冬をむかえる

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'25.1.22 山を見て走る

2020年3月7日土曜日

ロンドンで自転車に乗る


   イギリスの首都ロンドンで3年間暮らしたことがある。文部省(当時)在外教育施設派遣教員の募集に応募して、ロンドン補習授業校に勤務することが決まった。現地に住む日本の小・中学生のための学校へ教員として派遣された。1986年4月、34歳、今から34年前のことである。現地での仕事や日々の生活について書き始めると「日々是倫敦」になってしまうので、自転車に限った話にしたい。
 
 日本を代表する文豪、夏目漱石を引き合いに出すのはおこがましいが、漱石は1900年(明治33年33歳のときに、英語研究のため文部省から英国留学を命じられている。漱石の留学生活はそれほど充実したものとはいえなかったようで、孤独感に苛まれ、下宿に引きこもる日々が続く。神経衰弱に陥り、その治療のために下宿の女主人から自転車に乗ることを勧められている。この頃の様子は、漱石の『自転車日記』に詳しい。2年後にはさらに神経衰弱を悪化させ帰国している。
 
 私の方は国費留学とは違って、派遣教員という出稼ぎ。雲泥の差。能天気なものである。幸いなことに、家族を同伴していたので孤独感はない。神経を病むこともない。100年近くも後のことで、情報量も多い。漱石の時代に較べればイギリスは近い国になっていた。異国の生活に不安がなかったわけではないが、3年間の任期を発狂せずに全うすることはできた。その間の失敗談は数えればきりがないが、ともかく、家族4人がそろって無事帰国した。
 
 最近、自転車に乗るようになって、ロンドンにいる頃に自転車に乗っていれば良かったと思うことがある。当時は車にしか興味がなかった。何とも残念である。それなら、今からでも出かけて行って、自転車でゆっくりとロンドンの街を走ってみるのはどうだろう。ロンドンの街中には急な坂道がほとんどない。イギリス全土を見回しても、北東部に低い山岳地帯があるだけで、自転車の旅には最適である。
 
 昔々、ロンドンにいたといっても、今も本当にロンドンがあるのか、行ってみないと判らない。それを自分の目で確かめるために、時間ができたらロンドンに行く。現地で自転車を買う。ブロンプトンの折りたたみ自転車に決めた。日本で買うよりは安いはずである。妻も行きたいだろうから、2台買って、ロンドンの街中で乗る。ロンドンの郊外もいい。レンタカーに自転車を積んで他の町に移動する。イギリスの田舎が、まだ、本当に残っているのか確かめながら走る。実現するかどうか。プランを立てるのは無料。幸い、漱石よりはうまく自転車に乗れる。
 
 ロンドンの街中で自転車に乗ったことがあるのは、我が家の娘だけである。息子は漱石が自転車の練習をしたクラパムコモンとよく似た雰囲気の公園で、三輪車を乗り回していた。私たちの借家は、漱石が日記を書いていた下宿とテームズ川を挟んだ北側、ケンウッドの森の近くにあった。


ロンドンで自転車に乗っていたのは、我が家の娘だけ。    
息子は三輪車。私は、このころ車にしか興味がなかった。残念。

コモンと呼ばれる、小さな公園。共有地くらいの意味か。
漱石に『自転車日記』に出てくるクラパムコモンも、  
そのコモンの一つ                  
  
    ロンドンの街角で。                    
後ろに立てかけてある自転車が、映画やドラマに   
     使われそうな雰囲気を醸し出す。               

私は、車にしか興味がなかった。                              
当時乗っていた ローバー3.5リッター サルーン。  
かなり古いものを、偶然見つけて買った。      
現地の人に譲ってほしいとよく言われた。      
      

 この車は田舎道がよく似合った。            
     次に行くときは、こういう道を自転車で走りたい。        
ロンドンで自転車に乗るなら、ブロンプトンを買う。
 Made in England.                                              
                When in Rome, do as the Romans do.                               

 地元の自転車は、地元のシーンによく似合う。
日本で乗るなら日本製、         
イギリスで乗るならイギリス製か。    
    
             こちらは、本物のRaleigh "PROPAGANDA"               
ロンドンで乗るなら、この自転車もいいが、
        シングルスピードなのに異様に重い、14kg      
         イギリス流の質実剛健、実用本位か。           
                   
 私が現在乗っているのは、Raleighの自転車を 
      新家工業がライセンス生産したもの  (写真 下)。    

  
                     



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