスポーツカー。マウンテンバイクはさしずめ重量級のSUVか四輪駆動のオフローダーだといえる。電動自転車は、大型の高級サルーン。ホイールベースが長いので、小回りは苦手だが、直進安定性は高い。重量が大きくどっしりとして乗り心地は快適である。

 父は、長年車を運転していたが、85歳になったときに運転免許証を返納した。自分で運転する機会は減っていて、近くへ出かける時には自転車を愛用していた。身内が見ていると、自転車も危ないようには思えたが、他の人を巻き添えにしたり、傷つけたりするリスクは低い。4輪の電動シニアカーに乗り換えるのもいいかもしれないと思った。妹と相談して、もうしばらくは自転車に乗りつづけられるようにということで電動自転車を買うことにした。シニアカーでは本人のプライドが許さないだろうというのが、我々兄妹の意見の一致するところだった。

 電動自転車は電池が必要である。満充電にすると3040㎞くらいは走る。父は、80代の後半になっていても、長距離を走ると電池の消耗が心配だといって、予備の電池をもう1本手に入れ、自転車の荷台にくくりつけていた。1日に30㎞くらいは走っていたようである。機械いじりの好きな父は、電動自転車にもサイクルコンピュータをつけ、ちょっとした改造もしていたようである。ハンドルのグリップに手製の革カバーなどつけていたのは微笑ましい。子どもに言い聞かせるように、あまり遠くへ行くなとも言えないので静観していたが、心配なことではあった。

 その父も、2年前に介護施設に入所し、自転車には乗らなくなってしまった。同じころ、癌にむしばまれていた妹は、歩行が少しずつ怪しくなった。それでも、自転車くらいは乗りたいというので、父の電動自転車に乗ることを勧めた。きれいに磨き上げ整備をして届けたが、ほとんど乗る機会もなく逝ってしまった。父の電動自転車は、今、乗り手をなくして所在無さげにしている。 


父の電動アシスト自転車
重量はあるが走り出してしまえば快適

ハンドルに手製の革のグリップカバーをつけたり
バックミラーを取り付けたりしているのが面白い

電池の充電器
一度の充電で30㎞~40㎞走行可能

アシスト用のモーターの部分
これだけで魔法のような力が得られる
整備して妹が乗れるようにしたが…

e-バイクという新しいジャンルの電動アシスト自転車
ヤマハe-バイク YPJ-XC
満充電で100㎞走るらしい
価格は驚くなかれ 385,00円
筋力をつけるより財力!?

ビアンキのe-バイク
Bianchi Aria E-Road
電池はフレームに組み込まれている
アシスト量などが日本の規格に適合しないらしい
脚を鍛えるより貯金に励んだ方が速く走れる???


2020年10月3日土曜日

人生、色、色

 人生いろいろ』という歌がある。昭和世代でないとなじみがないかもしれない。「人生いろいろ 男もいろいろ 女だっていろいろ咲き乱れるの」と島倉千代子が歌っていたのが懐かしい。高齢になって新しいことに挑戦している人は女性に多いように思う。まさに咲き乱れている。百花繚乱。男は、秘密基地だの隠れ家だのといって、ちまちまと趣味を楽しんでいるような気がしてならない。

 人生で出会う「色」には数々ある。自転車を選ぶときにも色は大事な要素である。まずは、ロードバイクかクロスバイクか、はたまたマウンテンバイクにするか。選択肢は多い。若い頃から乗っている人たちは、自転車との出会いや始める動機がちがうかもしれない。退職して、さて何か始めようというときに自転車に出会い、自転車選びをする人は誰もが同じような選び方をするのではないかと思う。

 自転車の使い道が決まれば、性能やサイズを検討する。性能はどのメーカーの自転車を選んでも値段相応。装備される部品もさして変わらない。決め手になるのはフレームの塗色だったりする。好みの色は重要である。色はデザインを左右することにもなる。スタイルや性能が気に入っても、好みの色が見つからなければ二の足を踏む。

 自転車の色といえば、印象的なのはビアンキの青。ビアンキのチェレステ(celeste)という青は美しい。年式によってその青が微妙に変化する。自転車に少し興味がある人ならビアンキの青は簡単に見分けられるだろう。チェレステは青空。イタリアの青空は日本の青空とは違うのか、イタリア人には青空の色が違って見えるのか、何ともきれいな青だ。ビアンキにはチェレステ・クラシコというビンテージカラーもある。自転車のフレームは塗装の面積が小さい。塗色に凝って、高価な塗料を使っても高々しれたものだろう。フレームの色は個性を競う最大の見せ処だ。色だけで自転車を選ぶなら、断然ビアンキの青にしたい。

 『底本・和の色辞典』で、ビアンキの青に近い色を調べてみる。一番近い色は砧青磁(きぬたせいじ)か水縹(みなはだ)と呼ばれる色か。いずれも平安時代から使われている色である。チェレステ・クラシコは瓶覗(かめのぞき)という色に近い。どちらも和の色にある空色とはニュアンスが異なる。

 先週まで熱戦の繰り広げられた大相撲九月場所は正代関の初優勝で千秋楽となった。まずはめでたい。その正代関の締込みの色は青薫(せいたい)と呼ばれるものか。楽日の対戦相手、翔猿の締込みは青味の薄い露草色か。双方ともビアンキの青に劣らぬきれいな青である。自転車の色には西洋の色の名前が使われているが、和の色を当てはめてみると面白い。面白ついでに、自分の人生には何色を当てはめるか考えてみるが、68年も生きていてまだ決めかねている。

花の色は桜色、薄桜、乙女色
萌え始める草木は若草色、浅緑、鮮緑(せんりょく)

            
            散る花は退紅(あらそめ)
            咲き始める菜の花は文字通りの黄色、承和色(そがいろ)


夏の海は、織色(おりいろ)、濃浅葱(こいあさぎ)
空は蒼(あお)、碧(あお)、天色(あまいろ)
愛車は、漆黒、濡羽色(ぬればいろ)
カタログの色名はブラックエナメル

曼殊沙華の赤は、真朱(しんしゅ)、銀朱、緋色
実る稲穂は刈安色(かりやすいろ)、鬱金(うこん)
空はチェレステ、天青(てんせい)、白群(びゃくぐん)

        
イチョウの黄は、花葉色(はなばいろ)、黄蘗(おうばく)
黄浅緑(きのあさみどり)からの見事な変身

蕎麦の花の白、胡粉色(ごふんいろ)、生成り色(きなりいろ)
愛車の色は、胆礬色(たんばいろ)、天藍(てんらん)
カタログではジュエリーブルー

雪の純白、真白(ましろ)、白磁(はくじ)、銀白色
愛車は純黒(じゅんこく)、濃墨(こいずみ)、黒羽色(くろばいろ)
カタログの色名はマットブラック