'26.1.1 新しい年を迎える

2025年12月27日土曜日

身体イメージ

  自分の体調をどうとらえるか、というのも身体イメージといっていいのかどうか。これまで大きな病気はしたことがない。今も身体に不具合なところはない。どこか悪いと思って気にすると、そこが悪くなる、といけないので、体調は完璧と思うようにしている。セルフイメージ信奉だ。

高齢者特定検診という、年に一度の健康診断でも特に異常な数値は見られない。それが、今年の健康診断の結果を病院で聞いたら、血糖値が異常に高い。これは糖尿病という診断になる、と告げられた。

 糖尿病といわれも何か自覚症状があるわけではない。自分の身体イメージは極めてポジティブだけれど、検査結果はイメージではすまない。現実的で非情な数値だ。運動量は多いし、メタボリックの傾向でもないし、食事に気をつけて様子を見ましょうと医者から言われた。薬は飲みたくない。

 就寝時刻が遅いので、寝る前に夜食を摂る、それが良くない。さらに、もう一つ気になる節がある。自転車の乗り方だ。天気が良ければ自転車に乗り、30㎞~50㎞、ときには100㎞近く走る。距離は長いが運動強度が足りていない、脂肪が燃えていない、のではないか。

 高石鉄雄著『自転車に乗る前に読む本』には「身体・健康づくりの効果的な自転車の乗り方」の記述がある。運動強度50%以上の有酸素運動を一定時間つづけることが推奨されている。(この本は「自転車に乗っている人が読む本」というタイトルでもいい)。

 運動強度50%は、自分の場合、年齢や体格から考えると心拍数が1分間に120程度である。自転車に慣れて多少は体力も付き、心拍数がなかなかそこまで上がらない。普段のペースでは運動強度が低すぎる。楽をして走っている。脂肪が燃えない。走っても疲れない。

 走行イメージで負荷を大きくして運動強度を上げ、身体イメージで糖質の分解を促す。これで血糖値が下がることを期待したい。

いかめしい数値と計算が
自信ありげにつり上げられ

心象があいまいにかすむ

厳密な検査や数値の記録が
出現するまでは

五感と故老の知恵が
みちしるべだった

2025年12月20日土曜日

年賀状を書く

  年賀状を書く。「書く」というよりは「つくる」。せめて「創」りたいところではあるが、「作」るのが関の山だ。

 子どものころには、仲の良い友だち宛に手書きの年賀状を数枚出した。版木や芋に干支の図柄や文字を掘ったこともあった、ように思う。冬休みの宿題だったかもしれない。宛名はもちろん手で書くしか術がなかった。

 コンピュータに「年賀状図案」というフォルダが作ってある。自分の作った2006年からの年賀状を残している。このころから、コンピュータを使って年賀状を作り始めた。それまでは印刷屋さんで印刷をしてもらっていた。宛名書きもコンピュータが住所録から自動的にしてくれる。年賀状は書くのでも作るのでもなく、「印刷する」だけになった。

 フォルダを確認すると、2020年の年賀状から自転車の写真を貼り付けたものに変っている。年賀状に写真を印刷して近況を知らせてくれる人がある。それを真似て写真を貼り付けることにしたのだ。

 年賀状用の文字やイラストを選んで貼り付けて一丁上がり、よりは多少自分らしい、けれど、センスが悪いので出来は良くない。写真もいいものがない。自分らしさがあるだけが救いか。来年の年賀状も同じやり方でいく。

 年賀状じまいというのもあるらしい。ここ数年、年賀状は今年限りにするというご挨拶をいただくことが増えた。きっぱりさっぱりで未練がない。悪い気はしない。お相手の方からやめていただくのは歓迎するとして、自分は、自転車に乗って自転車の写真が撮れる間は年賀状をつづけようと思う。

 初めて年賀状を出したころ、確かはがき代が5円、今では85円、これは痛い。痛いが、年頭のご挨拶とともにまた1年間がんばって走りますという意志表明もするにはそれくらいの費用がかかる。

ご無沙汰しています

お元気ですか

1枚のはがきが
1年の空白をうずめる

おかげさまで元気です
どうかよろしくお願いします

1枚のはがきは
また1年をつなぐ

2025年12月13日土曜日

サウジアラビアの自転車

  『少女は自転車に乗って』(原題:『ワジダ』)という映画を観た。2012年、サウジアラビアで初の女性監督ハイファ・アル=マンスールが撮った作品である。

 映画はストーリや主題の描かれ方を楽しむ観方もあるが、映画に使われる音楽を聴き、舞台になった場所やそこに住む人たちの生活に触れるという面白さもある。映画の中を旅しているような気分になる。楽しみばかりではない。映画に描かれる苦悩をともに背負い、事件や問題に悩むこともある。

 『少女は自転車に乗って』が製作された2012年当時、サウジアラビアには映画館がなかった。1979年に、西洋的な価値を助長するという理由で映画館は閉鎖。その後2018年になって映画館は営業を再開した。そんな時代に、しかも女性の監督が映画を撮ることは大きな衝撃だった。

 この国では2018年まで女性が自動車を運転することが禁じられていた。自動車だけではない。女性は自転車に乗ることも許されない。男の子たちと同じように自転車に乗りたい主人公、10歳の少女ワジダが越えなければならない壁は高い。イスラム教の戒律、学校の教育方針、家族の関係や町の人たちの目。女の子が自転車に乗るというだけでなんと難儀なことか。

 映画では壁の現実をストーリーに落とし込み、押し付けがましくない描き方をしている。ワジダが乗りたい自転車は高価だが、ごくありふれた子ども用の自転車だ。

その自転車が因習を打ち破り、女性を解放する象徴として描かれる。その自転車の色は緑、緑色はサウジアラビアの国旗の色、生命と希望の色だ。ワジダが自転車に乗ることで、多くの人を勇気づけ解放しようとしている。

スクリーンには
光があり陰りがあり

言葉があり音楽があり
雑音も騒音もまじる

そこにはないにおいをかぎわけ
想いをうけとめる

臨場こそは自転車の得意技だ

2025年12月6日土曜日

冬のタイヤ

  今朝は庭にうすく雪が積もった。例年よりは少し早い雪化粧だ。3日前に車のタイヤを冬用タイヤに交換した。本格的に雪が積もったわけではないが、いいタイミングだった。

 仕事に出かけることもないので、冬用タイヤがどうしても必要なわけではない。雪の積もった日には車に乗らなければいい、と思うが、雪の日に火急の用がないとも限らない。万が一に備えて冬用タイヤを装着した。

 自転車の走行会仲間の車も一緒にタイヤ交換をした。重い油圧ジャッキやタイヤのナットを締め付けるトルクレンチを準備する。みんなのタイヤを一緒に交換すれば面倒が省ける。

 一人でやるのは億劫でも仲間と雑談しながら作業をすれば苦にならない。カーショップへ持ち込むよりも安上がり。いくつかの目で確認するので安全安心。年寄りの知恵と自己防衛だ。

 ところで、では、自転車に冬用タイヤはあるのか。探したらありました。雪の多い地方では普及しているのかどうか。鋲付き、鋲無し(スタッドレス)、よく探せば各種あります。例えば、

 シュワルベタイヤ、「マラソン・ウィンタープラス」:ピンが路面をしっかりと捉え、直進時、コーナリング時ともにグリップを効かせた走行が可能:

 イノウエタイヤ、冬用スタッドレスタイヤ「ささら」:柔らかいコンパウンドとサイプで、雪道に高いグリップ性能を発揮。積雪における低温時でも高いグリップ力をキープする専用コンパウンドを採用:

 毎年、雪が積もるとマウンテンバイクで恐る恐る走りに出かけている。高性能の冬用タイヤがあるのなら買って試してみたい。

 しかし、待てよ、雪の日に、あえて自転車に乗ることはない。大怪我の元だ。この歳になって、用もないのに冬用タイヤを試すのは、自己防衛にはならない。年寄りの浅知恵と笑われる。

鮮やかな緋色を残したまま

秋が暮れていく

今日は冬に備えて
冬には冬のタイヤ

この冬最初の
最終チェック




2025年11月29日土曜日

オフロードを走る

  オフロード、ダートコース、あるいは未舗装の道。子どものころは、そんな道ばかりだったような記憶がある。

 生まれ育った家は集落の真ん中にあって、謂わば村のメインストリートに面していた。路線バスが家の前を走っていた。そんな道でも未舗装だった。雨の日など、バスが跳ね上げる泥水が玄関先にまで飛び込んだ。バス以外に自動車が通ることは少なかった。

 子ども用自転車に乗って、水たまりのできた雨上がりの道を走るのは楽しかった。車輪の跳ね上げる水しぶきで自転車のスピード感が増したのかもしれない。自転車や靴、ズボンの裾が汚れるのも構わずに水たまりを選ぶようにして走った。 

 近ごろでは、未舗装の道に出合うことはめったにない。田舎の田んぼ道まで舗装が行き届いている。マウンテンバイクで林道などを走っても簡易舗装くらいはしてある。若い頃にオフロードを走るオートバイに乗っていたことがある。その頃にはまだ舗装のしてないオフロードが残っていた。不整地や砂利道を走るのは面白い。

 タイヤのグリップがきかない砂や泥の道ではハンドルをとられやすい。アクセルワークやブレーキの使い方で車輪がスリップするのを利用して、不整地ならではの走り方を楽しめる。今もオフローダーと呼ばれるオートバイや四輪車に乗っている人は多い。乗ってはいても能力を発揮する場所は少ないだろうオフロードなど走ったことのない、格好だけのオフローダーもあるのではないか。

 マウンテンバイクで久しぶりにオフロードを走った。ぬかるんだ道、砂利道、小石の浮いた道や大きな石の転がる道。舗装された道とは違う野性味。飼い慣らされていない太古の道だ。子どものころに走った道をなぞるように走る。タイヤを伝ってくる路面の感触が舗装された道とは違って優しく懐かしい。

樹と風、砂利道

枯草と雲、石ころ

落ち葉と晴れ間、水たまり

素面の地面を走る

太古からつづく道を走る

2025年11月22日土曜日

何が本当なのか

  少し前に出会って、ここにも書いたE-bike HEY BIKEのことが気になったので調べてみた。知らなかっただけで、ネット上にはHEY BIKE関連の情報が既にたくさんある。メーカーのホームページは勿論、YouTubeの動画でも数多く紹介されていて、今盛んに売り出し中らしい。

 小さくて太いタイヤの自転車は誰が乗っても安定がよさそうだ。太いタイヤは重いけれど、そこは電動モーターがアシストしてくれる。電池が大容量なので、力が強く航続距離も長い。急坂もぐんぐん登り遠くへも行ける。前後にサスペンションがついているので、身体に伝わる振動が少なく乗り心地がいい。折畳みができるので、車に積んで目的の場所まで出かけてから乗ることもできる。いいとこだらけだ。

 なるほど、これは優れモノだ、と思ってYouTubeの動画を何本も観ているうちに気が付いた。どの動画でも、紹介している内容がほとんど同じなのだ。性能や特徴の説明から、実際に乗ってみた感想までがよく似ている、というよりほぼ同じ。YouTubeの配信者が、メーカーから依頼されて売り込みどころを紹介しているのではないかと思えてしまう。

 知らなかっただけで、ギフティング(無償提供)という企業の宣伝方法はよくあることらしい。自社製品やサンプルを提供して、特徴や使用した感想を動画やブログで紹介してもらう。ただで製品をもらえば、いいとこばかりの紹介になるのは当たり前だ。無料で製品をいただければ、このブログでだって、最上級の褒めことばで紹介させていただく、が、そんな申し出はまだ一度もない。

 HEY BIKEはいざ知らず、多くの人がメーカーにおもねって製品を褒めた動画が配信する。メーカーの製品情報を見れば、今だけお買い得、特別価格などと謳っている。いい話ではあるが、にわかには信用できない。嘘くさい。信用すべきではない。信頼できるメーカーのものか、確かな人が薦めるものか、吟味しなければならない。


この晩秋の澄んだ空の下

自転車で駆ける爽快

誰もが口にする
きまり文句や
ありきたりの言葉は
ここに残していく

張り巡らされた
バーチャルの網を
突き破って飛ぶ



2025年11月15日土曜日

自転車生活13年

  子どものころから乗っていた自転車とは訣別したと思っていた。再び自転車と出会ったのは60歳のときだった。あれから13年、13年は長い。

 小学校に入学して高校を卒業するまで12年。個人差はあるが身長は倍近くになり、体重も2.5倍くらいにはなるだろう。経験と知識、身体能力は何十倍、何百倍か。

 学生時代を終えて中学校の教員に奉職し、教諭として12年間教壇に立った。1年生を2回、2年生を3回担当し、残りの7年間は3年担当という偏りがあった。授業をした経験は12年間でも、経験を積んで授業技術が多少は向上しただろうと自分では思う。

 学校を離れてイギリスのロンドン補習授業校に3年間勤務した。その間、教頭職扱いということだったので授業はしていない。それ以前に1年間、内地留学で大学へ通って研究をさせてもらった。教育委員会事務局にも8年間在籍した。学校以外での仕事が合わせて12年になった。変化に富んだ12年間だった。

 再び学校に戻って、教頭職で5年、校長職で8年、都合13年間仕事をさせてもらった。13年も続けていれば、少しは経験値も上がる。新米の頃と較べれば仕事に余裕があったはずだ、と自分では思いたい。

 学びや仕事の区切りが123年ごとに訪れたとすると、自転車生活も13年になって一区切りの時期を迎えている。加齢とともに自転車で走る距離が減るのではないか、疲れが残るのではないかと、尋ねられることがある。自分ではそうは思わない。

 瞬発力も持久力も衰える。反射は鈍るし痛い所は増える。当たり前だ。当たり前だが、自転車について知ることが増え、乗り方を工夫すれば、衰えを補うことはできる。13年も乗っていれば、賢い付き合い方も覚える。乗り始めたころよりも楽に乗れている、気もする。

123年の周期でやってくる変わり目を乱暴にまとめればこんなところだ。次の一区切りはどこになるのか、それは皆目見当がつかない。

連なっていく日々

とどまりつづける日々

いづれどこかで区切りをつける

同心円状にひろがっていく日々

同心円を積み重ねる日々

きっとどこかで変わり目を見つける

2025年11月8日土曜日

幸せな自転車乗り

  自転車乗りには二通りのタイプがあるようだ。休憩していて出会ったり、同じペースで走っていたりすると、どうぞ声をおかけくださいというオーラの出ている人と、見えないバリアがあって話しかけるのをためらってしまう人とがある。

 先週、桑名の赤須賀漁港で出会った男の人には、自転車のこと何でもお話ししましょう的雰囲気が漂っていた。年の頃なら40歳前後か、のんびりと走る姿が楽しげである。

 その人の自転車が、また、変っている。小さな車輪は20インチくらいなのにタイヤが異様に太い。オートバイのタイヤほどもある。マウンテンバイクのようなフレームに太いタイヤをつけたファットバイクは知っているが、小径車のファットタイヤは見たことがない。

 後ろから並びかけて、「太いタイヤですねぇ」と自転車の主に声をかけた。「これ、面白いでしょう。ちょっと止まります」といってその場で自転車を止めて見せてくれた。 「このタイヤ、見てください。どこでも走れそうでしょう」。見ると、マウンテンバイクに使うようなブロックパターンのタイヤである。

 電動アシスト付き。フロントフォークとサドルの下にサスペンションが備わっている。やはり20インチの小径車だ。タイヤの幅が4インチというから何と10㎝もあるのだ。

 買ってひと月にもならないのでまだ慣らし運転中、低い山には登ってみたので次はダートコースや砂浜を走ってみたいとの由。自転車の性能や自分の自転車歴をひけらかすわけでもなく、自転車を手に入れたこと、今それに乗っていることが嬉しくてたまらないという話しぶり。自転車との幸せな関係が伝わってくる。

 HEY BIKEという自転車だと教えてもらったので、帰宅して調べてみた。今、売出し中の優れものらしい。新種のバイクを手に入れて、心底楽しむ。楽しみを誰にでも伝え拡げる。幸せな自転車乗りとはこんな人のことをいうのだろう。

最高の幸せ
またとない幸せ

安っぽい幸せ
ありふれた幸せ

幸せの姿かたちを
見たことはないが

誰かと何かと一緒になって
幸せが姿を見せることもある

2025年11月1日土曜日

今さら言えない小さな秘密

  長年秘密にしていて今さら言い出せなくなったことを、ここで告白しようというのではない。『今さら言えない小さな秘密』という映画の話である。

 原作はジャン=ジャック・サンペの同名の大人の絵本。2019年にピエール・ゴドー監督・脚色、ブノワ・ポールヴールド主演で映画化されている。

 主人公のラウル・タビュラン(ブノワ・ポールヴールド)は南仏プロヴァンスの美しい村の自転車屋。村人は自転車のことをタビュランと呼ぶくらいで、彼は自転車の代名詞なのだ。

 その彼が実は自転車に乗れない。どんなに練習をしても乗れない。乗ろうとすると必ずこける。映画では、横ざまにこてんと倒れるシーンを子ども時代のタビュラン役の男の子が上手く演じている。

 修理の名人、自転車の神様のような人が自転車に乗れない。この小さな秘密が、というより、タビュラン本人にも映画を観ている者にも大きな秘密だが、悲哀を感じさせ、事件を巻き起こす。

 ストーリーもさることながら、映画に出てくる自転車がいい。できれば、自転車の登場するシーンを静止させて眺めていたい。タビュランの店に置かれている自転車、タビュランが修理した村の老婦人の自転車。

タビュランの子ども時代の自転車も成長して父親からプレゼントされた自転車も薄いターコイズブルーの素敵な自転車だ。持ち主に乗って欲しいと哀願しているようなたたずまいを感じる。自転車もそれぞれの役どころを演じている。

残念ながら、原作の絵本にはまだ出会えていない。町の図書館にも近くの書店にもない。テーマや筋書きを原作でも確かめてみたいが、自転車の絵がどう描かれているか、そこが一番興味のあるところだ。

ここにいることは
いつわりではない

ここにいることは
ごまかしでもない

ここにいるということを
だれにもいわないだけだ
だれにもいえないだけだ

いつわりでもない
ごまかしでもない
ひそかなとまどい

2025年10月25日土曜日

深掘り

 前回のつづき。ジュニアスポーツ自転車についてもう少し深堀りしてみようと考えた。果たして、アイフルのCMで宇宙人女将が乗っている自転車はブリヂストンの「アストロG」か。特定するにはいろいろと資料にあたってみなければならないと覚悟した。

 よもや見つかるまいと思いつつ、AIに「アイフルのCM『ちっちゃい宇宙人女将』篇に使われた自転車は何か」と尋ねみたら、何と、AIが答えてくれました。

 「アイフルのCMに使われた自転車は、『エレクトロボーイZ』です。CMのクリエイティブディレクターである山崎隆明氏が、自身のX(旧Twitter)で明かしています」という回答。あっさりと謎が解けた。

 山崎氏のXをみると、「私が小学生の時に発売された憧れのスーパーカー自転車エレクトロボーイZ。まさかこの歳になって仕事で使うなんて思ってもみなかったです。懐かしかったなあ。というわけでアイフルの新作CM、今回も真央さまに弾けていただきました」というコメントがあった。

 「アストロ(=宇宙)G」ならCMの場面にぴったりと前回書いたが、ナショナル自転車の「エレクトロボーイZ」が使われたのだ。あちこち探して深掘りをしなくても、見当をつけて浅く掘るだけで答えが見つかってしまった。拍子抜けもいいところだ。

今さらながら、インターネット上にあふれる情報の多さには驚かされる。おまけに、AIが検索を手伝ってくれるし、情報の整理までしくれる。困りごと、探し物、何でも即解決、である。

自転車のモデル名は違っていたが、いいところまでは近づいていた。CM作製に携わった人に自転車好きがいるのではないかという推察も当たっていた。

 簡単に捜し物が見つかったが、AI頼みでは深掘りしたことにならない。AIの回答に満足せず、あるいは疑い、自分でものごとを深く掘り下げる姿勢も忘れないでおきたい。

平板な羅列の中から
該当事項をひとつ見つけただけで

簡単に辿り着くその場所は
本当に約束の地だろうか

ここに踏みとどまって
該当事項を深く掘り下げる

時間をかけて辿りついた
新しい天地で
爽やかな風に吹かれる

2025年10月18日土曜日

少年たちの夢の跡

  アイフルの最新のCMに使われる自転車は、ジュニアスポーツ自転車ではないだろうかと前回の記事に書いた。今では希少な自転車だ。ジュニアスポーツ自転車の登場は1970年前後にさかのぼる。丸石自転車が「YTエレコン」というジュニア向け自転車に、流れるように光る方向指示器をつけて売り出したのが始まりらしい。

 その後、スピードメータやリトラクタブルヘッドライト(飛び出す前照灯)、点滅するストップランプなどを装備したものが出現する。ナショナル自転車「エレクトロボーイZ」、宮田自転車「サリーSLD5」、ブリヂストンの「アストロG」に「ヤングウェイ・モンテカルロ・SN26・ポルシェタイプ」などなど。名前だけでも華々しい。

 自動車の変速レバーに似せた変速機やディスクブレーキまで現れる。今やスポーツ自転車にも使われるようになった変速機や油圧ディスクブレーキのはしりである。

 ジュニアスポーツ自転車が流行った時代、私の関心はすでにオートバイに移っていた。自分の子どもが自転車に乗るころには、ブームはとっくに終わっていた。そんなわけで、少年たちを夢中にさせる装備を満載した自転車にはなじみが薄い。

 自分でヘッドライトや方向指示器を取り付けたり外したり、位置を変えたり。ライト類の配線を工夫したり変速機の調整を試みたり。電気や機械いじりの得意な子がいたにちがいない。仲間うちでは英雄だっただろう。

 ジュニアスポーツ自転車は、ファミリー・コンピュータやプレイステーションなどのビデオゲームに駆逐されたのではないだろか。少年たちはバーチャルリアリティの世界に移り住んでいった。戸外で自転車に乗る姿が消えた。

 少年たちの夢の跡にCMで出会った。自転車のモデル名は判然としない。宇宙人に扮した女将が乗るのだから、ブリヂストンの「アスロト(宇宙)Gならドンピシャだ。


バーチャルリアリティーは
実現することのない現実

夢でありながら
夢はもしかしたら
実現するかもしれない現実

少年たちが追いつづける夢は
時代の中の現実になって残る

いずれ発掘されるときを
待ち続けている夢
いずれ光があたるときが
めぐってくるものたち


2025年10月11日土曜日

何じゃ、これ

  アイフルのコマーシャル、「凛とした女将」シリーズは大地真央扮する料亭の女将と板前の「今野」(今野浩喜)の掛け合いが絶妙で笑える。消費者金融の宣伝ではあるが、CMだけ見ている分には楽しい。わずか30秒のドラマだ。

 シリーズの第1作目は、今野が新作の料理を女将に試食してもらうという設定。女将が箸を手に取ろうともせず「今野、ここに愛はあるんかっ」と問う。今野は「愛?」と自問し、料理の作り直しを覚悟する。そこに「愛がいちばん、アイフル」というCMソングが流れる。

 CMは何作も放映されているが、テレビではあまり見かけない。YouTubeでまとめて配信されているので、ほぼ全編が見られる。下手な紹介よりも、実際に配信動画を見れば絶対笑える。

 で、このCMと自転車とはどういう関係があるのか。シリーズの中に、女将がウーバーイーツよろしく自転車で出前をする「デリバリー女将」篇というのがある。これを見たときに、CMの制作スタッフの中に自転車好きの人がいるのではないかと思った。

 最新作「ちっちゃい宇宙人女将」篇はシリーズ第27作目になる。宇宙人女将は、今野に「地球人に愛はあるんかっ」と尋ね、答えを待たずに宇宙に帰る。待機するUFOに向って自転車で走り去る。

 女将の乗る自転車を見て、何じゃ、これ、と思った。動画を止めてよく見ると、スーパーカーを模して作られたリトラクタブルヘッドランプに流れるように光る方向指示器。197080年代に流行したジュニアスポーツ自転車ではないか。 

 こんな自転車を持ち出すとは、やはり、CMを作っている人の中に自転車マニアがいるのだろう。ジュニアスポーツ自転車、自分で詳しく調べてみたい。そのままにしておいたら、「そこに、自転車愛はあるんかっ」と、凛とした女将に叱られる。

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