冬をむかえる

冬をむかえる
'25.1.22 山を見て走る

2023年2月25日土曜日

冬の桜

  桜色のスイーツや桜の香りのデザートが売りに出される。ご近所の自転車に乗る人たちと連れ立って花を見に行くのを、寒いうちから心待ちしている。多少気が早いが、我が町の桜の見どころを、珍しい地名など紹介しながら巡る。

 東員町役場をかわきりに、すぐそばを流れる()(がみ)川右岸の桜並木を辿る。戸上橋を渡ったところで寄り道をする。二軒屋公園という小さな公園に大きな桜の樹がある。寄り道を終えて、川沿いの並木にもどる

 並木を通りぬけ、少し離れた鳥取神社の桜を訪ねる。ここでは桜の開花と時期を同じくしてイヌナシの巨木が白い花をつける。再び寄り道をして、笹尾中央公園の満開の桜を楽しむ。円形競技場の観客のように池を囲んで桜が咲く。鳥取神社にもどり、藤川に沿って花の下を走る。やがて(あの)()の桜堤が左手に見え始める

 穴太からは南へ方角をとる。神田池の桜も見ごろを迎えている。念仏大橋で員弁川を渡り、中上から()狐子(ごじ)川に沿って咲く花見ながら、(なが)(ふけ)にはいる。集落センター脇の小川沿い奥へ入ると、ひっそりと桜の木がつづく。花を見に訪れる人もないような静けさここからは県営北勢中央公園の桜が近い。広い公園には桜色の雲がたなびいているかと見まがう。

 桜巡りは(みなみ)大社(おおやしろ)を流れる山神川の桜並木で終焉を迎える。大社橋に出て、たもとの桜を見ながら橋を渡り、前方に北大社の長伝寺のを仰ぐいつの間にか15㎞ほど走った自転車旅を終えて町役場にもどる。

 ここに桜の樹、あそこには並木。ずっと向こうにつづく桜の堤。春、いっせいに居場所を明かす桜は、今はまだ、極寒に耐えている桜だ。人知れず、凍てついた土に根を張り、凍える空気に枝を伸ばす桜だ。今はまだ、冬の桜だ。独り寒空の下に屹立している、寒風に肩を寄せ合っている。やがて芽吹き、花ひらく、冬の桜だ。

ここに、桜

ひっそりと、冬の桜

ここにも、桜

沈黙する、冬の桜

ずっと、桜

ときを待つ、冬の桜

自分だけが
自分の居場所を
知っている
冬の桜



2 件のコメント:

  1.  今回もすばらしいお話をありがとうございました。

     地元周辺だけでも、桜巡りを楽しむ場所がとても多くあるのですね。
    それぞれの地名や、地図にもないような小さな川の名前まで書かれていて、そんじょそこらにある桜MAPではこれほど丁寧に紹介されているものは、見当たりません。また、行ってみたくなるような情景描写が文学的で、惚れ惚れします。さすが詩人だなと、感心するばかりです。

     自転車乗りでしか発見できないようなウラ名所もあるようで、改めてフットワークのよさと秘密基地へと誘ってくれる魅力は、自転車の特権ですね。
     
     満開の桜と冬の桜を、同じ場所から対比してあるのもすごいですが、
     『自分だけが 自分の居場所を知っている 冬の桜』
    どうしたらこんな上手な表現ができるのか、凡人には計り知れません。

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  2.  冬の桜にはあまり目がとまりません。自転車に乗っていると、枝の先が少しずつ色づいて、花の季節が近いことにいち早く気づきます。

     桜だけではなくて、景色の移り変わりに敏感になれるのは、自転車に乗っていればこそという気がします。葉桜になっても、夏、周りの濃い緑の中に取り込まれてしまっても、桜の居場所に気づくのは、ゆったりと自転車に乗っているからではないかと思います。

     ゆったりとものを見たり、あれやこれやと考えてみたり、自転車の上で過ごす時間が今では大事な時間になっています。

     



     

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