スポーツ自転車には、初心者用からレースで使われるようなものまで、同じように何枚もの変速用ギアが使われている。安価なものと高額なものでは変速の性能に差があるものの、チェーンのかかるギアの組合せを変えて、スピードとペダルを踏む力を調整するというのは同じだ。
ギアの組合せを変える仕掛けが変速機で、理屈は自動車やオートバイに使われているものと変わりない。自転車では外装式といわれるギアが外から見える変速機が一般的で、クランク軸につけられた前のギアは外側ほど大きい。反対に後輪のギアは内側ほど大きい。前のギアには多くて3枚、後ろには12枚もギアが使われるものがある。
ギアを変えるというが、実際にはギアにかかるチェーンを内から外へ、外から内へと移動させる。チェーンを移動させるために、ディレーラー(直訳すると脱線装置)というチェーンをまたぐ装置をワイヤーで引く。ワイヤーを引けばチェーンは大きいギアへ移動する。ワイヤーを緩めれば小さいギアへチェーンが落ちる。
ワイヤーを引いたり緩めたりするには、ハンドルにつけられたシフターを操作する。変速機の主流は、シマノ、スラム、それにカンパニョーロという三大メーカーのものである。シフトレバーの操作に違いはあるが、どれも仕掛けは同じようなものだ。
変速機の仕掛けが判っても、変速が小気味よく決まるように調整するのは難しい。ワイヤーの引き具合とチェーンの移動範囲を調整用のネジで決める。ディレーラーの取付け位置も変速具合の決め手になる。
うまく調整された変速機を操作してみると、チェーンが大きいギアと小さいギアの間を蛇が体をくねらせるようになめらかに行き来する。手慣れた自転車屋さんなら、変速機の特徴も見極めていとも簡単に調整してくれるが、素人にとっては至難の業である。
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ワイヤーを引く ワイヤーを緩める 緊張と弛緩は 連続し繰り返す |
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引いたり緩めたりしながら 大きさが違っても一緒に行く |
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遠景に引かれる 立ち止まって はやる気持を緩める |
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ひとときの憩いが テンションを解放する |
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まっすぐ走る 曲がって走る 引いたり 緩めたりして 走って行く |
ギアの仕組みからギアチェンジのメカニズムまで、素人の私でもとてもわかりやすいです。ワイヤーを引っ張ったり緩めたりして、チェーンが上がったり下がったり。
返信削除すごく丁寧な説明で、自転車屋さんでも教えてくれない教えてくれないし、ましてや文章化するなど困難だと思います。
MARIOさんは技術と国語の先生であり詩人でもあるので、どんな相手にも納得できるお話ができるのでしょう。もう感心するばかりです。
初歩的な質問ですが、前が大きいギアのとき後ろも大きいギアにするとよくないと言われますが、チェーンがねじれた状態になるということですか。また、足の力がスムーズに伝わらずロスが生じるということでしょうか。
めったに前3-後ろ1という組み合わせはしないです。逆に前1-後ろ9という経験はありません。いろいろな支障が出てくるのでしょうね。
上り坂でギアを軽くしようとして後ろのギアを大きくすると、入りづらいのは、ワイヤーを引っ張るからですか。これが正解なら、私も多少はメカニズムを理解したのかも、です。自信はありません(笑)。
いつもコメントありがとうございます。丁寧に読んでいただくので、拙文でも理解をしていただけるということだと思います。
返信削除さて、ご質問の件ですが、素人なりの所見ということでお答えします。
本来、自転車のギアは前1枚、後も1枚で、直線上にチェーンが動いているのが一番ストレスがない状態だと思います。ギアから外したチェーン(装着したままでもわかると思いますが)を前後方向にたるませてみると自由にくねくね動きます。横方向(左右)に動かす場合は、硬くてほんの少ししかねじれません。
前のギアは一番外側、後ろにギアは一番内側にチェーンを掛けると、たわまない方向にチェーンを無理に曲げている状態になるので、チェーンは嫌がると思います。多段階変速でギアの枚数が増えて、ギアの組合せで幅が広くなったので、チェーンにとっては受難の時代ということでしょう。
前3-後1とか、前1-後9という使い方は、最もチェーンいじめの組み合わせで、前が3枚ギアなら
前2-後4~7くらいで、同じギア比が見つかります。
チェーンは回転方向には自在に動きますが、登り坂で車輪が滑らかに回転していなくて、脚の力がチェーンに大きくかかっているときは、チェーンは特にギアの間を横に移動するのを嫌がるはずです。坂道にかかる手前で、あまり踏む力がかかっていないうちにワイヤーを引いてやると、チェーンはあまりしぶらずに横移動をしてくれるのではないでしょうか。
チェーンをいじめると、チェーンが早く擦り減って、噛み合っているギアの歯も変な減り方をする可能性があると思います。
ワイヤーを引いたり緩めたり、変速機を操作するときは、チェーンがギアの間を動いているというイメージを持って、丁寧に操作するだけで、チェーンやギアを労わることになるような気がします。