冬をむかえる

冬をむかえる
'25.1.22 山を見て走る

2023年1月14日土曜日

起承転結

 仕事柄たくさんの人の前で話す機会が多かった。中学校の校長をしていたころには、学校の儀式的行事、卒業式や入学式などをはじめ、全校集会でも話をした。

 人の前で話すときは、必ず原稿を書いた。話し言葉で原稿をつくっておけば、途中で話題がそれても原稿にもどればいい。何を言っているのかわからないという混乱は避けられる。短く話言葉で書く原稿にも、起承転結とか序破急という、文章の構成には気をつけた。

 序破急は、もともとは雅楽の曲の構成である。「序」はゆっくりとスタートしていくパート、「破」は静けさを破り拍子が加わる。最後の「急」は、クライマックスに向けてテンポを上げて締めくくる。起承転結でいえば、「起」と「承」が「序」、「転」が「破」、そして「結」が「急」にあたる。形式にこだわりすぎると面白味がないが、自分の言いたいことだけを思いつきで並べても、聴き手や読み手を困らせるだけである。

 自転車に乗る時にも起承転結がある。自転車で家を出る。今日はどこへ行こうか。コースを決めていないことが多い。走りながら風の向きや雲の様子を見て走る方角を決める。あらかじめコースを決めてあるときも、自転車と身体、双方の調子を確かめながら走り始める。徐々に体が温まり、その日のペースが決まる。「起・承」であり、「序」である。

 途中、思いがけない急坂に苦しむ。知らない場所に迷い込む。突然開ける素晴らしい景色に息を呑む。写真におさめたりする。小休止の場所を決める。思わぬ人に出会ったりする。これは「転」、「破」。

帰り道を急ぐ。または、ゆっくりとその日の楽しみをサドルの上で反芻する。無事に家に着けば、簡単に自転車の点検くらいはしておく。「結」であり「急」ともいえる。

 形にこだわりすぎることはないが、形に当てはめると判りやすいことや整理のつくことも多い。ただし、この文章が形にかなというと、しい

新しい年を迎えてめでたい


新しい年を走り始める

山の声を聞いて

道に誘われて

見慣れた場所にも
新しい景色を見る

季節のなかの
1日のなかの
自転車の上の
起承転結


2 件のコメント:

  1.  こんにちは。さすが立派な校長先生は、ひと味もふた味も違いますね。卒業式や入学式は、それぞれの校長先生が原稿を書いてお話されているなあと感じていました。
     しかしMARIOさんは、朝礼など全校集会においてもきちんとその時々に応じた内容を、それも起承転結を考えて話し言葉で原稿を作るとは素晴らしい限りです。おそらく生徒たちは、朝礼での校長先生のお話を楽しみにしていたことでしょう。私の記憶にある過去の校長先生のお話といえば、ダラダラと長話をして(早く終わらないかなあ)とほとんどの生徒が思う内容でした。
     雅楽にも序破急という起承転結に通ずる構成があるのですね。おまけに自転車の一日の走りにも、それを意識されているとは凡人の私には到底無理です。今回も勉強させていただきました。ありがとうございます。

    返信削除
  2.  ちょっと買いかぶりがあるようで、たいそうにお褒めをいただくのは恥ずかしいかぎりです。

     自転車の上の「起承転結」は謂わば後付けのようなもので、いつも考えているわけではありません。自転車に乗っていれば、こういうとらえ方ができるのではないかという、思いつきです。

     集会の話にしても、自分の話は面白くないだろうから、せめて簡潔に、とまとめていただけのことです。式辞や集会の講話など、誰がやっても退屈なものだと思います。ただ、話の内容を褒められたことはなくても、「短くていいよ」と生徒たちから褒められたことはありました。その程度です。

     というわけで、ブログもそれほど中身のあるものではないと思います。自転車に乗っていて、思うことや感じることを、写真とともにまとめておきたい。その程度です。

    返信削除