冬をむかえる

冬をむかえる
'25.1.22 山を見て走る

2024年8月31日土曜日

「道」を行く

  「八ケ岳に行く予定が、天候がイマイチなので中止。でも、何処かには行きたい。天候が悪くなってもすぐ引き返せる近くの低山に行くことことにした。早朝なら少しはましだろうと山友と午前5時に待ち合わせて竜ヶ岳へLet’s go

 平日の猛暑だからか(略)、山頂は貸し切り状態で誰もいない。あとから登って来て出会ったのは5人だけと鹿の群れ。静かな山頂でのんびり朝食兼昼食を食べて下山した(略)」('24.8.23)

 知人が「YAMAP」というアプリを使って掲載している山行の記録である。歩いたルートの地図、獲得標高や登山の途中で本人が撮影した写真などすべて見ることができる。

 私が自転車に乗るときには、「Cyclemeter」というアプリを使っている。走ったルートや登り下りの標高、走行時間やスピードなどをGPSを使って自動的に記録してくれる。YAMAP」の自転車版である。便利なアプリがあるものだ。

 「YAMAP」の記録にある登り始めから頂上に至るまでの何枚もの写真が臨場感を添える。尾根を行く道、頂上からの眺望、重なった山からわき上がる雲の躍動まで感じ取れる。自分も行ってみたいなどというと、すぐにでもお誘いを受けそうだ。山に登る自信もないのに軽佻なことはいえない。記録を見せてもらって感動だけをメールで伝えた。

 「山道は道幅も勾配も周りの景色も常に変わるから面白い。1週間前とは、昨日とは、見える景色が変わっているというのが楽しいです。自転車で走っているのもよく似た感覚があるのではと想像します。これが自動車だと「道」ではなく、早く目的地へ行くための「道路」であることが多いですよね。(略)ゆっくりも悪くないな、乙なものだなと思います。」という返信があった。

 なるほど、「道」を行く楽しみ。径を捜し、道を行き、少しは倫にも気づく。同感です。ゆっくりも悪くないです。乙なものです。

午後の通り雨を
やりすごして
また走り出す

同じ道を行っても
出会うものがちがったり

同じ場所を目指しても
辿る道がちがったり

あなたにはあなたが
わたしにはわたしが
見ようとするもの
あなたにはあなたに
わたしにはわたしに
見えてくるもの

同じ道を行っても
あなたにはあなたの道
わたしにはわたしの道

2024年8月24日土曜日

瞬間記憶能力

  久しぶりに通った道で、春先にお母さんと一緒にいる男の子と出会ったのを思い出した。赤いメルセデスベンツの小さな自動車に跨っていた。ぶつかるといけないので、早くに停まってすれちがうのを待った。男の子は脚で蹴って進むおもちゃの自動車の座席の下に、捕まえたモンシロチョウを入れていた。見せてくれたチョウの姿がはっきり残っている。

 山の中の下りのコーナーへ速いスピードで進入するときに、40年も前の情景が突然現れた。前を走っているオートバイに乗った友人の左足が見えた。記憶に残っていた瞬間の動きだ。左足がギアのペダルの操作をミスして、後輪がわずかに横に滑った。確かにこのコーナーだった。自転車で走っているにもかかわらず、オートバイに乗っている瞬間が見えた。

 瞬間記憶能力(カメラアイ)とは、カメラのように一瞬のできごとや情報を記憶する能力をいう。発達障害の一部の人々(特に自閉症スペクトラムのある人)は、このカメラアイの能力を持っていることが報告されている。脳が情報を処理する方法が異なるためで、視覚的な情報に敏感で、一見しただけで複雑なパターンや細かいディテールを記憶することができる。

 優れた芸術家の中には、カメラアイの特性を持っている人がいる。山下清、三島由紀夫などが例に挙げられる。洞察力や細部への注意は、革新的な創造性を発揮する。半面、この能力が強いと、他のスキル、特に社会的コミュニケーションや多くの情報を同時に処理する能力に影響を及ぼすこともあるといわれる。

 自転車で走っている情景がはっきりと残ったり、もうせんに走った場所の記憶が鮮やかに蘇えったりすることがある。自分が特に瞬間記憶能力に優れているとも思えない。自転車のほどよいスピード感や高揚感が、記憶を定着させ、あるとき不意に再生させるのだろうか。不思議な現象ではある。

折り重なった
記憶の襞を辿る

夏の記憶が
海に向かって
伸びている

記憶の川が
日照りに乾いている

涸れた川の底に
遠い記憶が
張り付いている

涸れた川の底を
遠い記憶を捜して
遡ってみる


 

2024年8月17日土曜日

『Always 三丁目の夕日』

  懐かしい映画である。というか、懐かしさを醸し出している映画である。三部作を改めて全編観た。映画に描かれる昭和の夏は今ほど暑くなかったのか。夏の場面では扇風機が主役で、冷蔵庫は氷の塊を使用するものが登場する。

 時代設定は東京タワーが完成間近の昭和33年。物語の中心になる鈴木オートという自動車修理店の長男一平は下町の小学生だから私と同い年くらいだ。映画の中の一平と私は同じ時代を生きている。

 映画が撮られたのは平成17年なので、後付けでこしらえた「昭和」感は否めない。石原裕次郎や小林旭が活躍する本物の昭和時代や、『男はつらいよ』第1作のころのようなありのままの「昭和」とは少し違う。あえて作った「昭和」だからこそ強調されていて面白いところも随所にある。

 中学を終えた星野六子は集団就職で上京し鈴木オートに勤める。履歴書の特技欄には自転車修理と書いていた。個人経営の社長は自動車修理が得意だと早合点して採用を決めた。

 車の修理は全くできない六子に出番が来る。ブレーキが効かずに町内を暴走する煙草屋のおばさんの自転車を修理するシーンだ。前ブレーキのロッドを六子が器用に調整する。前ブレーキの調整だけというのは、いかにもという感じもがするが、懐かしい情景だ。ロッド式ブレーキの自転車を見ただけで十分に感動する。

 『続・三丁目の夕日』では、一平が大人用自転車に三角乗りをして登場する場面がある。フレームの間に片脚を入れる乗り方だ。今では知らない人が多いだろう。ほんの短いシーンだが、これだけで時代を共有できる。自転車に興味がなければ見落としてしまいそうだが、まちがいなく「昭和」の時代を表現するのに自転車が一役買っている。

時代をとおり抜ける

時代を映している

時代を刻んでいる

時代を懐かしんでいる

自転車を透かして
時代を見ている

2024年8月10日土曜日

自転車屋さんごっこ

  走行会の仲間の一人が、自転車の調子が良くないという。クロスバイクの変速が上手くできない。ハンドルにはガタがある。その場で変速機のワイヤーの引き具合を調整して、多少は調子が戻ったが完調ではない。

 最近、他のメンバーも変速機の様子がおかしいので自転車屋さんに愛車を持ち込んだ。変速機を取り付ける部分(リアディレーラーハンガー)が曲がっているということで修理してもらった。幸い、私がディレーラーハンガーの修正器具を買ったばかりなので、自転車屋さんを真似て二人でハンガーの歪みを調べ、変速機を調整し直そうということになった。

 ホイールの振れ取りをして、ハンガーの歪みを調べた。歪みはないので変速機を取り付け直して、ワイヤーの張り具合を丁寧に調整すると快調に変速するようになった。ハンドル周りは分解しグリスアップをして、ガタのないように組み直した。

 やっていることは素人作業で、自転車屋さんごっこである。見様見真似で、それらしく修理や調整をしているが、ごっこ遊びの域を出ない。とはいえ、乳幼児のごっこ遊びというのは、大きな意味があるらしい。子どもの成長にとっては大事な遊びなのだ。

 ごっこ遊びを通して、子どもはいろいろな力を身につけていく。1相手の立場になって考える力、2想像力・創造力、3表現力、4コミュニケーション能力・協調性、5観察能力・思考力、6社会性・ルールを守る力。どれも生きる源になる力だ。

 仕事を離れ、古稀を過ぎ、家で気ままに過ごしていると、幼いころにごっこ遊びで培ったはずの大事な力が衰える。趣味とも遊びともつかない自転車屋さんごっこで衰えた力が回復してくれたらありがたい。それで修理代も節約できれば一層の儲けものだ。


ごっこあそびに
余念がない

ままごとや
まねごとが
いずれは
ほんものの
力にかわる

垣間見ていた
夏空が

ほんものの
夏空になる

夏空の暑熱が
地を焼き
水を焼き
自転車を焼く




2024年8月3日土曜日

21,758回

  「あなたのスタイルに合った素敵なブログを作りましょう。使いやすく、自在にレイアウトを変えられます。背景画像も豊富なテンプレートから選択するか、自分で新しいテンプレートをデザインできます」

これは、Googleが提供している「Blogger」というブログ作成ツールの説明である。4年半前にブログを作ってみようと思いつき、やり方を調べた。無料で簡単にブログのページが作成できるというBlogger」の謳い文句に魅かれた。

 「ブログに残しておけば思い出も色褪せません。投稿や写真などのコンテンツはすべて Google の安全なシステム上に保管されます」

 目的にピッタリだ。愛用する自転車の記録、自転車に乗って考えたこと、それに自転車のある風景写真。これを安全に保管し公開してくれる。自転車写真日記永久保存版である。

Blogger に組み込まれている分析ツールを使って、アクセス数の多かった投稿を特定できます。分析結果を見ると、読者がどこからアクセスしていて、何に興味を持っているのかがわかります」

 ブログの舞台裏がこれで解る。分析ツールでアクセス数を見ると、731日現在で21,758回。アクセスがあったのは日本国内からの1.67万件。他に多い所では、香港1,717、アメリカ合衆国1,039、シンガポール751、ドイツ298、フランス229回などとなっている。外国からのアクセスは何かの拍子に間違ってアクセスされた可能性がある。

 これまでに記事を254回更新しているので、1回につき平均85人がアクセスしてくれていたことになるが、同じ人が何度も読んでくれたことも考えられる。それにしても、結構な数ではある。

 「Blogger」は簡単にブログのページの作成ができて広告も入らない。簡素なのはいいが更新日のカレンダーやアクセスの回数カウンターが貼り付けられない。閲覧してもらうには不便であるが、問題はそれ以外にある。4年半経っても記事に進歩がないどころか、むしろマンネリ化していることが問題だ。さて、今後どうしたものか、猛暑の中で考えている。

流れていく
時節を見送る

流れて来る
時節に乗る

乗り切れないで
眺めている
こともある

いつもの場所で
夏に出会い

いつもの場所から
夏をのぞく