2012年の春、「じぃちゃんは退職金をもらったので、フェラーリを買うぞ」、と孫に宣言した。コンピュータを開き、孫と一緒に売りに出ているフェラーリを探した。R/C 1/20 フェラーリ FXX、 2,019円。太っ腹で、姪の息子にも1台買った。R/C 1/32エンツォ・フェラーリ、1,173円。ラジコンのフェラーリ2台、総額3,192円。アマゾンの購入履歴に残っている。実車なら中古でも2台で3千万円を下るまい。
おもちゃのフェラーリを探していて、自転車にもフェラーリ製があるのを見つけた。コルナゴ、ビアンキといったイタリアの高級自転車メーカーとフェラーリがコラボして作った100万円を超えるものから、3万円で買える中華バイクまである。スポーツ自転車に興味がなかったので、値段による違いはよく判らない。自転車とはこんなに美しいものだったかと、改めて気づくきっかけにはなった。
その夏、クロスバイクに乗らせてもらう機会があって、スポーツバイクの面白さが見えた気がした。自転車に関する本や雑誌を買ってみた。最初の一冊は『街乗り&通勤バイクカタログ 2012』(枻出版,2012)。次に『自転車と旅 週末の自転車の楽しみ方』(実業之日本社,2011,Vol.5)。この2冊とネットの記事の乱読で、自分は近々スポーツバイクを買うだろうなという予感がした。
秋口にはネット通販でクロスバイクを買った。通販店が『要点早わかり ロードバイクメンテナンス』(枻出版,2008)という本をおまけに付けてくれた。これがよくできた手引書で、今も自転車いじりには欠かせない。自転車の整備をしながら汚れた手でページを開くので、この本はオイルや泥で真っ黒になっている。
自転車を手に入れてからは、自転車関連本が書架に並ぶようになった。
整備や構造に関する本では、・『ロードバイクの科学』(スキージャーナル,2008) ・『クロスバイクがいちばんわかる本』(スタジオタッククリエイティブ,2011) ・『自転車組立、検査及び整備マニュアル』(日本車両検査協会,2020) といった具合だ。
乗り方や効能、自転車旅に関する本を推薦するなら、・丹羽隆志『大人のための自転車入門』(日本経済新聞社,2005) ・米津一成『自転車で遠くへ行きたい』(河出文庫,2012) ・疋田智『だって、自転車しかないじゃない』(朝日新聞出版,2013) ・石田ゆうすけ『行かずに死ねるか 世界9万5千㎞自転車ひとり旅』(幻冬舎,2009)といったところか。
電子本なども合わせればかなりの冊数になるが、中には読まなければよかったと思う本もある。自転車に乗れば簡単にダイエットができるといってみたり、無用な高級自転車を薦めたり、そんな本は眉唾物だ。本は選んで、乗ってから読み、読んでから乗れば、自転車の面白さが広がる。先達がいない自分には、自転車に関する書籍が何よりの道しるべなのだ。
雑誌やカタログは保存したい物だけにして 人にあげたり処分したりしてもまだ貯まる |
石田ゆうすけ『行かずに死ねるか…』 これは自転車に乗らない人にもきっと面白い |
秋、好天、曼殊沙華妖艶 本を読んでいる暇はない |
秋、紺碧、曼殊沙華炎上 本は机上に開けたままで |
秋、明澄、曼殊沙華昇華 本は書架にしまいこんで |
空と華は溶けあい 青と朱が染めあう 秋色の光のなかで いなごがとまどう |