冬をむかえる

冬をむかえる
'25.1.22 山を見て走る

2023年9月9日土曜日

自転車の音

 自転車を漕ぎ出す。我が家の前の道はゆるい下り坂だ。反対方向へ漕ぎ出せば、必然的に登り坂ということになる。下り方向を選ぶ方が断然快適だ。走り始めにペダルを踏めば、しばらくは惰力で坂を下る。

 このとき自転車の調子が良ければ絶対無音だ。タイヤが路面を踏んで転がる心地よい音と風をきる音だけが聞こえる。坂を下り終えるとペダルを踏みはじめる。自転車の調子が整っていればここでも全く音がしない、はずである。

 問題は、ときとして異音が聞こえることだ。自転車から耳障りな音が出ているのに気づく。どこかに異常があることを知らせる音は、気になりだすと余計に大きくなる。正確にリズムを刻む音であれば、回転する部分で発生する音である。車軸、ペダルの軸、あるいはクランク軸が発生源と考えられる。変速が上手くいかず、チェーンとギアが干渉していることもある。タイヤの溝に小石などがはさまっていることも原因になる。

 速度を変えたり、ペダルを踏むのを止めたりしながら、異音を聴き取る。音だけでなく振動を感じることもある。

 不規則で耳障りな音は、自転車に取り付けた部品が何かの拍子に緩んでいたり、携行している修理用具などがきちんと収まっていなかったりすることが原因だ。感覚を澄ませて音の出る場所を探す。不具合が判ればその場で手立てを講ずる。自転車に異音がまとわりついているのは興醒めだ。

 なにしろ、自転車に乗る楽しみのひとつは、いろいろな音に出会い、音を愛でることなのだ。タイヤが路面と対話する音。風をきる音。ときには風に追い抜かれる音。鳥のさえずり。虫の音。木の葉ずれ。落ち葉のささやき。稲穂の揺れる音。遠くの学校の運動場から聞こえる子どもたちの歓声。ときに一緒に走る仲間の快活な話声。心おきなく音を楽しむためには、自転車から出る異音はすべからく取り除くべきである。

秋の蝉を聞く

境内の静謐
静けさも音

次の景色の中に
次の新しい音

稲穂のゆれる音
稲穂をゆらす音

文字は音になり
音は文字になり

音はつながり
音はひろがり


2 件のコメント:

  1.  中学時代でしたか理科の授業で、エネルギー保存の法則やらエネルギーの変換について勉強した記憶があります。
    実際は変換された後、もとあったエネルギーより必ず小さくなる。結局、熱やら音などに変わっていき数値的には減ってしまうが、理論的には前後のエネルギー総量は等しいとか変換効率がどうのとか勉強した記憶があります。なかなか目に見えない部分も多く、理解に苦しでいました。

     自転車とか自動車に乗っていて、今まで聞こえていなかった音が発生するということは、どこかで異常が起きているサインですね。私もときどきその異音に気づいて、何だろうと思うまではいいのですが、それから先へは自分で進めず他力本願となります。

     MARIOさんのように、自転車のわずかな変化や異音だけで、おおよその原因をつきとめ、不具合の根源に迫り、すぐさま解決の手立てを講じて修理に入っていく。
    これって、どうみても自転車屋さんプロ顔負けではないですか。

     今回の内容は専門的で少し難しかったですが、素晴らしいの一言です。どう表現したらいいのかわかりませんが、よくこんな文章が書けるなあということです。
     
     起承転結を意識しながら、各部の内容も丁寧でわかりやすく、最後の結で自転車に乗る楽しさや爽快さで締めるとは。

    いつもながら高尚なお話で、今回も勉強させていただきました。

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  2. ブログには書いたものの、自転車から出る聞き慣れない音の原因が判らないで困ることもあります。自転車はシンプルな機械のはずなのに、けっこう奥が深いです。

     どうしても原因が判らない時には、しばらくそのままにしておけば、もっと不具合がすすんで、いずれ大きな音になるだろう、そのときは自転車屋さんに駆け込めばいいなどという乱暴な判断をしていることもあります。素人の素人たる所以です。とてもプロの自転車屋さんや、経験を積んだライダーにはかないません。

     それでも、自転車の音や振動に敏感になっていれば、不具合を見つけることにつながり、安全な走行にもつながるとは思っています。

     素人は素人なりに丁寧に自転車に乗って、試行錯誤しながらメンテナンスを続けることで、長く自転車を楽しみたいです。

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