冬をむかえる

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'25.1.22 山を見て走る

2023年6月10日土曜日

機能美について

  愛用の自転車をスタンドに乗せる。チェーンに潤滑油を注す。変速機の動きを確かめる。後ろの変速ギアが10枚。ハンドルについた変速レバーを操作して、一番小さいギアから最大のものまで、チェーンのかかり具合を確かめる。

 ペダルを勢いよく手で回し、片方の手で変速レバーを操作してワイヤーを引く。チェーンは小さいギアから大きいギアへと移る。金属のチェーンが身をよじるようにたわみながらギアの上を移動する。ワイヤーを緩める。チェーンは身体をくねらせながら小さいギアへと落ちていく。チェーンは生きていて、変速機に促され滑らかに移動を繰り返す。

 スポーツ自転車に乗らない人は、先ず変速ギアの枚数の多いことに驚く。私の乗っているクロスバイクは、クランク側に歯車が3枚、後軸に8枚。24段の変速ができる。ロードバイクとマウンテンバイクは前が2枚、後ろは10枚のギアで、20通りに変速ができる。

 実際には実用自転車の3段変速と同じようなもので、速く走る、巡航する、そして発進時や坂道などは軽い力で走るといった3通り程度の選択ができれば良い。では、なぜ20段以上もの組み合わせがいるのか。非力な脚の回転を補って、いかに力を有効に使うか、いかに滑らかに自転車をスピードに乗せるか、ひたすらそのための工夫なのだ。

 最近、e-Bikeという電動アシスト付きのスポーツ自転車に乗る人と一緒に走ることが多い。モーターのアシスト量を調整すれば、変速にはそれほど敏感になる必要がないらしい。アシストのない自転車でe-Bikeと同じペースで走るには、変速の滑らかさが命である。

 もう一度、変速機の具合を確かめてみる。変速レバーを素早く動かせば、チェーンは生き物のようにギアからギアへと移動する。大きなギアへ移り、小さなギアへ飛ぶ。チェーンとギアの相関。その形と動きはいつ見ても美しい。

力を受ける


力を伝える

    

力を活かす

 

速く走るために


のんびり走るために


大きな力をだすために

小さな力ですむように

しっかりと立つためにも
ゆったりと座るためにも
その機能は美しさなのだ

2 件のコメント:

  1.  このブログを拝見していつも思うのは、タイトルを中心にして、起承転結の流れが明確にできていることです。さすが元国語の先生というか緻密な構想がされていて、凡人の私にははるか及ばないことです。

     今回の起承に当たるところでしょうか、ペダル、レバー、チェーン、ギア、そして手などの一連の動きが、文章を読むだけでしっかりとイメージできます。これだけ上手く表現できるということは、教員時代に子どもたちへわかりやすく話をされていた姿が浮かんできますし、生徒に人気があったことでしょう。

     機能美とは目的のために余分なものを排し追求した結果、自然にあらわれる美しさだそうですね。今回の写真にある磨かれたMARIOさんのバイクはまさにそれですね。

     ふと思ったのは、機能美といえるのかわかりませんが、スポーツ選手の肉体をテレビで見ていると、その種目に相応しい筋肉や体つきになっています。短距離選手と長距離は全く違うし、走り高跳びは重力に逆らうための体つき。砲丸投げは・・・など。
    野球もサッカーもバスケも然り。どのスポーツもいらないものはそぎ落とし、必要なものだけをアップさせる。お相撲さんもブクブク太っているのではなく、土俵の上で勝つためのからだを日夜つくっているのでしょう。
     話がまとまらずに長くなったので、この辺で終わります。

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  2.  いつも褒めことばや励ましをいただき、ありがとうございます。
     話や文章が上手な人や文字のきれいな人は信用できない、と何かの本で読んだか、誰かに聞いたかした覚えがあります。私の場合はお褒めいただくほど上手い文章でもないし、思いつきで書いているような所もありますが、そのかわり、多少は信用してもらえるかもしれません。

     職業柄、生徒さんに話をする機会は多くありましたが、上手に話すことよりハートで話すことが大事だと常々思っていました。言いたいことが伝わる工夫は必要ですが、「巧言令色鮮(すく)なし仁」になってはよろしくないですね。

     ところで、べーえんべーさんの云われるように、機能美についていえば、アスリートの筋肉には確かに鍛えあげた美しさがありますね。

     自転車ネタから外れますが、スパーバンタム級に階級を上げた井上尚弥選手が、7月25日にはどんな身体を作ってフルトン選手に対峙するのか、今から待ち遠しいかぎりです。

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