冬をむかえる

冬をむかえる
'25.1.22 山を見て走る

2024年11月16日土曜日

束の間の対話

 後ろから自転車で来た人に、不意に話しかけられることがある。追い抜くときに、声をかけたくなるときもある。

 以前、名古屋城の近くで自転車で並びかかった若者に声をかけられた.。

 「ラレーですね。僕もそれ買いたいんですよ。いいですね」(私の乗っている自転車の車名がラレー)。私が、「脚力がないので、乗りこなせていないですよ」と答えると、 「いやー、いいですよ。気をつけて行ってください」と抜き去っていった。自転車を見てくれる人がいてうれしい。

 仲の良さそうな兄弟と思われる小学生が二人、辺鄙な山の中の道を走っている。家からはだいぶ走ってきたと思われる。後ろから声をかけた。

 「ぼくたち、ちょっと追い越すよ。どこから来たの?」。「〇〇から…」よく聞き取れない。答え方もおぼつかない。「こんなところまできて大丈夫か、帰れるか?」ちょっと心配になって訊いてみる。「もう帰るとこ。ちゃんと帰るよ」と兄らしい子が答えてくれた。安心した。

 何度か、町内のミニコミ紙に自転車の写真と小文を投稿したことがある。それを読んでくれているらしい人が、自転車で後ろから追いついて話しかけてくれた。

 「その自転車って、グッドニュース新聞に毎月出ている自転車ですか」。ちょっと驚いた。「はい、新聞読んでもらってますか」と返事をすると、横に並びかかって、「記事に出ている写真の場所を探して走ってますよ。いいところがいっぱいありますね」と答えてくれた。どこかでつながっていたかと思うとたのしい。

 やんちゃそうな中学生らしき4人組が、堤防道路をふらふらと道幅いっぱいになって並進している

 後から追いついて、「お兄ちゃんたち、ちょっと通してくれるか?」と声をかける。「だれじゃ?」と言いたげに振り向く。意外にも、「はい、どうぞ」と慌てて道をあけてくれた。追い抜きざまに、「今日は学校楽しかったか?」と声をかけた。「楽しかったですよぉ」、「めっちゃ、最高でしたぁ」と口々に答えてくれた。追い抜いてしまうと、後ろの方から「がんばって走ってくださ~い」という声が聞こえた。励まされた。

 束の間の対話に気持ちが弾む。続きを走りながら、ことばのやり取りを何度も反芻する。

日がな一日
通り過ぎる人を
眺めている
 
きのうここで
道をきかれた

今日はここで
道をたずねる

もう二度とは
会えない出会い

通りすがりに
声をかけてみる

2 件のコメント:

  1. べーえんべー2024年11月21日 16:08

     MARIOさんは気さくな人柄で、道行く人にも気軽に話しかけたりできる人だと、ブログを拝見していても感じます。類は友を呼ぶではありませんが、おそらく自転車ですれ違ったりしたときに、相手も声をかけてみたくなるオーラが出ているのではないでしょうか。見知らぬものどうしが趣味の自転車をサカナにして盛り上がるのは、年齢は関係ないでしょうね。

     さて先日、火野正平さんの逝去が報じられて、かなりのショックを受けました。享年75歳。
     2011年から14年間続いた『にっぽん縦断こころ旅』。 何と1200日を超える長い旅を、お茶の間に届けてくれました。日本中の土地を訪れ、地域の人とふれあい、飾らずお茶目で、誰からも愛される存在でした。テレビで観た彼が訪れたこころの風景を、いくつかたどったこともありました。この春予定のこころ旅は、腰痛のため休止。治療に専念されましたが、帰らぬ人となりました。
     来週からは三重県に入り、いったいどこを訪れるのか楽しみにしていました。

     自分も70歳を過ぎて正平さんとはさほど年齢は違いません。彼のような走りはできませんが、自転車にまたがりながら、こころに広がる風景を楽しんでいきたいと思います。MARIOさんも体調管理にご留意ください。





     


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  2.  今週になって、谷川俊太郎さん、火野正平さん、そして今日は北の富士勝昭さんと、立て続けに訃報に接し、にわかには信じられない気持ちでいます。こちらから一方的にですが、親しい人のように思っていた人が亡くなるのは、さみしいのを通り越しています。

     BS放送を視聴できないので『こころ旅』にはあまりなじみがありませんでした。友だちが録画してくれたものをときどきは見せてもらっていました。お膳立ての整った自転車旅には違和感もありましたが、火野さんならではの人との交わり、自転車の楽しみ方は興味深いものでした。

     親兄弟や友だちだけでなく、勝手に親しい人だと決めつけ、いろんなことを教えてもらったり、楽しませてもらったりした人が亡くなってしまうと、向こうの世界の方が楽しいのではないかと思えてきます。老いの心境でしょうか。

     自分はいつまで自転車に乗っていられるのか、ときどき考えることがあります。火野さんの決め台詞「人生下り坂最高」を真似て、もう少し楽しんでいれば、限界は多分向こうからやってくるのでしょね。

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