’26.5.8 一期は夢よ

2023年6月17日土曜日

梅雨の中休み

  冬の間は自転車に乗らないとか、夏の暑い盛りは走らないという人がいる。私の場合、シーズンオフはない。寒いときは服装を工夫して、暑いときには熱中症に注意をして、今のところは1年中乗りつづけている。

 気温の変化には何とか対応できるが、雨にはかなわない。天気予報に少しでも雨のマークを見つけたら自転車に乗らないようにしている。雨の日に乗るのは、タイヤのスリップなどがあって危険だ。もう一つの理由は自転車が汚れるということである。濡れた路面の上を走ると、見事なまでに自転車は汚れる。マウンテンバイクはその限りではないが、出来れば自転車を汚したり、部品の消耗を早めたりすることは避けたい。

 梅雨の時節は、走行距離が少なくなる。天気予報とにらめっこをしながら、走れるタイミングを計る。最近、父の容態が優れない。現在、99歳と6カ月。急な変化があるかもしれないと、主治医から警告されている。雨を避けているだけではなくて、父の様子も気になるところだ。遠出をしていて、火急のときに間に合わないというのでは困る。

 今週は、梅雨の中休みの晴れ間が見えた。これが本来の「五月晴れ」だ。久しぶりに遠出をした。父の病院からの知らせがあるといけないので、大した遠出ではない。

 四日市港までくらいで引き返そうと思って出かけたが、つい足を延ばして、楠、箕田、さらに伊勢若松の漁港へと海沿いに辿ることになった。昼前には気温が上昇して、かなり暑い。初夏の空がのぞいている。漁港をつなぐように堤防の上を走る。海からの風にしばらくぶりの解放感を満喫する。

 「花の色は移りにけりないたづらに わが身世にふるながめせし間に」。長雨を眺めるばかりで、自転車に乗らずに時を過ごすのは惜しい。束の間の梅雨晴れを見逃す手はない。


頭をもたげて
天気をうかがう

つかの間
青空がのぞく

梅雨明けのように
気分が透きとおる

どんなものと
出会っても
今日は面白い

少し走れば
旅する気分
旅する自分


2023年6月10日土曜日

機能美について

  愛用の自転車をスタンドに乗せる。チェーンに潤滑油を注す。変速機の動きを確かめる。後ろの変速ギアが10枚。ハンドルについた変速レバーを操作して、一番小さいギアから最大のものまで、チェーンのかかり具合を確かめる。

 ペダルを勢いよく手で回し、片方の手で変速レバーを操作してワイヤーを引く。チェーンは小さいギアから大きいギアへと移る。金属のチェーンが身をよじるようにたわみながらギアの上を移動する。ワイヤーを緩める。チェーンは身体をくねらせながら小さいギアへと落ちていく。チェーンは生きていて、変速機に促され滑らかに移動を繰り返す。

 スポーツ自転車に乗らない人は、先ず変速ギアの枚数の多いことに驚く。私の乗っているクロスバイクは、クランク側に歯車が3枚、後軸に8枚。24段の変速ができる。ロードバイクとマウンテンバイクは前が2枚、後ろは10枚のギアで、20通りに変速ができる。

 実際には実用自転車の3段変速と同じようなもので、速く走る、巡航する、そして発進時や坂道などは軽い力で走るといった3通り程度の選択ができれば良い。では、なぜ20段以上もの組み合わせがいるのか。非力な脚の回転を補って、いかに力を有効に使うか、いかに滑らかに自転車をスピードに乗せるか、ひたすらそのための工夫なのだ。

 最近、e-Bikeという電動アシスト付きのスポーツ自転車に乗る人と一緒に走ることが多い。モーターのアシスト量を調整すれば、変速にはそれほど敏感になる必要がないらしい。アシストのない自転車でe-Bikeと同じペースで走るには、変速の滑らかさが命である。

 もう一度、変速機の具合を確かめてみる。変速レバーを素早く動かせば、チェーンは生き物のようにギアからギアへと移動する。大きなギアへ移り、小さなギアへ飛ぶ。チェーンとギアの相関。その形と動きはいつ見ても美しい。

力を受ける


力を伝える

    

力を活かす

 

速く走るために


のんびり走るために


大きな力をだすために

小さな力ですむように

しっかりと立つためにも
ゆったりと座るためにも
その機能は美しさなのだ

2023年6月3日土曜日

自転車乗りの自画像

 もっと若い頃からスポーツ自転車に乗っていれば、全く違う乗り方をしていたかもしれない。子どものころから自転車を乗り回し、中学、高校時代には通学にも自転車を使っていた。ところが、オートバイの運転免許を取得してからはとんと自転車との縁が切れた。

 若くて体力のあるころに自転車に興味があれば、自転車のレースに出たり、ロングライドのイベントに参加したり、あるいは日本国中を自転車で巡ったりということもできたかもしれない。本格的に自転車の整備を学ぼうという気になっていたかもしれない。

 これは、60歳になってスポーツ自転車を始め70歳を超えてから思うことなので、今更どうしようもない。

 先日、ツアー・オブ・ジャパンいなべステージの観戦に行って思ったことがある。私と同じような年恰好で、選手かと思うようなウエアに身を包み、何十万、ともすると百万円を越えそうな自転車に乗って観戦に来ている人を何人も見かけた。

 この人たちは、若い頃から自転車を極めているのだろうか。それとも、私のように、定年退職の前後に自転車を始めた人なのだろうか。いずれにしても、私の乗り方とはかなり違うようだ。

 自分の自転車に乗る姿を描くとすると、少しはスポーツ自転車に凝ってみたいというものの入門用程度のバイクを愛用し、高価なウエアを身に着けるのではなく普段着のままで出かける。スピードや走行距離はあくまでも目安にしておいて、自然体で気軽に走っている、というところである。

 ついでにいえば、もう10年も乗っているので、大方の整備は自分でやって、出先でのトラブルにはほぼ対処ができて自力で安全に家まで帰り着く。ただの自転車好きの爺さんである。

 自転車に乗っている人が何かのトラブルで困っていれば、押し付けがましくない程度に手助けができる自転車好きな爺さんという姿も付け加えれば、ちょっとは格好のいい自画像になるだろう。 

いつものように
ありふれた景色のなかへ
乗り出す

いつものように
ありふれた季節のなかに
たたずむ

いつものありふれた道が
新しい道にかわることもある

ときには
少しだけ遠くへでかける

気軽に
橋の向こうがわを
見に行ったり

思い切って
長い橋を
わたってみたりする



2023年5月27日土曜日

ツアー・オブ・ジャパン観戦記

 ツアー・オブ・ジャパンは、1982年から1995年まで14回に渡り開催されていた『国際サイクルロードレース』を継承する国内最大規模の自転車ロードレースである。1996年に名称を『ツアー・オブ・ジャパン』に変更し、第1回が開催された。世界トップレベルの強豪チームが参戦する、アジア最高クラスのハイレベルな国際レースである。

 堺、京都ステージから始まり東京まで8つの場所を転戦する。このレースの第3戦がごく身近な場所で毎年開催されていることを知らない人も多い。コロナ禍の影響で3年間中止になっていたレースが今年はいなべの地に戻って来た。

 というわけで、ご近所の自転車愛好家と連れ立って4人で観戦に出かけた。雨が降るようなら観戦を見合わせようという程度の、地元のにわかレースファンの軽い乗りである。

 阿下喜駅から始まるレース前のパレードに間に合うように自転車で自宅を出発。パレードでは、集合した国際クラスの選手たちの巨大な体躯と華やかさ、ロードバイクの機能美に驚かされる。選手と見まがうようなウエアに身を包み、高価なロードバイクで観戦に訪れる人も多い。珍しいロードバイクが見られるのも興味深い。

 本番のレースは、海外、国内の16チーム96人が覇を競う。レースの細かいルールも判らないままに、自転車の速さに驚き、選手たちのタフさに感動する。114㎞の急坂を含むコースを8周+α、127㎞を3時間ほどで走り切るのである。

 地元の利を活かして、会場周辺の交通規制をかいくぐり、観客の少ないコース脇でレースを観た。どこで観戦しても入場料は無料というのがまたいい。すぐそばを走り抜ける選手たちの爆走、激闘をよそに、のんびりとレースの成り行きを見守る。転戦するレースを追いかけ、県外から押し寄せるレースファンとはちょっと調子の外れた、ピクニック気分のレース観戦も楽しい。

 当日は、周辺の食べ物屋さんなども遠来のレースファンたちで混み合うだろうと思い、いなべ市役所の職員食堂で遅めの昼食を食べて、レース観戦のしめくくりにした。地元で気軽に国際的な自転車レースが堪能できるとは、何とも恵まれた環境である。

 

ツアー・オブ・ジャパン公式サイトより
これが世界のロードレース

パレードの出発地点
レースの前の静寂

レースの前の高まり

パレードが始まる
期待と興奮

パレードで見た選手を
本番のコース脇から応援

選手の息遣いが聞こえる
自転車とは思えない
速さに圧倒される

国際的なレースを
自己流に楽しむ
地元のおっさんの
ピクニック的観戦の図


2023年5月20日土曜日

失敗の連鎖

 友だちがロードバイクに乗っていて、前から来た車をよけそこない、ブロック塀にぶつかった。これが最初の失敗。

幸い怪我はなく、ハンドルの左側についているシフトレバー(変速装置とブレーキのレバーが一体なっている)の損傷だけですんだ。 

彼は、行きつけの自転車屋さんへ壊れた自転車を持ち込んだ。修理の詳細は確認をせずに、すべて自転車屋さんにお任せで修理を依頼した。客と店の信頼関係の問題なので、とやかく言う必要はない。

 自転車屋さんは詳しい修理内容を説明をせずに、総額で22,000円程かかるということで修理を引き受けてくれた。友だちはそのまま自転車を預けて帰った。修理代はリーズナブルだし、すぐに修理をしてもらえるのもありがたい。

 ところが、もう少し丁寧に修理の内容を確認していれば、最初の失敗はもっと値打ちになった。せっかくシフトレバーを交換するのなら、長年使っていたシフトワイヤーとブレーキワイヤーなども一緒に交換すれば、工賃の節約ができて他の部品の交換もできただろう。これが二つ目の失敗である。

 友だちには取り外したシフトレバーを自転車屋さんからもらってくるように頼んでおいた。壊れた部品も歪んだところを修正すれば予備の部品として使えるかもしれない。

 案の定、事故に遭ったシフトレバーは歪みを修正すれば、また使えそうである。これくらいは素人でも直せる。何でも新品に交換すればいいというものではない。そう思って、レバーにパイプをかぶせて延長し、力技で歪みを伸ばそうとしたら、レバーの付け根がポキリと折れてしまった。捨てられる運命の部品ではあったが、高価な部品だけに惜しいことをした。

 不注意の事故による自転車の損傷、その修理を依頼するときの確認不足、そして部品の構造をよく確かめずに無理な復元を試みた部品の破損。失敗の連鎖はよく考えればどこかで断ち切れたはずだ。そもそも気をつけていれば連鎖の起点もなかっただろう。


背景に知らない人が写り込んだ失敗

水面に映るはずの背景が
突然吹く風に消された失敗

何が狙いか定まらない失敗

狙ったものが写らない失敗

目を合わせていたはずなのに
そっぽを向かれてしまう失敗

慌てて急いで
混沌とした失敗写真の連鎖

ついでながら失敗の連鎖の写真






2023年5月13日土曜日

自転車中心主義

 主義というほど大げさなものではが、仕事を辞めて家に居るようになってからは、気がつけば自転車に乗ることを中心に生活が回っている。

 以前にもブログに書いたが、今年数え歳で100歳になる父がいるので、長い間家を空けて遠くへ出かけることはできない。父を連れて旅をするというようなこともむずかしい。かといって、天気のいい日に家にこもって本を読んでいるというのもつまらない。

 自転車は、ほんの少しの時間にふらりと出かけても、心のもちよう次第で長い旅に出たような気分が味わえる。この面白さは、色褪せない。

 自転車で出かけた先で写真を撮る。週に一度更新するブログにそれを掲載する。自転車に乗ることが、日課を決めたり少し先までの計画を立てたりするときの最優先事項になる。

 天気予報を見るのは、自転車に乗るためである。特に風向きや風の強さは気になるところである。自転車には大きく影響する。

 広くはない庭の、それでも手入れは必要であるが、天気と相談して、先ずは自転車に乗る時間を確保してから、庭いじりの計画を立てる。

 人と会うにも、自転車の乗ることの方を優先する。仕事をしなくなってからは、どうしても会う必要がある人は少ない。人と会う約束は雨の日に、と思ってしまう。自転車を優先していると、友だちと疎遠になりかねない。自転車中心主義などと悦に入っていると、見逃してしまうことも多くなるかもしれない。

 生活は自転車の車輪と一緒に回っているなどと恰好をつけている。ところが、スポーツ自転車に乗り出すには若干の準備もいる。面倒なので、煙草を買いに出かけたり、手紙を出したり散髪に行くときに、ほんのご近所まで行くのにも自動車を使う。これでも自転車中心主義といえるのか、はなはだ疑問である。

日々の生活の真ん中で
自転車に乗っている

自転車の肩越しに季節の花を見る

自転車の向こうに季節の花を眺める

自転車の似合う場所を探し
自転車の似合う場所に出かける

日々の生活の外へも
自転車で出かける

こうやって
新しい場所にも
新しいものにも
出会っていくが
見落としている物や
会えずに終わる人も
あるのかもしれない





2023年5月6日土曜日

マゴチャリ(孫の自転車)を作る

 我が家の一番小さい孫と公園へ自転車に乗りに行った。彼の自転車は、3歳のころから愛用しているものなので、サイズがかなり小さい。本人は、初めて乗れるようになった自転車なのでいたく気に入っているらしい。この4月に小学校へ入学したが、小さな自転車で満足しているようだ。

 本人が欲しいと言わないのに、新しいものを買うことはない。身体が大きくなるのに合わせて、次々と自転車を買い替えるのは無駄なことでもある。

 どこかに使われていない子ども用の自転車がないかと探してみた。家の近くに廃品などを集めている店があって、古い自転車が山積みになっている。そこでちょうど手ごろなサイズの子ども用自転車を見つけた。

 中国の人らしい店の主人に尋ねると、どの自転車でも1台千円で譲ってくれるという。長い間雨ざらしになっていたようで、チェーンやギヤ、メッキの部分もかなり錆ついている。それでも、フレームはきれいで色もわるくない。

 破れたサドルは、山積みの自転車の中で一番いいものと換えていけばいいと言ってくれた。良さそうなのを選んで取り換えた。サドルだけでも千円はしそうだ。この自転車を買って本当に大丈夫かと、店主の方が心配してくれた。

 早速、翌日から解体作業に取り掛かる。自転車を完全にフレームだけにして、組立てる作業をしてみたかったので、ちょうど良い教材である。千円なら安いものだ。子ども用の自転車も構造は同じだ。6段の変速装置もついている。

 錆で固着した部分の分解にはかなり苦労した。解体後はフレームやハンドルの錆を落として磨く。車軸やクランク軸など回転する部分や変速機はすべて分解、グリスアップして組み直す。ブレーキや変速機のワイヤー、タイヤなどは安全にかかわるので新しい部品に交換した。出来上がりは新品と較べても遜色ない。

 孫のために手間暇かけて自転車を組み上げるというと聞こえはいいが、自分の楽しみ以外の何ものでもない。マゴチャリの完成を喜んでいるのは孫ならぬ自分自身なのである。

ちっちゃい自転車だけれど
これに乗れば
おとなたちを置き去りにして
魔法の国へぼうけんに行ける

何だかよく知らない
自転車がやって来た

このおんぼろ自転車も
だれかのお話の中で
走っていたのだろう

正体をひとつずつ
たしかめてみよう

だれかの昔々の
お話の中から

新しいお話が
生まれてきて

また魔法の国の
冒険がはじまる