冬をむかえる

冬をむかえる
'25.1.22 山を見て走る

2022年1月22日土曜日

車上の計算

 冷たい北風の吹く日が多い。自転車は向かい風にはからきし弱い。風の日に乗るには、身体にも気持ちも強さがいる。風に向かって、姿勢を低くして、ひたすらペダルを踏む。思ったようには進まない。

 気持ちが折れそうになるので、がんばりすぎないように他のことを考えながらペダルを踏む。昨日、風に向かって走りながら考えた。こんなにペダルを踏んでいるけれど、いったい、この自転車はどれだけ進んでいるのか。

 これは、簡単な算数である。だがこれは、高等な自転車の科学でもある。ペダルを1回転させると、自転車はどれだけ進むか。

 自転車の前のギアと後ろのギアが同じ大きさ、ギアの歯数は前も後ろも20()と仮定する。ペダル(実際にはクランク)1回まわせば、後ろのギアも1回転する。後ろのタイヤが1回転するということである。スポーツ自転車なら、タイヤの直径は普通70㎝である。タイヤの外周は円周率をかけて約2mなので、ペダルを1回漕げば2m進むことになる。1分間に50回ペダルを回すと100m進む。1時間なら6㎞走れる。時速6㎞である。

 前のギアだけを2倍の大きさ、ギアの歯数を40丁に増やす。ペダルを1回転させれば、チェーンが40コマ動き、後輪はそれに合わせて2回転する。ペダル1回転で2倍の距離を進むので、1時間に12㎞進む。この時、力は2倍必要になる。理科で習う仕事の原理だ。(実用車〔ママチャリ〕はペダル1回転で後輪2.5回転くらいに設定されているので、この組合せに近い)

 後ろのギアを半分の大きさ、歯数を10丁に減らす。前が40丁、後ろが10丁。ペダルを1回回せば、後輪はチェーン40コマ分噛合って4回転する。ひと漕ぎで進む距離が4倍になる。同じペースで1分に50回漕げば、1時間に24㎞進む。時速24kmである。パワーは4倍必要になるが、かなり速い。

 スポーツ自転車は、前に2、3枚のギアをつけ、後ろには10枚もギアを装備して、組合せを2030通りも選べるようになっている。実際には、4対1、3対1、2対1、それに加えて1対1と4通りのギアの組合せがあれば十分である。その間の細かい組合せは、チェーンがスムーズにギアに懸かるためのつなぎと考えればよい。

 マウンテンバイクの場合は、ギアの比率を前1に対して後ろを0.5くらいにできる(後ろのギアの方が大きい)ものもある。これだと、1時間に3㎞しか進めないが、ペダルの重さは半分になる。山を登ったりぬかるみを走ったりするには都合が良い。

 暗算をしながらペダルを踏んでいたら、向かい風の中を、いつのまにか10㎞程走っていた。計算に夢中になって、強風に逆らわないのはいいことだが、自転車の操作がおろそかになるのは危険だ。気をつけたい。

 因みに、計算しながら走っているときに使っていたギアの組合せは、2対1くらいで、10㎞走るのに、45分もかかった。これは1分間に何回ペダルを回したことになるのか。今度風の強い日に乗るときは、この問題を考えることにするか。


風が走る
川面は西高東低

やがて雪が来るか
風が強まる


里はみぞれ
山は吹雪いているだろう
自転車乗りたちに訊きたい
風も空気だと信じられるか

たし算とかけ算で
自転車に乗る

風が吹けばひき算
気持ちはわり算


前に進むのがつらくなれば
風の懐で休む


資料
クロスバイクの後ろのギアを改造
 ①交換後は後ろのギアの最小歯数が2丁減って
  より速く走れるようになったが力もいる
 ②交換後は後ろのギアの最大歯数が2丁増えて
  より遅くも走れるようになり力も軽くて済む
 ③実際に使用する組合せは青く塗ったギア











2 件のコメント:

  1.  今回のブログではギアチェーンの仕組みやギア比のことなど、わかりやすく書かれているので、私にもけっこう理解できました。さすが元技術の先生です。説明が理にかなっているというか、なるほどと頷いてしまいます。こんな先生なら真剣に授業を受けようという気になります。
     ギアの組み合わせ表をみると、全然必要ないというか使わないものがあるのがわかります。何事もそうですが、理屈を知ったうえで応用するとミスが少ないですね。
     私の学生時代、テスト直前になって慌てて丸暗記をして点数を取ろうとするため、本当のことが理解できていないから忘れていくのも早い。その場しのぎで成功することはありません。
     今回の詩もカッコいい。
    冬は川面も西高東低になる。 風も空気だと信じられるか。
    こんな発想やイメージは、一般人の私には無理です。
     

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  2. 理屈っぽいのはあまりよろしくないですが、自転車のように理屈が明快なものは面白いです。単純な乗り物なのに、思いの他に奥が深い。これが、自転車にはまってしまう理由かもしれんません。

     ほとんどの人がご存じで、取りたてて言うほどのことでもないようなことかもしれませんが、私は私なりの気づきを、記録のつもりで残しておこうと思っています。

     スポーツ自転車のギアは、消耗するとセットで全部を取り換えますが、人によっては全くというほど使わないギアもあるわけで、そのギアはほぼ新品のままで廃棄されることになります。そうならないような工夫がないものか考えています。よいアイディアをお持ちの方がいらっしゃれば教えていただきたいと思います。

     

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