冬をむかえる

冬をむかえる
'25.1.22 山を見て走る

2024年8月24日土曜日

瞬間記憶能力

  久しぶりに通った道で、春先にお母さんと一緒にいる男の子と出会ったのを思い出した。赤いメルセデスベンツの小さな自動車に跨っていた。ぶつかるといけないので、早くに停まってすれちがうのを待った。男の子は脚で蹴って進むおもちゃの自動車の座席の下に、捕まえたモンシロチョウを入れていた。見せてくれたチョウの姿がはっきり残っている。

 山の中の下りのコーナーへ速いスピードで進入するときに、40年も前の情景が突然現れた。前を走っているオートバイに乗った友人の左足が見えた。記憶に残っていた瞬間の動きだ。左足がギアのペダルの操作をミスして、後輪がわずかに横に滑った。確かにこのコーナーだった。自転車で走っているにもかかわらず、オートバイに乗っている瞬間が見えた。

 瞬間記憶能力(カメラアイ)とは、カメラのように一瞬のできごとや情報を記憶する能力をいう。発達障害の一部の人々(特に自閉症スペクトラムのある人)は、このカメラアイの能力を持っていることが報告されている。脳が情報を処理する方法が異なるためで、視覚的な情報に敏感で、一見しただけで複雑なパターンや細かいディテールを記憶することができる。

 優れた芸術家の中には、カメラアイの特性を持っている人がいる。山下清、三島由紀夫などが例に挙げられる。洞察力や細部への注意は、革新的な創造性を発揮する。半面、この能力が強いと、他のスキル、特に社会的コミュニケーションや多くの情報を同時に処理する能力に影響を及ぼすこともあるといわれる。

 自転車で走っている情景がはっきりと残ったり、もうせんに走った場所の記憶が鮮やかに蘇えったりすることがある。自分が特に瞬間記憶能力に優れているとも思えない。自転車のほどよいスピード感や高揚感が、記憶を定着させ、あるとき不意に再生させるのだろうか。不思議な現象ではある。

折り重なった
記憶の襞を辿る

夏の記憶が
海に向かって
伸びている

記憶の川が
日照りに乾いている

涸れた川の底に
遠い記憶が
張り付いている

涸れた川の底を
遠い記憶を捜して
遡ってみる


 

2 件のコメント:

  1.  瞬間記憶能力という言葉をはじめて知りました。
    以前どこかで経験した一場面が鮮明に記憶されているとは、一般人にはなかなか理解できません。とても恐ろしい事故に巻き込まれたとか、人生で最高の場面に立ったなど、強烈なインパクトをもった出来事であれば、記憶に残ります。でも普段の生活のなかで何気なく過ぎていくものは、あっという間に忘れ去られていきます。私の場合、高齢者なのでなおさらです(笑)。

     今回の瞬間記憶能力という言葉が気になったので、ほんの少し調べてみると、自閉症スペクトラムのなかのサバン症候群に近いのかなという気がしました。記憶、音楽、美術、数学などで、瞬時に反応できる能力らしいです。

     私の走行会仲間は4人ですが、その中の一人は恐ろしく記憶力に優れています。走って小休止をしていると、一年前●●がこの場所でこんなことをしたなとか、そのときは○○は腰痛で休んでいたなと話すけれど、誰一人覚えていない。ごく普通のさりげないことを、正確に覚えているのにメンバーは驚くしかありません。

     Mモンシロチョウモンシロチョウやバイクのお話から察するに、サバン症候群のいくつかの能力をおもちではないでしょうか(笑)。
                 べーえんべー

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  2.  たまたま思い出した光景を書いただけで、私の場合はそれほど特別な記憶能力があるようには思いません。

     それでも、自転車に乗っていて見たものは不思議と印象に残ることが多いような気がします。

     それほど速いスピードで走っているわけでもないのですが、適度な緊張感があったり、集中して走っていることが、普段とはいろいろなものを見る見方を変えてくれるのかもしれません。

     ちょっと前に自分の書いたブログの中身も忘れていることが多いので、記憶力はかなりお粗末だといえそうです。 


     

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