'25.10.3 一本の柿の木

2023年10月28日土曜日

自転車のすき間

  自転車を駐輪場に停めるときに、隣の自転車との間にどれくらいのすき間が必要か、という話ではない。自転車を出し入れするときに隣の自転車を倒したり傷つけたりしないすき間も必要ではあるが、ここでは自転車の取り付け部品のすき間の話。

 自転車の車輪のリムをはさんで車輪の回転を止めるブレーキの場合、リムとブレーキシュー(ブレーキのゴムブロック)のすき間は1㎜程度に調節する。左右同じように1㎜のすき間を作る。左右合わせて2㎜のすき間の間をタイヤが回転している。ブレーキをかけると、そのすき間が無くなり、リムとシューが密着し摩擦力で回転を止める。すき間が大きすぎるとブレーキの効きが悪くなる。

 左右で2㎜のすき間しかないところで回転する車輪が、横に2㎜振れていたら、リムとシューが擦れ合う。走行中にブレーキがかかることになる。車輪の横振れも中心軸から左右に1㎜以内に抑えなければならない。

 多くの自転車に使われるシマノの変速機の整備マニュアルをみると、前の変速機のチェーンを移動させるチェーンガイドとチェーンのすき間は0㎜から0.5㎜が適正となっている。そんなバカな。0㎜といえばすき間はなし。既にガイドとチェーンが擦れ合っているということではないか。実用には中間の0.25㎜くらいに調節すべきということだろうか。

 自転車屋さんで教えてもらったことがある。自転車の各部の調節ネジは、4分の1回転とか半回転といった具合に、ごくわずかに締めたり緩めたりする。オートバイなどを自分でいじる人は、この微妙なさじ加減が判らないので失敗しがちだ、ということだった。

 昔はオートバイだってキャブレターの燃料と空気の混ぜ具合やエンジンの点火時期などの微妙な調節は、少しずつネジを回して手探りでやってましたけど。今では電子制御にお任せである。自転車のすき間調節だけは、人と人の間合いの取り方と同じように、昔も今も人情の機微が必要ということか。

花のすき間に
秋空がのぞく

細いすき間を
通り抜けて進む

花のすき間を
秋風が吹いて通る

花のすき間を
ときが過ぎていく

空と花と
自転車と私と
いくつもの
すき間を
調節している













2 件のコメント:

  1.  自転車の構造はとてもシンプルでなおかつアナログにというイメージでしたが、繊細な部分が多く人の手による微妙なタッチが必要なのですね。

     そして命を守る最も重要な部分がブレーキであり、リムとブレーキシューの摩擦によって効果の是非が問われるわけて、それも何と1㎜の世界に人間の生命が託されるとは恐ろしくもあります。

     タイヤの整備不良でわずかな横振れがあれば、摩擦音が生じます。その調整も必要となり、実用車よりスポーツバイクになるほど扱いが大変ですね。ブログの変速機云々など、0㎜とは日常を生きる私どもにはあり得ないお話です。でも最終的な確認は、血の通った人間の手に委ねてほしいものです。
     
     今回の『自転車のすき間』という言葉で、すぐに浮かんだのが喪黒福造こと笑うせえるすまん。私にとって印象深いアニメだったのでしょうね。
    心のすき間を埋めてくれるという誘惑が、怖くもあり惹かれるのです。

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  2.  自転車のパイプの太さや内径、材料の厚みなどは、目視では正確に判りません。ノギスなら1/20mmの単位まで、マイクロメーターなら1/100mmの単位まで測れます。

     ところがチェーンガイドとチェーンのすき間などは、それではうまく測れないので、すき間ゲージ(シックネスゲージ)を使えば、1/100mm(0.01mm)単位までは測れます。自転車のすき間にはそこまでの精度は求められないようですが、勘に頼れない素人にはそんな測定具が必要かもしれません。

     目では判別できない微小なすき間や、張り詰め具合を数値で表すのも面白いと思います。自転車のスポークがどれくらいの強さで均等に引っ張りあっているかを測定するスポークテンションメーターや、ネジの締め付けの強さを測定するトルクレンチもあれば便利だと思います。

     自転車や自転車の部品を選ぶのは楽しいですが、自転車の専用工具や測定具などを選んだり集めたりするのも、次の段階としては面白そうです。今のところ、最低必要で安価な工具しか手元にありませんが、少しずつ測定具なども揃えたいところです。
     
     自転車のすき間は測定具を工夫すれば何とかなりそうですが、笑うせぇるすまんに埋めてほしくなるような心のすき間は数値化できないので、最期にはとんでもないことになるのかもしれないですね。

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