「私と小鳥と鈴と」という金子みすゞの詩がある。詩は「みんなちがって、みんないい」と結ばれる。「自転車と髭と靴と」には全く相関がなくて、それでいいのだが、何となく気になる。自転車と髭の関係といえば、いつも一緒に走る仲間4人のうち、3人に口髭があるということくらいだ。髭を剃れば、わずかながら体重が軽くなるし、空気抵抗も減るだろう。プロのロードレーサーやトラック競技の選手に髭はない。すね毛まで剃るらしい。少しでも速くと考えるとそうなるのか。とはいえ、自分も含めて自転車仲間の髭が走りに影響するほど立派とも思えない、というのは他の二人に失礼か。
自転車を軽くし空気抵抗を減らすために、グラム単位でフレームを削り、部品の素材を工夫し、ホイールやタイヤの軽量化と空力特性に気を使う。着るものにまで気を配る。それを考えれば、髭の重さや空気抵抗も無視できないかもしれないが、相関係数は極めて小さいだろう。
靴のことはといえば、ちょっと前に、『美しき自転車乗り』にあるシャーロック・ホームズの推理について、コメントをいただいた。履いている靴底の減り具合から、その人が自転車乗りだと推理することは可能かという内容だった。自分の靴底を観察してみた。確かに、靴底の特定の部分が削れたように擦り減っている。靴底を具に観察しないと判らないので、履いている靴から推理するには無理がある。自転車と靴の相関関係は証明できそうもない。ビンディングシューズでも履いていない限り推理はできないだろう。
全く関係がないように思われる自転車と髭と靴とが、意外なところでつながった。毎年、ロンドンで開催される「ツイード・ラン」という自転車のイベントでは、三者の関係が無視できない。「ツイード・ラン」にはドレスコードがあって、ツイード素材の服を着て、古い自転車でロンドンの街中を走るというのがお決まりである。ネットの写真や動画で参加者の自転車や出で立ちを見ていると興味は尽きない。ロンドンが1年で最も美しくなるといわれるこの日、ツイードのスーツやドレス、帽子で装った老若男女の自転車乗りが街にあふれる。中でも、年配の男性の「自転車と髭と靴と」について特筆大書したい。
彼らが乗るのは、前輪の異様に大きいオーディナリー(日本ではだるま自転車という)から、時代物の自転車やお洒落なタンデムバイク、リアカーを取り付けたものまである。乗る人の個性的な髭が、自転車と服装をさらに引き立てている。足元に目をやると、靴も抜群の仕事をしている。クラシックなオックスフォードシューズやブーツは良く手入れされて輝いている。まさに、自転車と髭と靴との黄金比である。ツイード・ランに参加している人たちの姿は、自転車との付き合い方の絶好のお手本になる。
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オーディナリー型自転車並走 乗っている人は「オーディナリー=普通」ではない |
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自転車と髭と靴と 三位一体、三種の神器 自転車は文明であり文化である |
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古い建物には自転車がよく似合う 大垣市 五井家旧宅(郵便局舎) |
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伝統美には自転車がよく似合う 四日市市 小山田美術館 |
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自転車で伝統や文化にふれに行く 四日市市 四郷郷土資料館 |
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追記: 自転車に乗り始めた頃から愛用している靴 右の靴の底が極端に擦り減っている ペダリングの癖もあるのだろう |
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追記2: 5年ほど履いている靴 同じように擦り減っている 靴底を見なければ自転車乗りとは判らない 履いている靴を見て推理するのは無理だろう |
ツイードはトラッドの定番で、私は今も冬場はいくつかジャケットを愛用しています。
返信削除ショーンコネリーが映画のなかでツイードジャケットを着ていましたが、年をとっても着こなしが上手く、年齢を重ねた渋みがカッコよさを増幅させていました。
さて、MARIOさんの靴底を見ると、右足の拇指球あたりの擦れ具合が特に激しい。
右足に多くの力が加わっているということは、右利きの人物かなと推理してしまいますが、ホームズさんならどんな結論を出したのか、興味深いところです。
東海地方も梅雨明けして、いよいよ本格的な夏到来ですね。
体調に気を配りながら、自転車ライフを楽しみましょう。
ツイードの洋服は、おじいさんの着ていたものを孫が愛用するというように、何世代にもわたって着つづける、日本のきもののようなものかもしれません。まさにトラッドです。自転車もトラディショナルな美しさがあると思います。歳を重ねたからこそ似合う自転車というのもあるでしょうね。
返信削除歳を重ねた今だからこそできること、わかること、やりたいことを大切にしたいです。もう10年も生きると、もっとやりたいことが増えるかもしれません。
靴底については、ご明察のとおりです。私は右が利き足で、どうも右足に力が入りすぎるようです。しかも、少しずつペダルを踏む足が滑るので、擦り減るのだと思います。均等にペダルを踏むようにしないといけません。一時、右膝が痛かったのも、多分そのせいではないかと思っています。母指球のあたりでペダルを踏んでいるのは正解ですよね。