『人生いろいろ』という歌がある。昭和世代でないとなじみがないかもしれない。「人生いろいろ 男もいろいろ 女だっていろいろ咲き乱れるの」と島倉千代子が歌っていたのが懐かしい。高齢になって新しいことに挑戦している人は女性に多いように思う。まさに咲き乱れている。百花繚乱。男は、秘密基地だの隠れ家だのといって、ちまちまと趣味を楽しんでいるような気がしてならない。
人生で出会う「色」には数々ある。自転車を選ぶときにも色は大事な要素である。まずは、ロードバイクかクロスバイクか、はたまたマウンテンバイクにするか。選択肢は多い。若い頃から乗っている人たちは、自転車との出会いや始める動機がちがうかもしれない。退職して、さて何か始めようというときに自転車に出会い、自転車選びをする人は誰もが同じような選び方をするのではないかと思う。
自転車の使い道が決まれば、性能やサイズを検討する。性能はどのメーカーの自転車を選んでも値段相応。装備される部品もさして変わらない。決め手になるのはフレームの塗色だったりする。好みの色は重要である。色はデザインを左右することにもなる。スタイルや性能が気に入っても、好みの色が見つからなければ二の足を踏む。
自転車の色といえば、印象的なのはビアンキの青。ビアンキのチェレステ(celeste)という青は美しい。年式によってその青が微妙に変化する。自転車に少し興味がある人ならビアンキの青は簡単に見分けられるだろう。チェレステは青空。イタリアの青空は日本の青空とは違うのか、イタリア人には青空の色が違って見えるのか、何ともきれいな青だ。ビアンキにはチェレステ・クラシコというビンテージカラーもある。自転車のフレームは塗装の面積が小さい。塗色に凝って、高価な塗料を使っても高々しれたものだろう。フレームの色は個性を競う最大の見せ処だ。色だけで自転車を選ぶなら、断然ビアンキの青にしたい。
『底本・和の色辞典』で、ビアンキの青に近い色を調べてみる。一番近い色は砧青磁(きぬたせいじ)か水縹(みなはだ)と呼ばれる色か。いずれも平安時代から使われている色である。チェレステ・クラシコは瓶覗(かめのぞき)という色に近い。どちらも和の色にある空色とはニュアンスが異なる。
先週まで熱戦の繰り広げられた大相撲九月場所は正代関の初優勝で千秋楽となった。まずはめでたい。その正代関の締込みの色は青薫(せいたい)と呼ばれるものか。楽日の対戦相手、翔猿の締込みは青味の薄い露草色か。双方ともビアンキの青に劣らぬきれいな青である。自転車の色には西洋の色の名前が使われているが、和の色を当てはめてみると面白い。面白ついでに、自分の人生には何色を当てはめるか考えてみるが、68年も生きていてまだ決めかねている。
花の色は桜色、薄桜、乙女色 萌え始める草木は若草色、浅緑、鮮緑(せんりょく) |
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| 曼殊沙華の赤は、真朱(しんしゅ)、銀朱、緋色 実る稲穂は刈安色(かりやすいろ)、鬱金(うこん) 空はチェレステ、天青(てんせい)、白群(びゃくぐん) |
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蕎麦の花の白、胡粉色(ごふんいろ)、生成り色(きなりいろ) 愛車の色は、胆礬色(たんばいろ)、天藍(てんらん) カタログではジュエリーブルー |
雪の純白、真白(ましろ)、白磁(はくじ)、銀白色 愛車は純黒(じゅんこく)、濃墨(こいずみ)、黒羽色(くろばいろ) カタログの色名はマットブラック |



さすが博学です。色にこんなにも種類と名前があるとは初めて知りました。
返信削除私はせいぜい虹の7色、マッキーの10色程度しか、名前が浮かんできません。
『花の色はうつりにけりないたづらに わが身世にふるながめせしまに』
色に関するといえば、百人一首で覚えた小野小町のこの歌くらい。
勉強を真面目にしていなかったのがバレバレですね。
斜め目線から、たかが色、されど色・・・。
しかし、ビアンキの青。実物の自転車を見てみたくなりました。
博学でも何でもなく、『和の色辞典』の受け売りでお恥ずかしいかぎりです。
返信削除ビアンキの青は年式やモデルによって、微妙にくすんだ感じだったり、鮮やかだったりするようですが、素人が見てもなるほどビアンキと思わせてくれます。マニアなら、色と年式やモデルが全部識別できるのでしょう。
私の場合は、何かについて特別詳しいわけでもなく、「自分の色」が出せるといいとは思うのですが、それも叶いません。