自分の家を中心に半径15㎞の円を描く。その中におさまる道は、どんな細い道も、舗装のされていない田んぼの中の道も、たいがい一度は通りぬけている。地図の中に通った道や面白い場所を書き込んでおけば、もっと正確に覚えておけたかもしれない。曖昧なところもあるが、記憶の中ではかなり多くの点や線がつながる。
面白い形の大樹や見晴らしのきく場所、通りぬけると気分の軽くなるような道や懐かしい家並みなど、気に入っているところがたくさんある。このブログにも「七つの池を巡る冒険」と題して書いたことがある。自転車に乗らなければ、死ぬまで行かないような場所が家から近い所にも点在する。
大きなことをいったが、よくよく探してみれば、知らない道だってあるだろうけれど、これまでに走った道をつなげば、迷うようなことはない。すべてを網羅したなどと思ってしまうと、好奇心が涸れるので、まだまだ足を踏み入れたことのない場所もきっとあるだろうと思っている方がいい。
半径15㎞を50㎞の円に広げると、さすがに小径に至るまでとはいえないが、幹線道路ならかなり走った。記憶をたどって走れば、ほとんどの道がよみがえる。何しろ、自転車で放浪するような走り方を初めて9年にもなる。義務教育を修了する年限だ。ほぼ一日中サドルの上で過ごした日もある。多少は道路事情や名所旧跡に詳しくもなろうというものだ。
遠くへ出掛けた帰り道は、多度養老山系と鈴鹿山脈の山の峰を目印に帰れば、家に帰り着く。曇っている日は、山が見えないので方向が判らなくなる。ランドマークがないと、西も東も皆目見当がつかない。そんな時は自分なりのやり方も発見した。民家の玄関はたいがいが南向きである。大きな窓は南側についている。これで、方角の見当をつけて走れば、半径50㎞圏内は自分の庭も同然である。
日帰りの自転車旅なら、実用自転車、スポーツバイクを問わず、面白いコースを選んで、いか様にも道案内ができると密かに思っている。パンクや変速機の不具合くらいは、応急処置程度の修理ならお手伝いもできる。
2時間で、平坦な道を通って、梅を見に行く、桜を探す。紅葉狩りをする。多少は坂道があっても、見晴らしのいい場所を駆けぬける。半日かけて、知らない町まで出かける。裏町の路地を探訪する。あるいは、1日走って、海を見に行く。県境を越えて、大きな河を上流へとさかのぼる。ご希望に合わせて、どなたでも、どんな場所にでもご案内いたします、と看板を出しても偽ることにはならないだろう。
ただし、一つだけお断りしなければならないことがある。当方、脚力には自信がないので、ゆっくりゆったりとしたペースで、たっぷり休憩も取りながらのご案内となります。
休日の朝 今朝は通勤電車に乗らない 自転車ででかける |
休日には時間をかけて 川面に映る空を辿って 遠くまででかける |
休日の昼下がり 船溜まりの船たちが 談笑している |
休日の遅い午後 水面に光る時間の粒子を数えている 数え終えるころには夕暮れが迫る |
休日は夕暮れまぢか 静謐は樹々をつたっておりてくる 庭は音のない光につつまれる |
休日も黄昏どき 残り火が足許にちろちろと燃えていて 曼殊沙華パーティーは終焉をむかえる |
半径15㎞圏の道はほぼ網羅しているとは、驚くしかありません。おそらくこんな人は存在しないのでは、と思えます。自分で目的を決めて地図上の道を順に潰していくのは、機械的・義務的作業でつまらないし、やらされている感が否めないです。
返信削除MARIOさんは全く違っていて、子どものころからの冒険心や探究心が新しいものを知りたい、見つけたいという衝動を搔き立てるのでしょう。ふと気づいたらほとんどの道を走っていたんだと思います。
初めての土地、入ったことのない路地とか確かに興味があるし、思わぬ発見やあっと目を引く景色に出くわすと、不思議な感動を覚えます。
同じ道を走っていても、目に映る街並み、野に咲く草花、遠くの山々、すべてに変化があります。
自転車でしか味わえない世界があるのでしょうね。
MARIOさんのように楽しみながら自然と一体となって自転車に乗ることで、毎日をエンジョイし満足の得られる生活を送るのが、私のあこがれです。
遠出をしたときの帰り道、初めての土地では心細くなります。そのときのランドマークで、民家の玄関の佇まいから南方向を判断するとは、感動しました。これはいい方法ですね。
さて今回も、写真と添えられた詩にはロマンを感じます。私は昔から詩に興味をもったことはなかったですが、このブログにみられる画像と詩には、心の琴線に触れるものがあります。
これからもMARIOさん独自のペースで、ほっと一息つける楽しいブログをおつくりください。
毎度のことながら、コメントありがとうございます。
返信削除同じことを長い間つづけていると、思わぬことがつながってきたりします。15㎞圏内完全網羅というのは
ちょっと大風呂敷を広げたかなと思わぬでもないですが、それでも、まず知らない道はないように思います。
方角を知る方法など、他の人も既にご存じのことなのでしょうが、自分で発見した気になって一人悦に入っているのもいいものです。
歩くのは遅すぎる、自動車やオートバイでは速すぎる。自転車は季節の移り変わりや世間の様子を眺めてあるくにはちょうど良い速さかもしれません。つくづく、いいものに出会ったと思っています。自分のペースでゆっくりと、自分勝手なものの見方で我儘に、自転車を楽しみたいです。