冬をむかえる

冬をむかえる
'25.1.22 山を見て走る

2020年2月18日火曜日

自転車に乗る理由(わけあい)


 父が96歳になる。90歳を過ぎるころから少しずつ弱ってきた。それでも、必要なことはほとんど自分でやれる。父は経済的に余裕があったわけではないが、車やオートバイが好きで、いつも古い車やオートバイをいじっていた。85歳で運転免許を返納するまでは現役のドライバーだった。

 80歳を過ぎた頃からは、車を運転する機会は少なくなり、どこへでも自転車で出かけていた。電動バイクを買うことを勧めたので、かなり遠くまで一人で出かけることもあった。子どもや孫たちが心配するほどである。サイクルコンピュータというものがあるらしいので買いたいと言って、自分で取り付けていた。自転車に乗り始めたのは、そういう父の姿を見ていたからということもある。子どものころから、古い車やオートバイを整備したり、改造したりする姿を見て育った。

 父は年齢の割に元気な生活を送っているとはいえ、少しずつ手助けをしなければならない場面が増えてきた。できるだけ目の届く距離にいてやりたい。退職後はほかの人の例にもれず旅行なども計画したいと思っていたが、父一人を家においては出かけられない。父を連れての長旅も難しい。のんびりと旅に出るということは当面無理かもしれない。退職して8年になるが、旅行といえるのは妻と出かけた京都行、一泊二日ただ一度、である。

 自転車を手に入れたのは、ちょうどそんなおりである。自転車で走れば、遠くへ出かけなくても、近在に思いもかけない景観があることに気づく。時間をかけて遠くへ出かけることだけが旅ではない。身体と気持ちは自転車でほんの少し走るだけでも旅をする。

 自分の体力、脚力で自転車に乗って出かける場所といえば、どんなに頑張っても自宅から半径50㎞以内である。父に何か異変があったとしても、タクシーに自転車を積んでもらって帰れば1・2時間で家に帰れる。クロスバイクは前輪を外せばどんな車にでも積みこんでしまえる。いざとなれば、すぐにも帰宅はできる。父の様子を見ておいて、少しのひまに出かければ、それがそのまま小旅行、ときには思い切り遠出をしたような気分にさえなる。

 歩いたのでは変化に乏しい風景や車だと見落としてしまいがちな景色も、自転車なら十分に楽しめる。遅すぎず速すぎない速度。これがいい。通り過ぎれば引き返す。

 退職後には旅行を楽しむということが今のところはままならない。そんなときに自転車に乗り始めて、旅への思いが変わった。家を出て、自転車のペダルをひと漕ぎすれば、そこから旅は始まる。地図もいらなければプランも不要。私が自転車に乗りつづける理由(わけあい)である。


春の小川に沿って走る 

ちょっと走れば海が見える:川越町 高松海岸

港も見える:四日市 霞ふ頭

家から30分で山にも行ける:三重県民の森

父の電動自転車
       シニアカーでは本人のプライドが許さないだろうと          
妹と相談して父のために購入             
  父はサイクルメーターをつけたり、ハンドルのグリップに革を
巻きつけたり、いろいろと手を入れている       

2 件のコメント:

  1. 釣りキチ、カブ乗りの後輩です。
    ブログ開設、おめでとう(?)ございます。
    これからチョクチョク覗かせてもらいます。

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  2. 日々激務のなか、早速、ご覧いただきありがとうございます。
    ちょっと文章の長い、まどろっこしい記事ですが。
    暇な年寄りの暇な年寄り向けの発信ということでご理解ください。
    貴君は、お年寄りではないですね。失礼しました。

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