冬をむかえる

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'25.1.22 山を見て走る

2020年10月10日土曜日

父の電動自転車

 電動アシスト付き自転車は不思議な乗り物である。坂道にさしかかって、脚に力を入れると、ペダルが軽くなる。ペダルが重くなると軽くなるというのは論理に反する。正確には、大きなトルクが必要なところで、モーターがアシストしてくれるのでペダルを強く踏む必要がないということだろう。漕ぎ出しの大きな力がいるところでも、強くペダルを踏み込むとモーターの力が助けてくれるので、急発進するように走り出す。初めて乗るときには、ペダルの踏み方に注意が必要である。音もなく走り出すハイブリッドカーの乗車感覚に似ている。

 ママチャリと呼んで気軽に使う自転車が実用的な中型のセダンやワンボックスカーだとすると、クロスバイクはスポーティーな小型車、ロードバイクは本格的なスポーツカー。マウンテンバイクはさしずめ重量級のSUVか四輪駆動のオフローダーだといえる。電動自転車は、大型の高級サルーン。ホイールベースが長いので、小回りは苦手だが、直進安定性は高い。重量が大きくどっしりとして乗り心地は快適である。

 父は、長年車を運転していたが、85歳になったときに運転免許証を返納した。自分で運転する機会は減っていて、近くへ出かける時には自転車を愛用していた。身内が見ていると、自転車も危ないようには思えたが、他の人を巻き添えにしたり、傷つけたりするリスクは低い。4輪の電動シニアカーに乗り換えるのもいいかもしれないと思った。妹と相談して、もうしばらくは自転車に乗りつづけられるようにということで電動自転車を買うことにした。シニアカーでは本人のプライドが許さないだろうというのが、我々兄妹の意見の一致するところだった。

 電動自転車は電池が必要である。満充電にすると3040㎞くらいは走る。父は、80代の後半になっていても、長距離を走ると電池の消耗が心配だといって、予備の電池をもう1本手に入れ、自転車の荷台にくくりつけていた。1日に30㎞くらいは走っていたようである。機械いじりの好きな父は、電動自転車にもサイクルコンピュータをつけ、ちょっとした改造もしていたようである。ハンドルのグリップに手製の革カバーなどつけていたのは微笑ましい。子どもに言い聞かせるように、あまり遠くへ行くなとも言えないので静観していたが、心配なことではあった。

 その父も、2年前に介護施設に入所し、自転車には乗らなくなってしまった。同じころ、癌にむしばまれていた妹は、歩行が少しずつ怪しくなった。それでも、自転車くらいは乗りたいというので、父の電動自転車に乗ることを勧めた。きれいに磨き上げ整備をして届けたが、ほとんど乗る機会もなく逝ってしまった。父の電動自転車は、今、乗り手をなくして所在無さげにしている。 


父の電動アシスト自転車
重量はあるが走り出してしまえば快適

ハンドルに手製の革のグリップカバーをつけたり
バックミラーを取り付けたりしているのが面白い

電池の充電器
一度の充電で30㎞~40㎞走行可能

アシスト用のモーターの部分
これだけで魔法のような力が得られる
整備して妹が乗れるようにしたが…

e-バイクという新しいジャンルの電動アシスト自転車
ヤマハe-バイク YPJ-XC
満充電で100㎞走るらしい
価格は驚くなかれ 385,00円
筋力をつけるより財力!?

ビアンキのe-バイク
Bianchi Aria E-Road
電池はフレームに組み込まれている
アシスト量などが日本の規格に適合しないらしい
脚を鍛えるより貯金に励んだ方が速く走れる???


2 件のコメント:

  1. 今回は電動自転車を中心にした文章の流れのなかで、お父さんへの尊敬や愛情、先に逝かれた妹さんへの無念さなど、いろいろな思いが伝わってきて、しんみりとした気持ちになってしまい、コメントができませんでした。
     私は身の回りの物をすぐに処分して、あとでしまったと思うことがよくあります。
    先日も純正アルミタイヤを無料回収に出す寸前に、もう一度考えよと諭されました。
    熟考を重ねず、その時の気分で行動してしまうのは、65歳を過ぎてやることではないですね。 『三つ子の魂百まで』 我ながらなさけない。
     前回のブログでビアンキの青が紹介されていたので、ネットでいろいろ調べました。
     あの色は独特ですね。もし気に入ったら買おうかなとも思いましたが、私には合いそうもないのでやめます。ツアーオブジャパンなどのレーサー向きかな。

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  2.  私は反対に何でも持ち込んで処分できないので、潔く捨てることも大事だと思っています。それに、気分次第で即行動できるというのも長所のように思います。これから先、できることは限られていると思うので、気分が向けば何でもやってみたいです。
     ビアンキ1台どうですか? 高い買い物は熟考することも必要ですけど…。初めは合わなさそうなものでも、大事に使っているとだんだん似合ってきて、ついには手放せなくなるということも案外あります。馬(と自転車)には乗ってみよ、人には添うてみよ、ですかね。

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