冬をむかえる

冬をむかえる
'20.12.22 愛知県海部郡飛島村梅之郷 日光川排水機場付近にて撮影

2022年9月24日土曜日

10年経ちました

  2012914日、仕事から帰るとネット通販で注文した自転車が家に届いていた。当時の注文票や宅配便の送り状が残っている。ブリヂストン・アンカーUS5 46/Mジュエルブルー。標準現金販売価格69,800円(税込)。購入価格は55,840円。購入先は滋賀県東近江市の「サイクルショップ・ライフ」。福山通運の送り状の日付はH24913日。お問合せ番号394-5775-3182。あれからちょうど10年が過ぎた。

 60歳で定年退職した後、勤務していた学校の校区にある公民館で講座やサークルのお世話をさせてもらっていた。学校の仕事を辞めたら長い旅に出たり、思う存分自分のやりたいことに時間をかけたりすればいいと思っていた。ところが、時間ができると、さて、自分のやりたいことは何だったのか、それも定まらないような中途半端な時期でもあった。

公民館の囲碁サークルにクロスバイクで通って来られる人があった。あまり見かけたことのない、スマートな自転車が気になった。その自転車にまたがせてもらったのが、クロスバイクとの出会いだった。1日に50㎞くらいは簡単に走れるとその人から聞いた。そのときまで、自転車は5㎞程度を走る乗り物だと思っていた。

早速、クロスバイクを買うことにした。これまで乗った自転車とは全く違う乗り物だった。休日に朝から走り始めれば、1100㎞くらいは走れるようになった。もう少し速く、楽に遠出のできる自転車が欲しいと思い、1年後にはロードバイクを手に入れた。出かけた先でパンクなどのトラブルがあっても困らないように、整備や修理にも手を染めた。その後4年間、仕事場まで往復25㎞の道のりを自転車で通った。

 仕事からは全く離れた今、天気の良い日は必ずといっていいほど自転車に乗る。ときどきは遠出をする。出かけた先で写真を撮る。週に一度、自転車と自分のことを記録して写真とともにブログで公開する。次の遠出に備えて自転車の手入れや調整をする。

 自転車がすっかり生活の一部になっている。ちょうど10年自転車に乗りつづけた。これを機会に、次の10年をどうやって自転車と過ごすか、それも考えることにする。

家に帰ると自転車が届いていた
暗い中で梱包を解いた

翌日は休日だった
さっそく乗ろうと思うが
その前に写真を撮った

10年後の同じ日の朝、同じ場所

10年の間に
いろんな場所へ行った

10年の間に
いろんな道を走った

いろんな相棒と走った

(表の数字の単位は㎞)
10年の間に
かなりの距離を走った


次の10年をどう走るか
考えている















2022年9月17日土曜日

名古屋へ行く

 先週、名古屋へ行った。久しぶりに自動車で行った。ここしばらくは自転車でしか行ったことがなかった。市内の目的地にもよるが片道30㎞ほどなので、天気さえよければ自転車でも楽に行けてしまう。山を越えることもないので、全行程平坦路というのも嬉しい。

 自動車にしたのは、しばらく走らせていないのでバッテリー上がりが心配だったことや、たまにはエンジンをしっかり回してやりたいと思ったことが理由である。往路は高速道路を使った。エンジンを温めておいて、しっかり回転を上げて走るには高速道路の方がいい。自転車でばかり行っているので、高速料金のことはあまり勘定になかった。名古屋の街中まで走ったら、通行料金が1,600円もかかった。ETCがないので現金払いだ。

名古屋へは自転車のヘルメットを探しに行った。正確には、インターネットで目星をつけたヘルメットの実物の色やデザインを確かめ、着用具合を試してみたかった。品揃えの豊富な大きな店へ行けば、お目当てのヘルメットの現物が見られる。

ちょっとずるいが、実物を試着させてもらい、気に入れば家に帰ってネットの通販で注文する。その方が安く手に入ることが多い。もちろん、店頭で割引されているものが見つかれば、迷わず買う。自転車では大きな荷物を持ち運べない。何かを買うことも想定すれば、自動車で出かける必要がある。

この日は、大きな自転車店を二つ廻った。ネットで見たヘルメットの実物にふれることができた。試着をさせてもらい、かぶり心地を確認することもできた。家に帰ってネット通販を利用することに決め、お店には申し訳ないが買わずに帰った。

 二つの店を見て廻る間、駐車する場所を探すのにも苦労した。駐車料金を1,100円払った。改めて思う。通行料も駐車場料金も、しかも燃料もいらない自転車の何と経済的なことか。車を走らせるだけでなく、停めておくためにも経費と労力が要ったことを考えると、欲しかったヘルメットがかなり割高なものになってしまった。

※「ヘルメット選び」についてはまたいずれ…。


自転車を積んだ車には
乗ることが多いけれど…

何処に行くのにも一緒だった車に
乗る機会が少なくなってしまった

幌を張り替えて
きれいにはした

街中の探し物は
自転車にかぎる

ここといえばここへ
そこといえばそこへ
まちがいなく行ける

見知らぬ道に迷い込むのが
またなによりも得意なのだ




2022年9月10日土曜日

ロシヤオオタキの話

 高校生のころ、三岐鉄道北勢線の北大社駅から電車に乗って学校へ通った。駅前には自転車預り所があった。月極で料金を払い自転車を預ける。自転車は高価で、丁寧に扱うべきものだったのだろう。

 毎朝電車の発車時刻ぎりぎりに駅に着いて、預り所の軒先に自転車を乱暴に停め電車に飛び乗る、そういう不届き者も何人かはいた。帰りの電車から降りて預り所へ行くと、自転車は整然と屋内に並べてもらってあった。

 当時の北勢線は車輛の乗降扉が手動式だった。先頭の乗客が留め金をくるりと回して、ロックをはずす。重いハンドルを手で引いて扉を開けて乗り降りした。手動の扉はいつしか自動扉に変り、いくつかの駅は統廃合された。北大社駅も駅前の自転車預り所も姿を消した。

高校3年生の夏休み、受験のための補講を受けに学校へ出ることがあった。いつもよりは朝が遅いので、駆け込み乗車をしなくてもゆとりがある。ホームで電車を待っていると、親子づれがホームに上がって来た。平仮名を習ったばかりらしい男の子が、駅名標(ホームの駅名を書いた看板)を声にだして読みはじめた。

「ろ・し・や・お・お・た・き」、「ねぇ、おかあさん、ここに滝があるんだね」、「だって、ロシヤオオタキって書いてあるよ」。その子は、大きく書かれているひらがなの駅名をうしろから読んだのだ。

 ロシヤオオタキとかわいい声でいわれてみると、滝の音がどこからともなく響いてきた。暑くなり始めている夏の朝の空気が、すこしひんやりとした。その朝は自転車を丁寧に駐輪して、ゆとりをもって電車を待った余得だった。

なくなった北大社駅の駅名標が、今も我が家の近くの集落センターに立てられている。あの時の男の子を真似て、「ろ・し・や・お・お・た・き」と声に出して読んでみる。自転車と電車を乗り継いで、学校へ通った夏の日が懐かしく思い出される。

ロシヤオオタキを見つけた男の子は
今はどうしているだろう

声に出してみると
水の流れが
大きな滝になる

夏の終わり
今年の夏の思い出と
昔の夏の思い出が混じる

思い出は私の後ろにつづいていく

今年の夏の思い出にも
またいつか再会する








2022年9月3日土曜日

記録は語る

  中学校の教員をしていたので、もともと記録を残すことと無縁ではない。生徒たちの成績を記録したり、生活の様子をメモに残したりした。記録は統計的にものごとを総括するのには便利がいい。これまでの記録が次の行動の決め手になることもある。

 自転車に乗り始めてから、走行の記録を取り始めた。サイクルコンピュータが、走行時の速度以外にも、走行距離、平均速度、消費カロリー、積算距離などを記録してくれる。その数値を一覧表に書き写しておく。天候や行き先、一緒に走った人も書き添える。

 サイクルコンピュータは、電池がなくなるとすべての記録がリセットされる。走るたびにその日の記録を転記しておけば、リセットされても、これまでの記録が残る。一度走ると、記録の表が1行増える。これが馬鹿にならない。天気のいい日にはほぼ欠かさず自転車に乗るので、年間に200行以上の記録になる。

 走行の記録とは別に、整備をしたときに購入した部品や用品、工具も購入日や型番、値段などを表に書き込んでおく。部品の定期的な交換の目安になるし、同じものを次に調達するときに便利である。

 10年近くも同じ項目の数字を並べていると、一覧表はストーリーになる。遠乗りの多かった時期や平均速度の速い時期、走った回数からもそのときの体調がわかる。どれだけの距離を走れば注油が必要か。どんなチェーンオイルが効果的か、タイヤはどのメーカーのものが長く使えるか。ブレーキシューの減り具合は、距離とどう関係するか。自転車の調子まで読み取れる。

 経験値も必要だが、記録に残った数値も多くを語る。自転車に乗った日は、たった5分間ほどで、その日の数字を表に書き入れる。年間200行の記録は10年で2,000行の叙事詩になる。記録を残すことが目的ではないが、記録が積もって、語りかけてくるようになるから不思議だ。

ロードバイクに初めて乗った
最初の20回の規則

ロードバイクに乗りつづけている
最近の20回の記録

ロードバイクの整備をした
ここ4年間の記録

タイヤの記録も残しておく

夏が川を下っていく
この夏の記録を残しておく

天高く
稲穂のこうべは低く
秋の記録も残しておく