冬をむかえる

冬をむかえる
'25.1.22 山を見て走る

2024年5月25日土曜日

専用工具のこと

  長く使って伸びてしまったチェーンを交換したい。古いチェーンを外す、新しいチェーンを買う、それを取り付ける。少し前に書いた象と冷蔵庫の例から行けばそれだけのことである。

 ところが、チェーンをどう切るか、どう繋ぐかという問題がある。ミッシングリングという部品の使ってあるチェーンは、プライヤーなどを工夫して使えばチェーンを切ったり繋いだりできる。ピンタイプのチェーンだと、チェーンカッターという専用工具がなければ手も足も出ない。

 タイヤのパンク修理をする。タイヤを脱着するためにドライバーをリムとタイヤの間にねじ込んで、修理どころかチューブをよけいに傷めたことがある。タイヤレバーという3本セットのスティックを使えば簡単にタイヤの嵌めはずしができることを知らなかった。難儀していた作業が楽に出来てしまう。わずか500円くらいの専用工具である。

専用工具の有難味。作業の内容に合わせて工具が考案されたのか、工具が出来たので新しい部品が開発されたのか、どちらにしても便利に使える工具があるものだ。

自転車の専用工具はそれほど多くない。すべての整備や分解組立ができるという工具セットが数千円で手に入る。ただし、安価すぎるものは粗悪品ということも考えられる。

 自分では使えないし使わない工具まで組まれたセットを買うのは勿体ない。品質がいいと思われる工具を一点ずつ買っていたら、専用工具セットと同じくらいのものを揃えることになってしまった。

 めったにしない部品交換のために買った工具もある。頻繁に使わない工具を自分で買うよりは、自転車屋さんに整備や交換をお願いした方が安上がりで確実かもしれない。 

 車輪の振れを解消したり、ホイールの組立てをしたりするための振れ取り台という専用工具を買うか、自転車屋さんに手間賃を払うか、目下思案中である。

金属を懐柔する
工夫と部品の連鎖

これだけでは
何もできない
物たちの連携

組み上げて
回転を支え
走り始める

形が決める仕事
仕事が求める形

風になって走るために
手入れを繰りかえして
愛車を応援しつづける



2024年5月18日土曜日

スポークの話

 自転車の整備がうまくいって、走りが快適になったのを体感するのは嬉しい。整備に関する本を読んだり、YouTubeの動画で整備のやり方を調べたりしてみる。自転車安全整備士の資格取得にはどんな技能が必要なのか。技能検定を受けるつもりで教本を取り寄せて分解組立や整備調整を試してみた。

 学科試験の過去問にも挑戦してみた。実務経験が2年ないと技能検定が受けられないので受験は諦めている。過去の筆頭試験には正解できそうだし、実技検定に求められる内容もほぼクリアーできそうだが、一つだけまだ試していないことがある。 

 自転車のホイールの組立である。自転車の車輪をよく見ないとホイールがどうやって組み立てられているのか判らない。

 自転車の車輪はいくつかの要素で成り立っている。タイヤとチューブ、それをはめ込むリム、中心部の車軸。もう一つ大事な部品が、スポークといわれる針金のような部品だ。リムと車軸をつないで正確な円形を保持している、車輪が回るとキラキラかがやく。

 スポークがなければ、リムと車軸はつながらない。タイヤとチューブを装着しただけのリムは、食べるところの少ない痩せた巨大なドーナツだ。

 少ないものでは12本くらいから多くて36本ほどのスポークが車軸とリムをつなぐ。均等に引っ張りあって、車輪を真円に近づける。スポークは、綾取りの紐のように交錯し、あるいは放射状に並んで車輪のバランスを保つ。

 クロス組とかラジアル組とか、4本取りと8本取りとか、スポークは編み物のように組まれ、車輪の回転を支える。自転車の美しい姿も支えている。スポークを編んでホイールを組む作業は微妙で、かなりの技術がいりそうだ。自分でもやってみたいが、深みにはまると自転車に乗る時間が減りそうで二の足を踏んでいる。

銀輪に風薫り

銀輪に風輝いて

銀輪の向こうに
山並みがのびる

組み上げて
均衡を保ち

引きあって
張り合って
高みをめざす




2024年5月11日土曜日

象と冷蔵庫

 象を冷蔵庫に入れるためにしなければならない3つのことは何か。ラジオで聴いたクイズだったか、雑誌で見かけたものだったか。いつのことかも忘れた。この問いとその答えが印象に残っている。

 象を小さくしたり、冷蔵庫を大きくしたりしていると、やるべきことがどんどん増えて、3つだけではおさまらない。答えはいたって単純なものだった。冷蔵庫の扉を開く、象を冷蔵庫に入れる、そして冷蔵庫の扉を閉める。象や冷蔵庫の大きさは問わず、兎に角3つのことをすれば、確かに冷蔵庫に象を入れることはできる。

 前回、イギリスへ行く計画を書いたが、それを実行するのもこれと同じことだ。イギリスで自転車に乗るためには、確かにこまごまとした準備や心構えが必要かもしれないが、イギリスへ行く、自転車を手に入れる、そしてそれに乗る。3つのことをすれば、イギリスを自転車で走ることができる。

 年齢のせいか、新しいことを始めるのをつい後込みする。日々の決め事を実行するだけでも面倒に思えることがある。そんな時には、象と冷蔵庫の話が励みになる。細かい条件は度外視して、とりあえずやってみようとすることである。

 寒い日に自転車に乗るためには、寒くても自転車を外に出す、自転車にまたがる、そして漕ぎ出す。それだけだ。

 自転車の故障を直すためには、故障した部品を外す、新しい部品を準備する、そしてその部品を取り付ける。それでよい。

 何をするにも、ものごとがそれほど単純に運ばないのはわかっている。肝心なのはやってみようとすることだ。象の体に合わせた巨大な冷蔵庫を作るか、冷蔵庫に入る可愛い象を捜すか、それとも、合成写真でごまかすか。実際にやろうとすれば細かい条件もつきまとうが、その気になれば解決の糸口が見つかるはずだ。 

自分の道を決めるには
いろいろな道を訪ねる

まだ人が通らない
新しい道を見つける

見つけた道を
自分の道にする

今いる場所でやすらぎ
なりわいを楽しむためには
立ち位置を決める

前方を見定める

思いきり楽しむ

※写真は開通前の道路で撮影


2024年5月4日土曜日

自転車でイギリスを走る

  一昨日、連絡をしたいことがあって、知人にメールを送った。「来年の3月までパリにいます。近いうちにパリに来る予定があればご連絡をください」という返信があった。

 昨年は、フランスのトゥールーズに住む教え子が一時帰国したので久しぶりに会った。フランスへ自転車に乗りに来てくださいと、いとも簡単に誘ってくれた。隣の愛知県か岐阜県へでも行くような気軽さで誘ってくれる。

 もう30年以上も前になるが、3年間ロンドンの日本人学校で仕事をしていたので、ヨーロッパはそれほど遠い所でもない。それを知っている人は気軽に誘ってくれる。フランスではなくてイギリスへ自転車に乗りに行く計画は、とっくにできている。

 大まかな計画は、イギリスへ行く。ロンドンで自転車を買う。イギリスの各地を自転車で巡る。日本へ帰る。それだけである。あとは、失効しているパスポートを準備して、飛行機の便を選んで乗るだけだ。 

 チャットGPTに、「ロンドンで自転車を購入し、イギリス国内を自転車で旅する方法」を訊いてみる。

 「自転車の購入: ロンドンでは、自転車専門店や大手スポーツ用品店、オンライン市場などで自転車を購入することができます。また、中古の自転車を求める場合は、GumtreeeBayFacebook Marketplaceなどのオンラインプラットフォームをチェックしてみてください。」と教えてくれた。

 さらに、チャットGPTは安全装備の用意・地図やナビゲーション・観光ルートの計画・キャンプや宿泊施設の予約など、項目ごとに懇切丁寧に解説してくれた。どれも普段からおなじみのことばかりだ。「イギリス国内での自転車旅行では、交通ルールを守ることが重要です。左側通行で、信号や標識を守りましょう。」と最後に念押しまでされた。

 イギリスに行ってしまえば、日本国内を自転車で走るのと大して変わりはないだろう。あとは、さて、いつになったら出発できるのか。簡単なようで一番難しい問題が残っている。


五月晴れる
紫雲英野に蝶

風に誘われて

光に誘われて

緑に誘われて

力をためたら
旅をはじめる