長年秘密にしていて今さら言い出せなくなったことを、ここで告白しようというのではない。『今さら言えない小さな秘密』という映画の話である。
原作はジャン=ジャック・サンペの同名の大人の絵本。2019年にピエール・ゴドー監督・脚色、ブノワ・ポールヴールド主演で映画化されている。
主人公のラウル・タビュラン(ブノワ・ポールヴールド)は南仏プロヴァンスの美しい村の自転車屋。村人は自転車のことをタビュランと呼ぶくらいで、彼は自転車の代名詞なのだ。
その彼が実は自転車に乗れない。どんなに練習をしても乗れない。乗ろうとすると必ずこける。映画では、横ざまにこてんと倒れるシーンを子ども時代のタビュラン役の男の子が上手く演じている。
修理の名人、自転車の神様のような人が自転車に乗れない。この小さな秘密が、というより、タビュラン本人にも映画を観ている者にも大きな秘密だが、悲哀を感じさせ、事件を巻き起こす。
ストーリーもさることながら、映画に出てくる自転車がいい。できれば、自転車の登場するシーンを静止させて眺めていたい。タビュランの店に置かれている自転車、タビュランが修理した村の老婦人の自転車。
タビュランの子ども時代の自転車も成長して父親からプレゼントされた自転車も薄いターコイズブルーの素敵な自転車だ。持ち主に乗って欲しいと哀願しているようなたたずまいを感じる。自転車もそれぞれの役どころを演じている。
残念ながら、原作の絵本にはまだ出会えていない。町の図書館にも近くの書店にもない。テーマや筋書きを原作でも確かめてみたいが、自転車の絵がどう描かれているか、そこが一番興味のあるところだ。
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ここにいることは いつわりではない |
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ここにいることは ごまかしでもない |
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ここにいるということを だれにもいわないだけだ だれにもいえないだけだ |
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| いつわりでもない ごまかしでもない ひそかなとまどい |




今さら言えない小さな秘密とは、ヒマを持て余す高齢者にとって興味をそそられるお話です。今さらいえないことって、誰にもいくつかありそうです。
返信削除近所の喫茶店へモーニングに出かけると、大勢のお年寄りが世間話に花を咲かせています。1時間も2時間も、毎日よく話のネタがあるなと感心しますが、人に言えないほんの端っこでも散らかせたら、つまみがまた増えましょうね。
今さら言えない小さな秘密といえば、子どもの頃友だちに借りたものを返すのを忘れてしまい、ついつい延ばしているうちに気がついたら大人になっていた。その相手に会うたびに、おそらく相手も覚えているけれど言い出せないのだろうなと勘ぐったり。まあそんな秘密は、他にもいくつかあります。
さて、この映画はMARIOさんの上手なエスコートで興味津々、ぜひ観てみたくなりました。Primevideoで検索したら、レンタルでお金が必要とのこと。ほぼストーリーはわかりましたが、どんな事件なのかがとても気になります。
自転車に乗れない自転車屋さんって、実際に存在するのか、それも興味があります。とにかくこの映画は、お金を払って観る価値は十分ありそうです。
実は、原作の絵本をその後Amazonで見つけたのですが、他店の出品だからでしょうか、プライム会員なのに1,000円の配送料がかかります。2,000円の本に1,000円の送料はいかがなものかと思い、まだ注文していません。
削除ぜひ読みたいと思っていると、どこかでご縁があっていつか出会えるかしれないと期待しています。
映画の方は、映画館へ行くことを考えれば安いものだと思って、Amazonで400円払ってレンタルしました。コーヒー一杯よりも安いお値段で、人様の秘密がのぞけるといえば悪趣味に聞こえますが、なかなか楽しいです。
しかも、それが自転車がらみの秘密ですから。登場する自転車やその背景を観ているだけでも十分楽しめると思いますよ。