’26.5.8 一期は夢よ

2020年3月14日土曜日

追い風・向かい風


 自転車に乗るようになって、天候が気になるようになった。長期予報や雨雲レーダーをチェックする機会が増えた。予報はかなり正確なので、晴雨については1週間先までほぼ見通しがつく。予報を見ても確認できないのは風の状態である。天気図を見れば翌日の様子くらいは見当がつくが、素人予報士には正確なことが判らない。
 
 予定した遠出が、雨のために中止せざるを得ないということもある。雨の日にはできるだけ自転車に乗らないと決めているので諦めがつく。問題は風である。風向きと強さは、予報とは変わることが多い。絶好の自転車日和とばかりに家を出ても、目指す方向から強めの風が吹いているとたちまちテンションが下がる。ペダルを踏む力も鈍る。
 
 最もきついのは向かい風の中、登坂路にさしかかるときである。坂はいつか登りきってしまう。視界の先に路面が見えなくなる処で坂は終わる。風は終わりが見えない。運よく弱まることもあるが、そうでない限り吹き続ける。こんなに休みなく吹き続けられるものかと感心する。自動車を運転していると、よほどきつい風でない限りその影響は感じない。オートバイに乗っていても、横風を受けない限りは苦労することは少ない。自転車に乗っているからこそ風の力を如実に体感する。
 
 自分の行く手を阻まれるというのは嫌なものである。若い頃は、前から向かってくるものには、何にでも猛然と挑みかかっていた。最近は丸くなった。長いものには巻かれろ、風には逆らうな、である。逆らうほどに風圧が強まる。軽いギアを使ってゆっくりペダルを踏んでいれば、自転車はとにかく前には進む。押し戻されるほどの強風になったら、自転車を降りればいい。前を向いている限り、いずれ目的地に着く。たどり着けなくても、目的地に近づくことはできる。だめなら引き返して、出直せばいい。
 
 風向きが一転、あるいは自転車を方向変換して追い風を受けるようになれば、しめたもの。これほど快適なことはない。追い風を受けて軽快に走る。速度はどんどん上がる。そこが下り坂ならさらにスピードに乗る。誰かが密かに支えてくれていても、それには気がつかず、自分の力でやり切っていると思いがちである。追い風はそれと同じ。自分の脚力が増したのだと錯覚する。

 強い追い風に乗って軽快に飛ばしていると、思わぬ落とし穴もある。ちょっと曲がった途端、強烈な横風を受ける。これが怖い。自転車は軽い。簡単に煽られてあわや転倒、ということになりかねない。人生にもよく似たことはある。
横槍を入れたり、横車を押したり、それに、横恋慕をしたり。どれも褒められたことではない。追い風だ向かい風だと気にしているが、横から吹く風が一番の曲者である。



道端の旗が風に揺れる                 
風の強さと風向きの目安になる            
    旗が吹き上げられて、「三段腹」の状態(写真)になると風力5強
 さらに上によってしまうと、風力7か。ちょっと危険   
この日は強風の中を関ヶ原古戦場跡まで行った     
石田三成の旗印が「三段腹」状態になっている    
        

後ろの決戦地の旗竿も風で曲がっている 
遠出には良くない日          
帰りに追い風を受けられそうでありがたい
 
四日市市富双緑地にて              
後方に小さく中部電力川越火力発電所の煙突が見える

煙突の煙がまっすぐ上がる
無風          
こんな日は幸せである  


 逆風をついて関ヶ原に行った日           
                                街中で恐竜(ブラキオサウルス?)が出現                
 風の日は異常な現象が起きる!!?          
               
                  偶然出現したブラキオサウルス         
        走っていると予期せぬものにも出会う         

A HAPPY WHITEDAY!!
           1日遅れました…



2020年3月13日金曜日

自転車の燃費


 いうまでもないが、自転車に燃料はいらない。燃料はいらないが、乗り手のエネルギーは補充しなければならない。前にも引用したことがあるが、萩原朔太郎の『自転車日記』には次のような(くだり)がある。「今日、地図ト磁石ヲたずさエテ近県ノ町ニ遠乗リス。途中甘味ニ飢エ、路傍ノ汁粉屋ニ入リテ休息ス。帰リテ父ニ語リテ曰ク、余今日某ノ町ニ遠乗リス。モシ汽車ニテ往復スレバ、約五十銭ノ旅費ヲ要スベシ。シカルニ余ノ費消シタル所ノモノハ、二杯ノ汁粉代金八銭ノミ。自転車ノ利、アニ大ナラズヤト。」
 
 自転車に乗り始めたときは、弟に酔っぱらいがふらふらと歩いているようだとからかわれていた朔太郎が、自在に自転車に乗れるようになり、遠乗りに出かける。甘いものが欲しくなって、汁粉を2杯食べ、8銭を払った。電車で行けば運賃50銭がいるところを8銭で済んだと自慢気に父親に話す。すでに『月に吠える』などの詩集で名声を博している大詩人が、父親に自転車の自慢をしているところが可愛くて面白い。
 
 自転車に乗ると朔太郎でなくても甘いものが欲しくなったり、喉が渇いたりする。夏場ともなれば、水分の補給が頻繁になる。自転車に関する本には、水分補給の仕方や食事についてまで懇切に解説しているものもある。スポーツドリンクがいいとか、ゼリー状のサプリメントがいいとか、はたまた、食事は炭水化物が多く含まれるものを選ぶのがいいとか。参考にはなるが、ちょっとお節介が過ぎる。
 
 私は、夏も冬も緑茶を飲むことにしている。水は夏の太陽のもとで熱くなると匂いが気になる。冬場の冷たい水は体温を奪うような気がする。お茶なら、温度が変わっても飲める。飲みたいものを、飲みたいときに飲んでいれば、身体の要求には答えていることになる。自然の摂理に任せれば大過はない。

出先では、コンビニでペットボトルの500ml入りの緑茶を買う。暑いときだと20㎞程走る間に1本飲む。値段にして150円。ハイブリッドの車の燃費と同じくらいか。他の消耗品も考えると、車よりランニングコストがかなり低い。車に乗っていても、ドライバーは水分を摂るから、それも計算に入れると、自転車の、というか、乗り手のための燃費は格段に安い。「自転車ノ利、アニ大ナラズヤ」、確かに自転車の利点は大きい。
 
 ところが一つ引っかかることがある。「父曰ク。(なんじ)何ノ用アリテ彼所(かしこ)ニ行キタルヤト。余曰ク。ナシ。単ニ散策ノミト。父大ニ笑イテ曰ク。用ナクシテ行キ、無益ニ八銭ヲ費消ス、何ノ得カコレアラン。汝ハ小学生ノ算術ヲモ知ラザルナリト。」
 朔太郎の父上のおっしゃる通り。私が自転車に乗るのはほとんどがお遊び。通勤や買い物に使うなら兎も角、用もなくただ走っている。燃費が安いと威張ってはいるが、食料や飲み物を消費して、エネルギーを空焚きしているのみ、なのである。


ボトルケージには緑茶のペットボトルを入れる      
銀のケースは工具、予備のチューブなどを入れる      
写真のお茶は安売りで500ml 1本 75円                      
ガソリンの方が安い、お茶は意外に高価?!        
後ろの広告はお茶とは関係ない 紫色に店を塗った薬局の広告??

    夏場は特に水分の摂取量が増える 炎天下は灼ける        
    こんな道で飲み物を切らしたら干上がる             
          この時は珍しく水を持っている         
  大きなため池が干上がっていた         
  ため池の底を走る機会は珍しい         
      飲み物を切らすと自分もこんな具合に干上がる
こんな山の中ではコンビニもない             
お茶と多少の食料は携行したい              
            
足元はぬかるんでいて、湧き水らしきものが流れている      
この水を飲むのは勇気がいるので、お茶はやっぱり持っていたい  


2020年3月10日火曜日

ドラマの中の自転車

 映画の中で、自転車のシーンが脳裏に焼き付くことがある。連続TVドラマの中にも印象深い自転車が登場する。毎回主人公と一緒に出演するので、回を追うごとに自転車がどう使われるか楽しみになる。映画の中の自転車が、街で見かけて気になった自転車だとすると、ドラマの中の自転車は、親しい友人の愛車を見せてもらっているような気がする。

英国放送協会(BBC)が制作にしたTVドラマ、『FATHER BROUN(ブラウン神父)』には、神父愛用の自転車が必ず登場する。BBCNHKとよく似た公共放送で、視聴者はやはり料金を払う。TVドラマ作りもNHKによく似たスタンスがうかがわれる。時代考証がしっかりなされていて、セットや小道具も見応えがある。

FATHER BROUN』は、G・チェスタートン原作のミステリー、ブラウン神父シリーズをベースにしたドラマ。この1月から本国イギリスでは8シリーズ目が放映されている。日本ではアマゾンのプライムビデオで現在5シリーズまでが無料配信中。原作は第二次世界大戦前に発表されたものだが、ドラマの時代設定は1950年代になっている。

ブラウン神父は、イギリスの田舎町、ケンブルフォードのカトリック教会の司祭。何か事件が起きると放っておけない。警察には捜査の妨害になるといって邪険にされるが、どういう訳か犯罪の現場に居合わす。得意の謎解きが始まる。憎まれ役の警部補が逮捕する犯人は決まって冤罪、真犯人はブラウン神父が突き止める。これは、ネタばらしでも何でもなく、水戸黄門の印籠と同じお決まりの筋立て。

ブラウン神父の愛車はパシュレー。子どもの頃に「三角乗り」をしたのを連想する、妙に懐かしい自転車である。ドラマの中で、警察官は車を使って機動力を発揮する。神父の謎解きを手伝うレギュラーメンバーも車を乗り回す。ロールス・ロイスはもちろん、ジャガー、MG、オースチンにベントレー。登場する名車も見逃せない。ブラウン神父は、そんな車たちの通れない裏道を抜け、牧場を横切り、自転車をフルに使って謎解きに挑む。

神父の心理状態が愛車の扱い方に現れる。思案に暮れて、ゆっくりと愛車のスタンドを立てる。きれいな生垣にいたわるようにもたせ掛ける。火急の時には、乱暴に倒したままで放置する。田舎町を走らせたら、自動車よりも速い。毎回、ブラウン神父の謎解きと愛用の自転車を同時に楽しめる。

同じBBC30年ほど前にドラマ化した、アガサ・クリスティー原作の『ミス・マープル』。このドラマも、原作は戦前のものだが、ドラマはやはり1950年代に時代が移されている。劇中登場する自転車や車には思わず称賛の声を上げる。優雅な自転車や車が光を放っていた時代のドラマにしたいという、製作者のねらいがあるのかもしれない。




『FATHER BROWN』のタイトル画面監督:イアン・バーバー 他
 出演:マーク・ウィリアムズ
       ソーチャ・キューザック 
制作 BBC放送     

愛車を駆って、事件の糸口を探るブラウン神父
  
事件の現場に急行するブラウン神父 愛車はPASHLEY
 ブラウン神父の前に停めてある車にも注目          
  これはドラマの中の警察車両  Riley 1½-litre RMA (1946年式)
                    
事件の証拠を発見するブラウン神父                
よく見ると自転車のサドルの横に「BROOLS」のロゴが見える   
    このサドルは今も同じモデルが手に入る(写真下 型番 B33 CHROME)   

イギリスにはブラウン神父の自転車を調べている愛好家もいる
   ファンのフォーラムにはこんな書き込みもある 
      
Pedals, brake levers, stem, headset spacers, 
           Schwalbe tires are non-vintage.
      ペダル、ブレーキレバー、ハンドルのステム、高さ調整用スペーサー
         シュワルベ(メーカー)のタイヤはヴィンテージものではない 

       
型番 B33 CHROME









私のブリヂストン アンカーに使っているBROOLSのサドル
磨けば光って、空の色が映り込む          

使い込めば身体の形に変形してなじんでくる    
                    
                          型番 B17 AGED
                         

私のラレーに使っているBROOKSのサドル     
                 
                   
                           型番 TEAM PRO CLASSIC
                       


                  PASHLEY  "Roadster Sovereign"          
 ブラウン神父の愛車と同じモデル(現行型)

Known as the ‘King of the Road’
Hand-built & British Since 1926,
  made in Stratford-upon-Avon

                                                    Gears: 5 or 8 Speed | RRP (UK): £775 or £875 (8 speed)                                                                          © Pashley Cycles 2020



                       1950年代と同じような自転車を作りつづけるパシュレーは偉い!! 
       ドラマの中の車には乗れなくても、この自転車なら乗れるかも… 





 

2020年3月7日土曜日

ロンドンで自転車に乗る


   イギリスの首都ロンドンで3年間暮らしたことがある。文部省(当時)在外教育施設派遣教員の募集に応募して、ロンドン補習授業校に勤務することが決まった。現地に住む日本の小・中学生のための学校へ教員として派遣された。1986年4月、34歳、今から34年前のことである。現地での仕事や日々の生活について書き始めると「日々是倫敦」になってしまうので、自転車に限った話にしたい。
 
 日本を代表する文豪、夏目漱石を引き合いに出すのはおこがましいが、漱石は1900年(明治33年33歳のときに、英語研究のため文部省から英国留学を命じられている。漱石の留学生活はそれほど充実したものとはいえなかったようで、孤独感に苛まれ、下宿に引きこもる日々が続く。神経衰弱に陥り、その治療のために下宿の女主人から自転車に乗ることを勧められている。この頃の様子は、漱石の『自転車日記』に詳しい。2年後にはさらに神経衰弱を悪化させ帰国している。
 
 私の方は国費留学とは違って、派遣教員という出稼ぎ。雲泥の差。能天気なものである。幸いなことに、家族を同伴していたので孤独感はない。神経を病むこともない。100年近くも後のことで、情報量も多い。漱石の時代に較べればイギリスは近い国になっていた。異国の生活に不安がなかったわけではないが、3年間の任期を発狂せずに全うすることはできた。その間の失敗談は数えればきりがないが、ともかく、家族4人がそろって無事帰国した。
 
 最近、自転車に乗るようになって、ロンドンにいる頃に自転車に乗っていれば良かったと思うことがある。当時は車にしか興味がなかった。何とも残念である。それなら、今からでも出かけて行って、自転車でゆっくりとロンドンの街を走ってみるのはどうだろう。ロンドンの街中には急な坂道がほとんどない。イギリス全土を見回しても、北東部に低い山岳地帯があるだけで、自転車の旅には最適である。
 
 昔々、ロンドンにいたといっても、今も本当にロンドンがあるのか、行ってみないと判らない。それを自分の目で確かめるために、時間ができたらロンドンに行く。現地で自転車を買う。ブロンプトンの折りたたみ自転車に決めた。日本で買うよりは安いはずである。妻も行きたいだろうから、2台買って、ロンドンの街中で乗る。ロンドンの郊外もいい。レンタカーに自転車を積んで他の町に移動する。イギリスの田舎が、まだ、本当に残っているのか確かめながら走る。実現するかどうか。プランを立てるのは無料。幸い、漱石よりはうまく自転車に乗れる。
 
 ロンドンの街中で自転車に乗ったことがあるのは、我が家の娘だけである。息子は漱石が自転車の練習をしたクラパムコモンとよく似た雰囲気の公園で、三輪車を乗り回していた。私たちの借家は、漱石が日記を書いていた下宿とテームズ川を挟んだ北側、ケンウッドの森の近くにあった。


ロンドンで自転車に乗っていたのは、我が家の娘だけ。    
息子は三輪車。私は、このころ車にしか興味がなかった。残念。

コモンと呼ばれる、小さな公園。共有地くらいの意味か。
漱石に『自転車日記』に出てくるクラパムコモンも、  
そのコモンの一つ                  
  
    ロンドンの街角で。                    
後ろに立てかけてある自転車が、映画やドラマに   
     使われそうな雰囲気を醸し出す。               

私は、車にしか興味がなかった。                              
当時乗っていた ローバー3.5リッター サルーン。  
かなり古いものを、偶然見つけて買った。      
現地の人に譲ってほしいとよく言われた。      
      

 この車は田舎道がよく似合った。            
     次に行くときは、こういう道を自転車で走りたい。        
ロンドンで自転車に乗るなら、ブロンプトンを買う。
 Made in England.                                              
                When in Rome, do as the Romans do.                               

 地元の自転車は、地元のシーンによく似合う。
日本で乗るなら日本製、         
イギリスで乗るならイギリス製か。    
    
             こちらは、本物のRaleigh "PROPAGANDA"               
ロンドンで乗るなら、この自転車もいいが、
        シングルスピードなのに異様に重い、14kg      
         イギリス流の質実剛健、実用本位か。           
                   
 私が現在乗っているのは、Raleighの自転車を 
      新家工業がライセンス生産したもの  (写真 下)。    

  
                     



2020年3月5日木曜日

釈然としない話


 初めての自転車はインターネットで探して買うことにした。実物を見ずに注文するので、手元に届くまではどんなものが送られてくるのか判らない。対面販売ではないので、どんな人から買うのか、どんな雰囲気の店で買うのかも判らない。ネット販売なら店舗など構えていないかもしれない。買うと決めたときから釈然としない。
 
 通販で買うと、商品ははるばる遠くから運ばれてくるイメージだが、購入した店はそれほど遠くなかった。1カ月ほど乗ったところで、その店に行ってみることにした。どんなところで買ったのか、確かめておきたかった。初めてのバイクショップに興味もあった。
 
 通販で買った自転車の持ち主が直接来店することは、あまり例がないようだった。初期点検をお願いすると、若い店員さんはちょっとだけいやな顔をした。「初期点検の代わりに、うちではメンテの本をサービスでお付けしているのですが」と言われた。確かに、自転車の梱包の中に、『要点早わかり最新ロードバイクメンテナンス』という本が入っていた。手間を省くために本を送ってやったのにわざわざ来るな、ということらしい。確かに、同梱されていた本は解説が判りやすく、優れものだった。自転車屋さんが選んで薦めてくれるだけにことはある。とはいえ、ネット通販で買うとアフターケアはないのか、と思っていたところ、点検は無料ですと言われて、多少気を良くした。
 
 無料で点検してもらったことだし、多少は売り上げに貢献しようと思い、手袋やチェーンの潤滑油などを買った。そのあとがいけない。ブレーキシューが減っているので交換しましょうということで、前ブレーキのゴムを取り換えてもらった。部品代と工賃で2,500円程支払った。買ってすぐ、わずか200㎞くらいの走行で交換はおかしい。その後、1万㎞走ってもブレーキシューは減らない。無料点検の辻褄合わせをしたものか、本当に交換が必要だったのか何が本当か判らない素人の哀しさ釈然としない話である。
 
 自転車に乗り始めてからは、いろいろなバイクショップに出入りをする。必要以上に高い用品や部品を勧められる店がある。消耗品の交換を急かせる店もある。自分でもできそうな変速機の調整を、プロのやり方を見せてほしいので、料金を支払ってやってもらったところ、思いのほか杜撰だったこともある。技術を盗むどころか、これなら自分でやる方がいいと自信を深めた。自転車や用品の販売はもちろん、整備や調整を誠意もってやってくれる店を見つけるのは難しい。「高価な自転車を買って、高い部品にどんどん交換するお客様は神様」扱いで、「自転車って高級な乗り物で、素人のお客さんには判らないことが多いでしょ」的な態度が気になる。自転車は金に飽かせて乗るものでもないだろう。手ごろな価格の自転車に、お金をかけずに乗りたい「年金ライダー」は多いはずだ。
 
 何台かの自転車をいくつかの店で買ったが、今のところ、この店ならと全幅の信頼を置ける店が見つからない。と言いながら、プロの技術に頼らざるを得ないこともある。どうも釈然としない。


1日走っても、ほとんど人と出会わないような道もある。   
自転車の整備は万全にしておきたいが、信頼できる自転車屋さん
を見つけるのは難しい。                  
クロスバイクでも、ときには道のないところまで行くことがある。
どこに乗って行ってもいいように、手入れをしておきたい。   
的確なアドバイスをしてくれる自転車屋さんがあるといい。   
  実力はあまりなくても、思い切って遠出をすることもある。   
自転車屋さんのメンテに釈然としないところがあれば、   
メンテナンスは自分でしっかりとやっておくしかないか?  
上の写真は旧東海道 関宿 宿の屋号は私の名前と同じ。   
マウンテンバイクで人っ子一人いない道を行く。     
 自転車と一蓮托生。信頼できる店でメンテをしてもらわないと
命にかかわることもあるかもしれない。         
        因みに、このマウンテンバイクは納車の時からフレームに         
   何ケ所か傷があった。まさか、メーカーは傷のあるものを    
          出荷しないと思うけれど…、釈然としない。                 
          MTBは走り出せばすぐ傷がつくから、いいようなものの…。          
 


2020年3月3日火曜日

新しい自転車3(マディ・フォックス)


 クロスバイクを買って1年が経った頃、ロードバイクにも乗ってみたくなって、迷った末に手に入れたことは既に書いた。それから5年、2台の自転車をとっかえひっかえ、近在の道はほとんど走りつくした。自然に2台の自転車を乗り分けるようになった。通勤はクロスバイク。妻と乗るときもペースを合わせるためにはクロスバイクが良い。遠出は断然ロードバイクである。幹道から街中、田舎の集落、そして田んぼの中を続く細い道まで、ありとあらゆる道を通りぬけた。
 
 私の住んでいるところは、西は鈴鹿山脈、北は多度山系から連なる養老山脈に囲まれている。自転車でしばらく走ると、険しくはないが山道に差し掛かる。道路の舗装は途切れ、行き止まりになってしまう道もある。途切れた道のその先へも行ってみたいと思うのは自然の成り行きである。クロスバイクやロードバイクでは乗り入れができない道、かつてはオフロード用のオートバイで分け入った道もある。2台の自転車で走れるところまでは行った。さらにその先へ行くためには、マウンテンバイクがあればいいと思うようになった。
 
 自己流の走りではあるが、6年間で2台合わせた走行距離は4万㎞になろうとしていた。ところがマウンテンバイク選びにはそれまでの経験があまり役にたたない。直接アドバイスを受けられる知り合いもいない。マウンテンバイクに関する本や雑誌を買い込んで、にわか知識を仕入れた。自分の流儀で乗り始めてしまえば何とかなりそうな気がした。

マウンテンバイクはまったく用途の違う自転車とはいえ、これまでの2台とイメージの近いものを探すことにした。ネットの書き込みやカタログが大いに役に立った。ロードバイクと同じARAYAの製品、マディ・フォックスを選んだ。「泥だらけの狐」、命名もいい。マウンテンバイクの多くはフロントフォークサスペンションを装備するが、この自転車は前にも後ろにもサスペンションがない。フルリジット。これまでの自転車と基本構造は同じ。大きく違うのはディスクブレーキがついていることとタイヤのサイズ、それにハンドルの幅くらいのものである。
     
 基本の作りが同じとはいえ、乗りだしてみると全く性格が違う。鈍重な感じはするものの、ギア比が小さいので漕ぎだしは重くない。太いタイヤと幅広のハンドルが抜群の安定感をもたらす。河川敷や未舗装の道に乗り入れるにも抵抗感がない。無理をしなければ急な登坂もできる。途中で引き返していた道をさらに先へ進めそうである。この歳になっても、新しいものや知らない場所に出会えるのは嬉しい。この歳になってから、始めたいことがあるのはもっと嬉しい。


ARAYA Muddy fox MFB (2018年型)
新しい自転車が家に来た日 (2018. 8. 10)
ハンドルの幅が広い、タイヤの幅も広い  
ブレーキがディスクなのもこれまでと異なる
   この自転車なら川の中も走れる    
道のないところまでも行けそうである




2020年3月1日日曜日

映画の中の自転車


 『小説家を見つけたら』という映画を見つけたら、すぐにDVD(もちろんBRでも良い)をレンタルビデオ屋の棚から抜き出して借りるべきである。

 映画は、ニューヨーク・ブロンクスの劣悪な環境の中で暮らすアフリカンアメリカンの少年ジャマールと、訳ありで40年もの間、隠遁生活を送る小説家ウィリアム・フォレスターの絆を描く。主演は、ショーン・コネリー。007シリーズのジェームズ・ボンド役とは打って変わって、ピューリッツァー賞最優秀小説賞を受賞した有名な小説家を演じる。少年ジャマールとの出会いの場面では人種の偏見に満ちた頑固爺いの印象だが、やがてジャマールの才能を見抜き、彼に文章作法を教える。

 文武両道に秀でるジャマールは、バスケットボールの才能を認められて、有名私立高校へ特待生として転校するが、妬みと人種差別から窮地に立たされる。小説家の教えで書いた文章がうますぎるということで盗作問題が勃発する。懲罰委員会にかけられるジャマール。その窮地を救おうと、40年間の殻を破り、外の世界へ再び踏み出す小説家フォレスター。その顛末は…。

 映画のあらすじが長くなった。
 映画の終盤、長年閉じこもっていた部屋から出ようとするフォレスターと共演するのが自転車である。小説家は長い間使われなかった自転車のタイヤに空気を入れる。玄関の階段から自転車を下す。夜の街をやや危な気に走り始める。役中の小説家が乗っているのか、ショーン・コネリーが乗っているのか。もちろん、両方とも正解、何とも様になる。数秒のシーンが脳裏に焼き付く。その後、物語は大団円を迎え、小説家は街を離れることを少年に告げる。自転車を押しながら歩く小説家フォレスターとジャマール少年のシーン。自転車の存在が際立つ。自転車と一緒に町を歩くときは、こうでなければいけない。名脇役の自転車が忘れられない。ついでにいうと、この映画の挿入歌がなかなか聴かせる。マイルス・デイビスの名演奏が映像を支える。

 自分が自転車に乗り始めて、街に停めてある自転車、行き交う自転車、車の運転中に追い抜く自転車や通学する学生たちの自転車にも目を向けるようになったからかもしれない。昔観た映画の中の自転車を、ふと思い出すことがある。

 最後に、『大脱走』のワンシーン。ドイツ軍の捕虜収容所から脱走を図る連合軍の兵士たちの実話に基づく物語。スティーブ・マックィーンのオートバイを使った逃走シーンばかりが注目されるが、ここではジェイムズ・コバーン演じるオーストラリア人セジウィック中尉の乗る自転車のカット。ドイツとフランスの国境辺りと思しい田園地帯を悠々と走るコバーンと自転車。自転車乗りのお手本のような場面である。


映画『小説家を見つけたら』       
 原題 FINDING FORRETSER       
2000年 アメリカ映画
 監督:ガス・ヴァン・サント          
          出演:ショーン・コネリー(ウィリアム・フォレスター)
             ロブ・ブラウン(ジャマール・ウォレス)  
挿入歌:Recollections/ Miles Davis
    Little Church/ Miles Davis
   Black Satin/ Miles Davis
       Under A Golden Sky/ Bill Frisell
       Happy House/ Ornett Coleman
             Over The Rainbow (Photo Book) / Bill Frisell
        Lonely Fire (except)/ Miles Davis
                 Over The Rainbow - What A Wonderful World           
                                                                                / Israel Kamakawio'Ole 他

自転車で街に出る老小説家フォレスター
手信号はしっかり出しているが、無灯火!?
物語も終わりに近づく場面 自転車が演技している?!

映画『大脱走』原題 The Great Escape)
      1963年アメリカ映画
監督:ジョン・スタージェス。
                                                        出演:スティーブ・マックイーン   ジェームズ・ガーナー                           チャールズ・ブロンソン  ジェームズ・コバーン  他 
映画の終盤、悠々と脱走を図るコバーン
この自転車は盗難自転車ではあるが…、