先週、関ヶ原まで行った。朝8時に家を出た。我が家からスタートすると、多度から養老鉄道沿いに走り、養老からさらに北へ上るコースと、北勢線に沿って阿下喜まで行き、国道365号線で藤原をぬけて岐阜県に入り、多良峡を越えるコースがある。
この日は、関ヶ原まで行くと決めて家を出たわけではない。自転車日和なので、新緑を求めて遠出をしてみようと漠然と考えながら走り始めた。阿下喜方面へ向かい、調子を見ながら藤原岳を回り込むように国道365号線を走る。大型のトラックが多いので、国道に沿った脇道に点在する集落を縫って走る。
幹線道路の横には大概集落の間を通る旧道や生活道路がある。長距離トラックや先を急ぐ車が少ないので、自転車にちょうど良い。時には、集落の中に迷い込んでしまったり、思わぬ景観に出会って足止めをくったりすることがある。それもまた楽しい。
藤原町古田のあたりは、巡見街道という古い街道が残っている。365号線から外れて、巡見街道をしばらく走る。江戸時代に巡見使が通った街道で、東海道亀山宿から北勢地域をショートカットし、関ヶ原で中山道に通じる街道である。この街道を走ろうと意図したわけではないが、図らずも関ヶ原までは巡見街道に沿って行くことになる。
このルートで標高の最も高いと思われる辺りに明行寺、長楽寺という2ケ寺がある。標高250m。但し、250mを登りつづけたわけではなく、道は上ったり下ったりするので、家を出てからここまでに獲得標高は400mほどになっているはずである。
岐阜県へ県境を越えると、国道365号線は「牧田川やまざくら街道」と呼ばれる。県境からしばらく走ると上石津トンネルに至る。長さ1.8kmの長いトンネルを抜けると上石津町牧田までは近いが、トンネルの中は空気が悪い。迂回して牧田川沿いに多良峡へ登ることにする。新緑がまぶしい。山桜の咲くころにはさぞやと思われる。
多良峡を越えると道は再びやまざくら街道にもどり、牧田で「薩摩カイコウズ街道」に合流する。この道は大型トラックが多いので、並行する「九里半街道」を関ヶ原まで走る。関ヶ原までだらだらと登り坂が続くのはきついが、街道の両側に点在する旧家の佇まいや庭木の新芽が楽しませてくれる。
走りぬける街道の名前を楽しみ、沿道の新緑を満喫しながら、古戦場に着き、開戦の地や決戦地を巡る。合戦の跡を訪ね、JR関ヶ原駅に戻ったのは11時30分、走行距離はちょうど45㎞に達した。途中、休憩を取りながら3時間半ほど走ったことになる。
単純計算では、このまま家に帰ると走行距離が90㎞弱にしかならない。妙なこだわりで100㎞は走っておきたい。ならば、旧中山道を埀井宿まで走り、大垣から養老を経由して距離を稼いで帰ろうと、駅前でアンパンをかじりながらにわかに思いついた。
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私がどこから来て 私がどこへ行くのか 私にだってわからない |
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この道を行けば いいのかなんて 私にだってわからない |
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出会いは往ったり来たりする 待ってなくても出会ったり 待っているのに出会えなかったり |
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ここにいるぞと旗を立てても 誰も気づいてくれないときもある |
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ここにいたぞと石を立てておけば 誰かが訪ねてくれることもある |
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これより先に道があれば これより先へ進んでみる |
MARIOさんの博学ぶりには、驚くしかありません。
返信削除いなべから関ヶ原まででも、こんなに街道とよばれる道があるのですね。私は一つも知りませんでした。
いなべの人にはなじみの深い巡見街道、巡見使と言われてもチンプンカンプン。高校時代、日本史が好きで大学受験科目に選んでいましたが、恥ずかしい限りです。
やまざくら街道、薩摩カイコウズ街道、九里半街道など、言葉の響きだけで行ってみたい、自転車を走らせてみたい気持ちになります。
今回のブログを拝見して司馬遼太郎の『街道をゆく』がすぐさま浮かんできて、このところNHKで過去に放映されたものを観ています。大紀行文は43巻もありとても無理ですが、司馬さんの小説はけっこう気に入っていて、高校から大学時代にかけて愛読していました。五木寛之といい司馬遼太郎といい、気楽に読めるものが私には合っているのでしょう。
MARIOさんのような格調の高いものには、到底たどり着けません。
自転車で走るようになって、初めて知ったということがたくさんあります。自転車で走るときには地図を見ないようにしていますが、家に帰ってその日に走ったコースを地図上でたどっていると、ああ、こんな名前で呼ばれている道を走ったのだと、楽しくなります。
返信削除名もない道を、自分が見つけたような気分で走るのも面白いですが、歴史のある道を走るのも、また、興味深いです。木や花の名前を知っていると、見方が違ってくるのと似ている気がします。
博識でも博学でもないですが、自転車に乗りながら気づくことの多さには驚かされます。目も心持も、きょろきょろさせていると、案外いろんなものに出くわして、それが 次に興味へとつながります。