いうまでもないが、自転車に燃料はいらない。燃料はいらないが、乗り手のエネルギーは補充しなければならない。前にも引用したことがあるが、萩原朔太郎の『自転車日記』には次のような件がある。「今日、地図ト磁石ヲ携エテ近県ノ町ニ遠乗リス。途中甘味ニ飢エ、路傍ノ汁粉屋ニ入リテ休息ス。帰リテ父ニ語リテ曰ク、余今日某ノ町ニ遠乗リス。モシ汽車ニテ往復スレバ、約五十銭ノ旅費ヲ要スベシ。シカルニ余ノ費消シタル所ノモノハ、二杯ノ汁粉代金八銭ノミ。自転車ノ利、アニ大ナラズヤト。」
自転車に乗り始めたときは、弟に酔っぱらいがふらふらと歩いているようだとからかわれていた朔太郎が、自在に自転車に乗れるようになり、遠乗りに出かける。甘いものが欲しくなって、汁粉を2杯食べ、8銭を払った。電車で行けば運賃50銭がいるところを8銭で済んだと自慢気に父親に話す。すでに『月に吠える』などの詩集で名声を博している大詩人が、父親に自転車の自慢をしているところが可愛くて面白い。
自転車に乗ると朔太郎でなくても甘いものが欲しくなったり、喉が渇いたりする。夏場ともなれば、水分の補給が頻繁になる。自転車に関する本には、水分補給の仕方や食事についてまで懇切に解説しているものもある。スポーツドリンクがいいとか、ゼリー状のサプリメントがいいとか、はたまた、食事は炭水化物が多く含まれるものを選ぶのがいいとか。参考にはなるが、ちょっとお節介が過ぎる。
私は、夏も冬も緑茶を飲むことにしている。水は夏の太陽のもとで熱くなると匂いが気になる。冬場の冷たい水は体温を奪うような気がする。お茶なら、温度が変わっても飲める。飲みたいものを、飲みたいときに飲んでいれば、身体の要求には答えていることになる。自然の摂理に任せれば大過はない。
出先では、コンビニでペットボトルの500ml入りの緑茶を買う。暑いときだと20㎞程走る間に1本飲む。値段にして150円。ハイブリッドの車の燃費と同じくらいか。他の消耗品も考えると、車よりランニングコストがかなり低い。車に乗っていても、ドライバーは水分を摂るから、それも計算に入れると、自転車の、というか、乗り手のための燃費は格段に安い。「自転車ノ利、アニ大ナラズヤ」、確かに自転車の利点は大きい。
ところが一つ引っかかることがある。「父曰ク。汝何ノ用アリテ彼所ニ行キタルヤト。余曰ク。ナシ。単ニ散策ノミト。父大ニ笑イテ曰ク。用ナクシテ行キ、無益ニ八銭ヲ費消ス、何ノ得カコレアラン。汝ハ小学生ノ算術ヲモ知ラザルナリト。」
朔太郎の父上のおっしゃる通り。私が自転車に乗るのはほとんどがお遊び。通勤や買い物に使うなら兎も角、用もなくただ走っている。燃費が安いと威張ってはいるが、食料や飲み物を消費して、エネルギーを空焚きしているのみ、なのである。
ボトルケージには緑茶のペットボトルを入れる
銀のケースは工具、予備のチューブなどを入れる
写真のお茶は安売りで500ml 1本 75円
ガソリンの方が安い、お茶は意外に高価?!
後ろの広告はお茶とは関係ない 紫色に店を塗った薬局の広告??
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夏場は特に水分の摂取量が増える 炎天下は灼ける
こんな道で飲み物を切らしたら干上がる
この時は珍しく水を持っている
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大きなため池が干上がっていた
ため池の底を走る機会は珍しい
飲み物を切らすと自分もこんな具合に干上がる
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こんな山の中ではコンビニもない
お茶と多少の食料は携行したい
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足元はぬかるんでいて、湧き水らしきものが流れている
この水を飲むのは勇気がいるので、お茶はやっぱり持っていたい
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初めまして、私の孫は萩原朔太郎さんから、貰って萩原朔と言います。又、コーヒー誘って下さいませ❗
返信削除コメントありがとうございます。
返信削除お孫さん、可愛いでしょうね。
何とお読みするのですか?
そのままで「さく」さん?「はじめ」さん?
私の中では、日本の三大詩人は
萩原朔太郎、谷川俊太郎、西脇順三郎
ということにしています。
三大「自転車日記」は
萩原朔太郎、夏目漱石、志賀直哉
のものだと思います。
もしかして、コーヒー友達…?