冬をむかえる

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'25.1.22 山を見て走る

2022年10月29日土曜日

こしらえる

  もう6年も前になるが、車を買い替えた。自転車を積めるように商用車にした。それまで乗っていた4ドアのセダンでも、工夫をすれば自転車を載せることはできたが、商用のバンは自転車の積み降ろしが至って楽である。

 その車を鈑金修理に出すことがあった。車の荷室を覗き込んだ修理屋さんに、「これは自分でこしらえたのか」と尋ねられた。何のことかというと、車の荷台には自転車を固定するスタンドが備え付けてある。自転車を積み降ろしするときに、荷室の内装が傷つかないように内張がしてある。そのことをきかれたのである。ついでにいえば、荷室にはカーオーディオ用のスピーカーを増設し、自転車の工具を収納する箱も準備してある。

 「こしらえる」とは言い得て妙である。自分で作ったわけではない。いろいろなものを組み合わせて、使い勝手のいいように作り変える。「しつらえる」という意味に近いかもしれない。

 今では死語になっているが、嫁入り道具をそろえることを、婚礼の「こしらえ」と言っていた。新しい生活に必要なものを買い揃え、準備をすることだろう。こしらえごとといえば、つくりごとや嘘という意味になる。こしらえものは、模造品やにせもの。さて、「こしらえる」というのは、いい意味にとればいいのか、あまりよろしくない意味なのか、難しいところへ迷い込む。

 「こしらえる」という言葉には、工夫を凝らし、苦労をして形を整えるというような響きもある。自分の気に入るようにしつらえていくという意味合いを感じる。愛用の自転車に何かと手を加え、気に入った部品を組み込んで、快適に走れるようにする。単に愛車を作るのではない。あれこれ考えて「こしらえる」という言い方が似つかわしい。そこには多少のこしらえごとやこしらえものが混じっていたりもする。

 

いつも何かしらこしらえることを思っている

孫の大好きなこの電車には
自転車でもよくすれちがう

そこでひとつこしらえてみた

たまには自転車を降りて遊ぶ

自転車も自転車に乗る身体も
少しずつこしらえてきた

長い人生だって
こしらえごとや
こしらえものも
織り交ぜながら
こしらえてきた





2 件のコメント:

  1. こしらえるという言葉は、まさにMARIOさんのためにある気がします。

    単なる既製品ではなく、自分で創意工夫を凝らしながら使い勝手がよく、さらに見た目も整えてオリジナリティをもたせる。
     
    技術はもちろんのこと、人間としての温かみを作品に注入していくところが素晴らしいと思います。

    お孫さんにつくられた北勢線の乗り物、本物そっくりだけではなく、けがをさせないように細部にまで安全面を意識してみえるのが、伝わってきます。
     
    手を尽くしているというのが単に作るだけのものとの違いかなと思います。
     
    技術の先生とはいえども、よくこんな作品を仕上げましたね。

    お孫さんが大人になっったとき、昔、おじいちゃんに作ってもらったんだよと、自慢できます。

    それまで、ぜひ保管してほしいですね。

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  2.  孫のおもちゃまでお褒めにあずかり光栄ですが、現物は写真ほどうまくはできていません。写真は七難を隠してくれるようです。

     自転車にばかり乗っていては、爺ちゃんの存在がうすくなりますので、ときどきは孫の相手もしなければいけません。年上の孫には、凧などもいくつか作りました。出来は拙くても、手作りのおもちゃは喜んでくれるので、作り甲斐はあります。

     自分の子どもにもそうしてきましたが、孫たちにも、自分の思っていることを押し付けたり、無理強いしたりしないように気をつけています。

     とはいえ、孫たちが自転車に興味をもってくれて、一緒に遠出ができれば面白いだろうと、密かに期待はしているところです。

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