冬をむかえる

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'25.1.22 山を見て走る

2025年2月1日土曜日

行かずに死ねるか

  石田ゆうすけ著『行かずに死ねるか!世界95000㎞ひとり旅』(2003年、実業之日本社)という本を読みなおした。加筆、訂正された文庫版(2007年)で読んだ。古い旅行記ではあるが今読んでも面白い。自分では絶対にできないことを追体験させてくれる。

 筆者は19957月にアラスカから自転車旅を始める。自転車に積む荷物は「バッグが6つ。キャンプ用具に防寒具、着替え、文庫本に辞書、カメラ、工具、薬、全部で40キロ以上はあるだろうか」。走り始めると自転車のコントロールがきかない。「『こ、これで走って行くんか』、これは考えていたほどロマンチックな旅じゃないぞ」。旅はこんな具合で始まる。

 北米大陸を抜けて南米ペルーに入った2年目には強盗に襲われる。銃を突き付けられ、死を覚悟する。「自転車だけは残してくれ」という懇願が通じて何とか生き延びた。心温まるいろいろな国の子どもたちとのふれあいや日本人の自転車旅仲間との出会いなど、エピソードに事欠かない。旅も5年目になるアフリカ、ギニアではマラリアに罹り、タンザニアのサバンナでは自転車でキリンを追いかける。

 旅行記の中の著者の独白は関西弁で親しみがわく。近所のお兄ちゃんが、ああだこうだ言いながら過酷な旅を続けているのに付き合っているようだ。命を脅かされるような目に何度も合いながら、「行くしかないわな」「無理せんでええよ」と言ってつづける旅を思わず応援したくなる。

 自転車旅の終盤は中東からアジアを走り抜け、75ヶ月、走行距離94494kmで幕を閉じる。訪問国87ヵ国、パンク回数184回、使用タイヤ37本。膨大な記録とそれが正確に残されていることに驚く。 

 先週、私の自転車の走行距離が10万㎞を越えた。自転車に乗りはじめて12年半になる。この本のような大冒険には比ぶべくもないが、まだまだ死なずに行ってみたいところもある。

人跡未踏の道に踏み込む危険
人の行き交う道にもある危険

未開の道を行く慄き
整備された道の危うさ

手なづけられた食料

いつでも手に入るという慢心

飼い慣らされた風景の中を
遠い野生を想って走る

少し遠出をする
想いだけはその先へ
海を渡っていく

2 件のコメント:

  1. べーえんべー2025年2月6日 15:47

     石田ゆうすけさんの自転車ひとり旅、これはぜひ読んでみたいです。MARIOさんの紹介文がまたお上手なので、よけいに読みたくなります。冒険心あふれる人間でないと、なかなか自分でやってみようという気持ちにはなれませんが、7年5ヶ月をかけて世界を回って体験したことは、とても興味が湧きます。自転車に関する数字だけをみても、びっくりです。パンク回数、使用タイヤ本数、走行距離などを正確に記録されているのは、この方の几帳面さを物語っていますね。

     つまらない疑問ですが、この長い自転車旅で生活費などはどうやって工面していたのか。87カ国も渡り歩くのだから。スポンサーがあったとしてもバイトなどをしないとやりくりが大変だっただろうし、異なる言語の中でコミュニケーションをどうとっていたのか。私ならパニックになりそうです。

     しかし冒険家たるもの、そんな不安より未知への憧れ・好奇心のほうが上回っていたのでしょうね。また、石田さんは将来設計図をどう描いていたのかも気になるところです。ぜひこの本を買って、そのあたりを読みとりたいと思います。まだ、本屋さんに置いてあるのでしょうか。

     ブログ表紙がリニューアルされましたね。タイトルに相応しいおことばで、格調高いです。

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  2.  自転車に乗られる人なら絶対面白い本です。そうでない人にも面白いと思います。もう私くらいの年齢になれば決して、若がえったとしても多分、体験のできないような旅です。
     
     文庫本は今でも手に入ると思います。困ったときのAmazon頼み、Amazonで翌日配送可能のはずです。ぜひご一読されることをお勧めします。

     石田さんの著作は他にも何冊かあります。ブログでは紹介できませんでしたが、気楽に読めて、しかも居ながらにして冒険に出かけられます。

     ブログのレイアウト、変えてみました。季節外れの衣替えのようなものです。格調高いなどと言っていただくと恥ずかしいのですが、引き続きブログをご覧いただければ幸いです。

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