少し前にデジャヴについてブログに書いた。池から現れた巨大な乙姫さまの写真を添えた。この写真のことで、ブログを読んでくれた知人からメールがあった。どこで撮影したものかという問い合わせだった。
地図に撮影場所を書き込んで返信した。岐阜県安八郡輪之内町海松新田の「乙姫公園」。京都の伏見稲荷、愛知の豊川稲荷と並び、日本の三大稲荷といわれ「おちょぼさん」として知られるお千代保稲荷の近くにある。
昔、魚獲りが達者な若者が、寄りつかないように言われていた川へ投網をした。すると不思議な力で川の中に引き込まれ、そこで、美しい女性に「ここへ来てはいけない」と咎められたという輪之内町に伝わる「大榑川の竜宮」伝説をもとに作られた公園らしい。
写真の撮影場所を知りたいというメールにはその理由が書かれていた。
「高校時代、悪友と大晦日の夜、年越し詣りにおちょぼさんに行こう、となり、バイクで二人乗り、厳冬のなか揖斐川を北上。二人ともおちょぼさんの場所をしっかり把握できていない。遠くに車の明かりが見え始めた。そちらを目指してバイクはフラフラ走る。迷いながらすったもんだしていると、突然暗闇のなか池が現れる。通り抜けようとして浮かんだシルエットは大きな像。ギャーっ、とふたりは声も出せずにアクセルをふかす。そのあと、おそらくおちょぼさんに参らずに帰路のついた記憶。あれから50年。おちょぼさんに行くたびに、あの池の像はどこにあるのか、はたまたデジャヴかと気に留めて探したりしていました」
年越しに見た得体の知れない池の中の巨像が脳裏に焼き付いて、実際に見たものなのか幻想なのか、長い間メールの主を悩ませていたものらしい。偶然見たブログの写真がその時の像と重なったというわけだ。後日、追伸が届いた。自転車で乙姫公園を訪れて、50年も前に見た深夜の不思議な光景を、確認できたとのことであった。長年の謎がやっと解けたことに感動しきりという内容だった。
自転車に乗っていると珍しい光景を目にし、いろいろな人に巡り合う。縁は異なもの味なものというのは男女の縁ばかりではなさそうだ。自転車のことをブログにしていると、ここでも思わぬ発見があったり、出会いがあったり、これも何かのご縁に違いない。
先週は、膝に痛みがあったので、平坦な道をプラプラと走った。四日市市寺方町というところで、お堂の屋根が目に留まった。高角山大日寺。せまい境内には、しあわせ菩薩さんと幸福地蔵さんが並んで安置されている。門前には身代わり如来さんも鎮座ましまして、いかにも幸せになれそうな空間だ。本尊の一丈六尺の大日如来坐像は拝めなかったが、お寺を辞すると心なしか膝の痛みが和らいでいた。真夜中の乙姫さまとの強烈な出会いほどではないが、これもご縁。
ここはどこかと尋ねられた 昼間に行っても不思議な感じのする場所だ |
50年ぶりに再会したと写真が送られてきた 厳寒の深夜、突然乙姫さまが現れたら 肝をつぶすに違いないない 「ここへ来てはいけない」 |
お千代保稲荷の鳥居が ヘッドライトに浮かび上がるはずだった |
ふとしたご縁で しあわせ菩薩さんと 幸福地蔵さんに出会う |
身代り菩薩さんとも お会いできた |
ご縁を運べるように 自転車に荷台を取り付た |