『小説家を見つけたら』という映画を見つけたら、すぐにDVD(もちろんBRでも良い)をレンタルビデオ屋の棚から抜き出して借りるべきである。
映画は、ニューヨーク・ブロンクスの劣悪な環境の中で暮らすアフリカンアメリカンの少年ジャマールと、訳ありで40年もの間、隠遁生活を送る小説家ウィリアム・フォレスターの絆を描く。主演は、ショーン・コネリー。007シリーズのジェームズ・ボンド役とは打って変わって、ピューリッツァー賞最優秀小説賞を受賞した有名な小説家を演じる。少年ジャマールとの出会いの場面では人種の偏見に満ちた頑固爺いの印象だが、やがてジャマールの才能を見抜き、彼に文章作法を教える。
文武両道に秀でるジャマールは、バスケットボールの才能を認められて、有名私立高校へ特待生として転校するが、妬みと人種差別から窮地に立たされる。小説家の教えで書いた文章がうますぎるということで盗作問題が勃発する。懲罰委員会にかけられるジャマール。その窮地を救おうと、40年間の殻を破り、外の世界へ再び踏み出す小説家フォレスター。その顛末は…。
映画のあらすじが長くなった。
映画の終盤、長年閉じこもっていた部屋から出ようとするフォレスターと共演するのが自転車である。小説家は長い間使われなかった自転車のタイヤに空気を入れる。玄関の階段から自転車を下す。夜の街をやや危な気に走り始める。役中の小説家が乗っているのか、ショーン・コネリーが乗っているのか。もちろん、両方とも正解、何とも様になる。数秒のシーンが脳裏に焼き付く。その後、物語は大団円を迎え、小説家は街を離れることを少年に告げる。自転車を押しながら歩く小説家フォレスターとジャマール少年のシーン。自転車の存在が際立つ。自転車と一緒に町を歩くときは、こうでなければいけない。名脇役の自転車が忘れられない。ついでにいうと、この映画の挿入歌がなかなか聴かせる。マイルス・デイビスの名演奏が映像を支える。
自分が自転車に乗り始めて、街に停めてある自転車、行き交う自転車、車の運転中に追い抜く自転車や通学する学生たちの自転車にも目を向けるようになったからかもしれない。昔観た映画の中の自転車を、ふと思い出すことがある。
最後に、『大脱走』のワンシーン。ドイツ軍の捕虜収容所から脱走を図る連合軍の兵士たちの実話に基づく物語。スティーブ・マックィーンのオートバイを使った逃走シーンばかりが注目されるが、ここではジェイムズ・コバーン演じるオーストラリア人セジウィック中尉の乗る自転車のカット。ドイツとフランスの国境辺りと思しい田園地帯を悠々と走るコバーンと自転車。自転車乗りのお手本のような場面である。
| 自転車で街に出る老小説家フォレスター 手信号はしっかり出しているが、無灯火!? |
| 物語も終わりに近づく場面 自転車が演技している?! |
![]() |
| 映画『大脱走』原題 The Great
Escape) 1963年アメリカ映画 監督:ジョン・スタージェス。 出演:スティーブ・マックイーン ジェームズ・ガーナー チャールズ・ブロンソン ジェームズ・コバーン 他 |
| 映画の終盤、悠々と脱走を図るコバーン この自転車は盗難自転車ではあるが…、 |


0 件のコメント:
コメントを投稿