'25.10.3 一本の柿の木

2025年8月30日土曜日

蝉の声

  自転車で快調に走れているときには蝉の鳴き声が心地よい。ペダリングと同調するように鳴き声が樹々の上からふりそそぐ。応援してもらっているようで身体が軽い。

 気温が上がって、ペダルを踏むペースが落ちる。蝉の声はたちまちうるさくなる。耳障りだ。向かい風と同じように行く手をはばむ。頭の上から降る鳴き声が気温を一層上げる。

 今年の夏は夕立に会うことがない。突然の雨に降られないのはいいが、乾きすぎている。自転車で走っていて夕立に会うのは満更悪いことばかりではない。

 雨宿りをする場所を探す。予定外の休憩時間。蝉の声はばったり止む。雨宿りに借りた農家の小屋の軒を打つ雨の音はするけれど静寂。蝉の声と雨音の相関。

 やがて、夕立が去り、晴れ間がのぞく。蒸し暑かった空気が少し冷たくなっている。雨に濡れた路面からは照り返しの暑熱が消えている。蝉の大合唱がまた始まった。気分を新しくして走りはじめる。

 子どものころ、蝉をジージーとかミンミンと呼んでいた。シャーシャーは大きくて捕まえ甲斐があった。クマゼミだ。ニーニーもツクツクボウシもいて、夏の終わりの夕暮れにカナカナの声を聴くと夏休みが終わるのがさみしかった。

 最近は、蝉の鳴き声を聞きわけられる人が少なくなっていると何かで読んだ。自転車で走っていても、蝉取りをしている子どもを見かけない。 天寿を全うできる蝉が増えて、蝉にとってはありがたいことかも知れないが、蝉取りという夏休みのアイコンが消えるのはさみしい。

 猛暑の影響か、蝉が鳴かなくなったところもあるらしい。蝉の声を楽しんだり、ときには(うと)ましく思ったりもしながら走るのは夏の自転車の楽しみとして残しておきたい


子どものころ
この樹の下に
夏があった

あの夏が
どこを探しても
見つからない

今年も子どもたちは
子どもたちの夏を
楽しんでいるはずなのに

私にはそれは
見えないだけなのか
子どもころと同じ
蝉の声が聴こえる

2 件のコメント:

  1. べーえんべーー2025年9月4日 11:48

     子どもの頃、蝉の声の記憶。
     夏の初めはミンミンゼミ、夏休み真っ盛りがアブラゼミ、夏の終わりが近づくとツクツクボウシ。蝉の鳴き声ととんぼの姿で、夏休みが過ぎてゆく時間を感じたものです。

     毎朝夕、我が家の近くを散歩していますが、昔と比べてめっきり蝉の鳴き声が小さくなった気がします。蝉を捕まえるために、網を持って走り回る子どもたちがも見かけません。

     MARIOさんが自転車で出会う蝉たちは、子どもの頃と変わらないようですね。場所やスピードも変化するので、蝉の種類や鳴き声も移動するのでしょう。自転車ならではの楽しみ方が、ありそうです。

     私は昨年末から自転車ストップが主治医から出されているので、完治するまで乗るのは我慢です。前回MARIOさんからのご質問ですが、私所有のクロスはコルナゴ、MTBはトレック。詳しい型番は書類を調べないとわかりませんが、いずれも基本グレードです。自分の足で走れるまで、自転車の手入れだけは定期的にしようと思っています。

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  2.  べーえんべーさんのバイク、いずれも名門の製品ですね。コルナゴは1954年の創業ですね。トレックは比較的新しいメーカーですが、いろいろな自転車レースで活躍しています。

     自転車に乗れないのは残念ですが、療養中は愛車の来歴など調べてみられたら楽しみが増えるのではないでしょうか。

     自転車の情報が増えたり整備のノウハウが身に着いたりすると、自転車を再開されるときには、乗り方にも良い変化が期待できるような気がします。

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