昨年父が亡くなったので、今年は年頭のあいさつをしなかった。正月の飾りも控えた。正月に孫たちが遊びに来ても、家がさみしいのでは気分が盛り上がらない。玄関や神棚のしめ縄だけは飾ることにした。
毎年、天気が良ければ、元旦のご来光を迎えに揖斐川の河口まで自転車で行く。伊勢湾の奥で、海から日が昇る時刻に間に合うように自転車で走る。今年はどうしたものか迷っていた。
1990年、中学校で担任をしていた3年生の学級で、初日の出を見ながら年明け第1回の学級会をしようと決めた。生徒たちはいたく感激したようで、日の出の瞬間に「あけましておめでとう」とあいさつを交わした。以来、毎年その場所に行きつづけている。自転車に乗るようになってからの10年は初日の出ライドをつづけている。毎年やっていることを、今年だけやめることもないと思って出かけることにした。
家からいつもの場所までは15㎞ほどの距離がある。毎年、ご来光の写真を撮って現場から何人かの知人に送る。写真を送ったお礼に添えて、「この寒い中をよくぞまぁ…」、「見上げた根性…」とお褒めの言葉をいただく。
15㎞を走ることも、寒い中を走ることもそれほど苦にはならない。冬場に100㎞もの長距離を走るのと較べればむしろ楽なくらいだ。苦手な早起きと、暗い道を走るので勝手が違うこと以外はそれほど特別なことではない。
今年は追い風を受けて、いつもの場所まで思いの外早く着いた。堤防から水辺に下りる道を日の出を見に来た中学生か高校生と思しき女の子6、7人がふさいでいる。自転車で通り抜けたいので、後ろから「あけましておめでとう」と小さく声をかけた。
「すみません!おめでとうございまぁす」と道をあけてくれた彼女たちの、「うちら、まだやってないやん」という声が聞こえた。何のことかと思ったら、「あけましておめでとおぉ」「今年もよろしくねぇ」と、飛び上がったり抱き合ったりして、お互いに新年のあいさつをしはじめた。30年以上も前の学級会の光景に重なった。年頭のあいさつを控えたのは少しさみしいが、陽気な新年のごあいさつにふれることができた。
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未明のコンビニは陸の灯台 明かりに誘われて走る |
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この時間に この場所に立つ ずっと前から 決めていた今 |
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この場所 この時間 この人 約束の核心 |
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約束された道が 向こうから来る |
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私の居場所まで 道はつづく |
30年以上前に、担任している生徒たちと初日の出を見ながら、新年第1回学級会を開くとは、発想が素晴らしいし誰もが思いつかないことです。
返信削除おそらく生徒たちは、元日の朝、地平線を昇ってくる朝日を格別な思いで眺めていたことでしょう。
あれから数十年、お正月になると我が子をあの場所へ連れて行き、
『実はなあ、中3のときに1月1日の朝、みんなで初日の出をみる学級会をしよやないか、と担任の先生が言い出したんや。びっくりや。当日、寒いなかを多くのクラス仲間が集まって、1年スタートのお日様をみんなで拝んだ光景は忘れられん。今でもはっきり覚えているわ』というような話をしている教え子さんは、多くいるでしょうね。
その、担任だったMARIOさんは、現在も懐かしき思い出の場所に毎年足を運ばれているということで、生徒たちへの愛情や学級への思い入れの強さが伝わってきます。金八先生以上です(笑)。
4月の新学期、始業式での保護者の最大関心事は、我が子の担任が誰になるか。夕食の話題は、担任が当たりだったか外れだったかばかり。
MARIOさんはもちろん当たりで、豪華な食事になったと思います。
今年は、初日の出が確実に見られるという天気予報だったので、いつもの場所は大勢の人が集まっていました。ひょっとすると、当時の教え子が来ていたかもしれませんが、顔までしっかり寒さ避けをして、自転車に乗っている爺さんが誰だか気がつかないかもしれません。
返信削除金八先生が放映されているころは、時々テレビで視ましたが、ドラマの中で起きる事件は一つだけで、ほんとうの学校のように、いくつも重なって同時に問題が起きるようなことはないので、羨ましく思ったものです。
金八先生と相性がよければ、あんないい先生はないでしょうが、もしも先生と合わなければ、鬱陶しく思う生徒もいたかもしれません。熱心の押しつけはよろしくないし、勿論、私はそれほど熱心でいい担任だったとも思えません。
大学の教育心理学の先生のことばを今も覚えています。沢山教え子が要るので、退職後に村長や町会議員に立候補すれば当選確実だと思うかもしれないが、生徒の半分は反感を持っている。半分ですめばまだいい方だ。ということでした。
新年早々、夢のない話ではさみしいので、当時の生徒さんたちが学生時代のいい思い出を大切にしてくれていることを願いたいです。自転車を離れて、変な教育談義になってしまいました。