生きている間には、いいときも悪いときもある。平坦な道ばかりではない、ときには険しい道のりが待ち構えている。人生の区切り、学校の卒業式や結婚式の祝辞でよく聴くフレーズである。このあとには必ず、知恵や勇気でもって、あるいは力を合わせて、苦しいときを乗りきっていってほしい、そうすれば道は開けるという常套句が続く。お約束のような言い回しであるが、他に気の利いた言い方はないものか。
かくいう私も、職業柄入学式や卒業式の祝辞を述べる機会があったので、よくそんなことを言った。若い人の結婚披露宴に招待されたときにも、同じようなことを口にした。
自転車に乗るときも、これから進む道を見極めるのが難しいことがある。コース選びは楽しみだが、ときには一向に面白くない道に踏み迷う。思いもよらない険しい道に遭遇することもある。前方の路面の状況を見極めて走るのが意外に難しい。
夏の生い茂った木々の枝が道路に濃い影を落していたりすると、路面の凹凸を隠してしまう。サングラスをかけていると、さらに見づらい。木漏れ日の下を軽快に駆け抜ける、というと気持ちが良さそうだが、意外な落とし穴がある。木の葉のトンネル。涼しそうだが、路面は暗くて見えにくい。
オートバイや自動車は、サスペンションが道路の凸凹をいなしてくれるが、自転車の場合は直撃を受ける。突然、道路の突起に乗り上げたり、大きく口をあいた穴に前輪を落としたりしたら、まちがいなく転倒。タイヤが極端に細いので、側溝の蓋のすき間にタイヤがはまり込んだり、車の轍(わだち)に平衡をうしなったりもする。路面の状況を見誤ると危うい目にも合うが、それを見定めて走ることも楽しみの一つではある。
追記 私のスピーチ考
卒業式の式辞や結婚披露宴のスピーチをすると、「いいお話でした」と褒めていただくことがある。もちろん社交辞令である。どんなところが良かったですかなどと、お世辞を真に受けて訊こうものなら、相手は内容をほとんど覚えていなくて、困らせてしまうことになる。申し訳ないことではあるが、自分の卒業式のときの校長式辞や結婚式の主賓からいただいた祝辞の内容など覚えてはいない。
卒業式の式辞や結婚披露宴のスピーチをすると、「いいお話でした」と褒めていただくことがある。もちろん社交辞令である。どんなところが良かったですかなどと、お世辞を真に受けて訊こうものなら、相手は内容をほとんど覚えていなくて、困らせてしまうことになる。申し訳ないことではあるが、自分の卒業式のときの校長式辞や結婚式の主賓からいただいた祝辞の内容など覚えてはいない。
ということであれば、スピーチはその場の印象が大事。聞く人の耳に快く響き、絶対に長すぎず、極端には短すぎない。漢語はさけて和語を使う。話がまだ続きそうなところで突然幕を引く。格調よりも心地よさ。式辞やスピーチの原稿を書くときには、そんなことに配慮したつもりである。ちなみに、漢語でなく和語を使うと、「配慮した」は、「気をくばった」ということになる。ぐっとやさしい。
行く手の路面を見定めるのも、聴き手の関心を見極めるのも、これでなかなか難しい。
行く手の路面を見定めるのも、聴き手の関心を見極めるのも、これでなかなか難しい。
![]() |
木々の影が濃い影を落とす
路面の濃淡が凹凸を隠す
さわやかに、軽快に走っていてもご用心!!
|
思わぬ道に迷い込む
光が魔法を使う
魔法にかかると路面の様子や方向さえも見失う
|
かなり登ってきた
うっかりすると、下の渓流へ転落しそう
熊が怖いので、ハンドルに鈴をつけている!?
|
険しいだけならまだいいけれど…
通せんぼではどうしようもない
せっかく登って来たのに、引き返せと言われても…勘弁してほしい!??
|
ほとんど使われていない高速道路の側道
路面新品、しかも平坦。貸し切りロード!!?
「未来に向かって輝かしい道を歩む!!」
これも、華麗で偉大な常套句である!!!
|
今回の内容もとても面白いというか、真剣なようでお茶目な部分もあり、人間味あふれるお話で、また一歩MARIOさんに近づけた気分です。校長式辞や結婚式のピーチでは、表向きの表現の中に隠れた一面が、追記のスピーチ考に書かれていて、ホッとします。
返信削除また、自転車での走りの中で出くわすさまざまな状況をクリアしていくところが一つの人生の縮図だと見立てて、結婚式や卒業式の祝辞と絡ませるなど、まことに上手な文章構成で、毎回感心するばかりです。どの写真も素晴らしいですが、今回は竹林のMTBとその挿入句が最高です。流石、詩人ですね。
アーカイブを見ると、あと少しで50号になりますね。ここまできたら、キリのいいところで単行本にしましょう。
毎回、ワクワク楽しく読ませていただきありがとうございます。。